ASEAN 消費財メーカーの課題は伝統小売 その2
番組への質問はこちら » お問い合わせフォーム
新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/4495650238
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、前回同様、ASEAN市場、FMCGが対象で、消費財メーカーの課題は伝統小売にあるということについて、ちょっとお話をしていきたいなというふうに思います。前回のエピソードから、これは続きになっていますけども、今回は輸出でやるというケースよりもね、輸出でやるとどうしても近代小売の輸入品棚みたいな話になってしまうので、そうではなくて、現地の近代小売であってもメインの棚をしっかり獲って、なおかつ伝統小売を獲らなければいけないという、こういう企業なので、ほぼほぼ現地生産・現地販売をしているようなお客さんが中心になると思うんですが、こういうASEANの課題ね、SMT、シンガポール、マレーシア、タイ、それからベトナム、インドネシア、フィリピンで分けたときに、ベトナム、インドネシア、フィリピンに行けば行くほどね、これは伝統小売の課題感が大きくなる。なぜならば、伝統小売の市場が圧倒的に大きいから。例えばインドネシアだったら伝統小売が440万店だったかな、447万店あるし、フィリピンでも80万店ぐらいあるわけですよね。ベトナムで66万店ぐらいあるので、伝統小売を獲らないとなかなか難しいですよねと。一方で、SMTは伝統小売、シンガポールはないですけど、マレーシア20万店、タイ45万店ぐらいあるというのがあったとしても、近代小売がやっぱり進んでいるし、単価も高いし、それなりに近代小売で商売が成り立つと。ただ、やっぱりね、近代小売に対する導入コストに対しての売上ROIがなかなか取れないんだみたいなね、こういう課題はやっぱり1つありますよと、前回もお話をしましたよねというのと。
あと、近代小売はほぼほぼやれているんですと。ただ、なんか伸びないんですみたいなね、こういう問題が結構あって。でも、今までわれわれが見てきた中で言うと、やれていると言っても、ちゃんとSKUが入ってなかったりとか、本来3,000店舗に入っていると聞いていたのが、2,000店舗ぐらいしか入ってなかったりとかね、結局、欠品してしまっていたら、これは入っているじゃないですよねとか。ディストリビューターと一緒に店を回っても、ディストリビューターが連れていって、安心な所にしか連れていかれないので、本来は課題のある店舗に行かないといけないのに、安心できる店舗にしか行けてないから、本当の問題が見えていなかったりっていうケースは結構あるんですよね。近代小売、現法があるのに近代小売をディストリビューターに任せているみたいなところはあるので。そういう近代小売の課題もありながら、伝統小売に関しては、やっぱりもう一番はディストリビューション・チャネルが伝統小売を獲れるような型になっていないという、この型づくりがすごい重要ですよね。どこの地域のどういう種類の伝統小売を何万店獲りたいんですかと。それに応じて型の設計をしていかないといけない。ディストリビューション・チャネルの設計をしていかないといけないので、これが全然できてない中、伝統小売がとかね、あと、うちの…、うちのというのは、お客さんのメーカー側の伝統小売を回るセールスマンの体制、こういうものもなかなか優秀な人材がいないとか、すぐ辞めるとか、回れと言って回っているんだけど、なかなか行かないとか、こういう問題がまあまああるわけです。共通の問題。何か新しい問題、「えっ、そんな問題あるの?」というよりかは、もうみんな言うことは一緒ですと。じゃあ、何が問題かと言うと、日本企業は優秀ですから、向かっている方向は正しい。前回もお話ししましたけど。ただ、その粒度の問題、解像度の問題でブレークスルーできるかできないかっていうところがあって。これは誰がどうやるかによって結果なんて全然変わるわけで。当たり前の話なんですけど、同じ伝統小売を獲る、やり方はこうですと分かっていても、それを誰がやるかによってブレークスルーできるかできないかって大きく変わるので、今までわれわれが見てきたのは、やっぱり粒度を細かく、解像度をすごく明確に見ていくとね、そこの部分でまだまだ改善余地があるっていうケースが非常に多い。製品がまず伝統小売適合化されてない。チャネルがやっぱり獲れるだけのチャネルになってないというケースが非常に多かったので、そこの改善をしていくという仕事がわれわれなんかは非常に多いですねと。
あと、これは別のエピソードでも改めてお話したいなと思うんですけど、現地人が言うことを聞かないみたいなね、うまくいかないみたいな、そういうことを言うケースというのがあって、そこで悩まれている。例えばベトナムの伝統小売が、いや、やり方は分かっているんだと。ネスレやP&Gやユニリーバやユニ・チャームやなんかのようにやっているんですと。なんだけども、セールスがなかなかと、本当にこんな大変なことをやるんですかみたいな。業務が大変になってしまっていて、現法が疲弊してしまっているというね。要は人のマネジメントの業務が非常にストレスフルで、ストレスフルのわりには結果が成果が上がってこないので、非常にストレスが極限に来ていて、「こんなことをやってももう同じなんじゃないの? われわれはやったじゃん。やったけども無理だったよね。だから、全然駄目なんだよ」って。そんなことを言ったってね、必殺技なんてないですから、ウルトラCなんてないので、やり方が間違っているという話で。結構われわれが見てきた中でね、基準値がないということを、基準値、基準値、レファレンスバリュー、レファレンスバリューってよく言うんですけど、今まで話していた基準値って、伝統小売を獲るためにはどういうディストリビューション・チャネルであるべきなんだというチャネル側の基準値がまずまったくないですよということもそうなんだけども、一方で今お話しているのはセールスのマネジメント、これの基準値もなくて、それぞれの国でね、文化も習慣も国民性も何もかも違うわけですよね。海外から見たら、日本人のイエスなのかノーなのか分からないとかね、いちいち「はい、はい、はい」みたいなのとかも、これも異文化なわけでね、特殊なわけですよね。確かに真面目で言われたことはしっかりやるというものは、ポジティブな方向に働いているんだけども、一方で突き抜け感がないという課題もね、もしかしたらアメリカ人なんかは持っているかもしれないし。そうすると、習慣とか文化とか国民性はそれぞれの国の持ち得るもので、それを変えようと思っても絶対に変えないし、それを変えるなんていうのは失礼な話だし、変わらないんですよね、そんなものは。それは尊重しつつも、それらの文化や習慣や国民性は尊重しつつも、われわれの会社はこうだからという1つの基準値がないので、セールスがああいうことをする、こういうことをする、そういうことをするとか、報告が遅いとか、なんとかだという話になってしまっていて。日本人に当たり前に求めているものを現地の人に何の基準値もペーパーベースで示さず求めてしまうから、期待値通りの答えが返ってこなくて不満が溜まっているというだけでね。キリスト教のバイブルを思い出してほしいんですけど、なぜ世界中のあらゆる文化や習慣や国民性を持った国にこれだけキリスト教が普及していったかと言うと、それぞれの国の文化や習慣や国民性は尊重しつつも、われわれの価値観というのはバイブルに収まっているわけですよね。こうなんだという、ここにみんなが賛同して1つの基準値を持って進んでいるわけですよね。シェアの高い先進的なグローバル企業というのは、こういうバイブル的なね、基準値ブックみたいなね、ハンドブックでも何でもいいですけども、こういうものが明確にあるので、悩んだらそこに戻る、悩んだらそこに戻る、そこにはやり方も書いてあるわけですよね。価値観がまずあって、それからやり方という、この2つのことがね。価値観というのはマインドセットですよね。どういうマインドであるべきなのかということと、どういうスキルセットが伴わなければいけないのかという、この2つがしっかり明文化されてマニュアル化しているというね。われわれもこういうものの作成をね、特別なお客様には一緒におつくりをするご支援をしているんですけど、これがあるかないかでやっぱり全然、ストレスが全然違いますよね。いや、「なんで言ったことをやらないの? それはわれわれの価値観と違うよね」と。「われわれのセールスというのは、仕事はこの1、2、3、4、5なので、ここをやれてないというのはあなたは悪いよね」と言うと、言われているほうもね、「あ、悪いよね。ペナルティしょうがないよね」とかね、「自分はやれたね」とかっていうことが明確になるので、こういう共通の価値観を定義をして、それをしっかりとした基準にしていかないといけないということはね、アジアというか、新興国ビジネスでは鉄則。でないとね、「20年いました。もうなんとなく分かっているんですよ、ここの国の人はこんな感じで」みたいな、非常に俗人性が高くなってしまうので、それをなくす。どれだけの企業が本当にそういう基準値を持てているのかなというのはね、僕はいつも思うんですけども。シェアの高い先進的なグローバル企業というのは必ずそういう基準値ブックがあるということですので、人でストレスを感じている企業は絶対に持つべきだと思います。向こう何十年のね、その企業の新興国市場での展開を大きく左右する、そんな存在だと思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。