ASEAN 伝統小売の未来とECの展望
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、伝統小売の未来とECの展望ということでお話をしていきたいと思います。対象地域はASEANで、FMCG、食品・飲料・菓子・日用品、文具・化粧品まで入れていいかな、というカテゴリーになります。伝統小売の未来とECの展望ということで、伝統小売ってね、本当に日本の消費財メーカーにとっての非常に大きな課題として、今、ASEAN市場、特にVIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンでは存在をしているわけですよね。ベトナム、インドネシア、フィリピンの消費財メーカーの最大で唯一と言ってもいい課題は、伝統小売をどう攻略するのと。現産していて現法があるみたいな企業はね、もうほぼほぼMTは攻略しましたと。なんだけども、伝統小売がと。タイとかね…。シンガポールはもう、ほぼ近代小売なので、基本的には近代小売ができていればいいよねと。マレーシアも、少ないんですけど、まだ20万店強ぐらいは伝統小売が残っているので、そこをどうしますか、25万店ぐらい残っていたかな。タイも基本的には近代小売だけで利益が出せますと。ただ、一方で40万店以上、45万店ぐらい伝統小売があるし。ベトナムは66万店、フィリピンは80万店以上あるし、インドネシアは447万店、伝統小売がある中で、伝統小売の攻略というのが1つ、日本企業の課題になっていて。
これはやっぱりひとえに伝統小売向けのディストリビューション・チャネルの最適化ができていない。チャネルがつくれていないということが最大のポイントで。じゃあ、伝統小売を獲るためのチャネルってどうあるべきなの?と。そこにはどんな組織が、どういう活動をすると配荷率が高まって、セルアウトが継続していくの?という構造が理解できていないので、基本的にはなかなかそれがつくれない。今、ここ10年ぐらいの中で言うと、伝統小売の販売チャネルの再構築をみんな頑張ってやっていますねというのが今現状かなと。企業によってはね、ひと昔前までは、伝統小売が近代小売になってから攻めればいいじゃんと、平気で言っていた大手の消費財メーカーとか全然あって。今、だいぶその議論はしなくなってきましたけども。伝統小売がコンビニ化してからとかね、いうわけですけども。ここからは私のあくまで仮説、見解なので、おそらく当たると僕は思っていますけども、どうなるかは皆さんご自身で市場を見て判断をしてもらったらいいと思いますけど。今日は、伝統小売の未来とECの展望ということでね、存続、伝統小売の存続がどうなるかということと、あと、伝統小売のデジタル化、デジタル武装、DXがどうなるかということと、ECが今後どうなっていくかという、この3つにポイントを絞ってちょっとお話をしていきたいと思います。
スライドをお願いします。まずね、存続のお話については、これはね、もうね、存続し続けるんですよ。この存続し続けるというのは、永遠に存続するかと言うと、僕もそんなふうには思っていないです。事実、インドネシアでは毎年3万店ぐらい伝統小売は減っていますと。減っているんだけども、もうすでに447万店あったらね、年間に3万店減ったとてね、これは190年ぐらい、全部なくなるのにかかるわけですよね。2倍3倍のスピードで減ったとしても90年60年かかるわけですよ。これだけ長いこと伝統小売が存在をするということはね、これは2番目のDXと書いていますけども、その190年とか…、180年とか90年とか60年の間に伝統小売自身がもうデジタル化してしまって、DXをして、コンビニよりも小回りの利く、デジタルな便利なお店になっているわけですよね。われわれが生きてきた世紀では、便利店というのはコンビニだった。コンビニエンスストア。でも、ASEANでは、あまりにもこの伝統小売が人々の生活と密接に結びついていて、これらがある意味コンビニに変わってくる。事実、じゃあ、セブンイレブンの数、タイでこそ1万4,000、5,000店まで伸びたけど、ほかの国どうですかと。1980年ぐらいからシンガポール、マレーシアに出ていて、何千店舗とかね、2,000~3,000店舗とか、そういうレベルでしか伸びてないと。そうこうしているうちに、インドネシアなんかは日本のセブンイレブンは撤退してしまったし、現地系のアルファマートとインドマレットが1万5,000店舗以上の店舗を獲得して。彼らも完全に、じゃあ、日本で定義しているところのコンビニかと言うと、そうじゃなかったりもするので、やっぱり各国が独自の進化を遂げていっているわけですよね。そうすると、数としては相対的に減るんだけども、残った伝統小売はデジタル武装によってめちゃめちゃ強くなるというのが僕の仮説なので。ニューリテールのようなものですよね。このデジタル武装したね、ちょっとDXの話を先にするけども、伝統小売というのは、もうデータなのでね、顧客はQRコードで買うので、汚いお金を使わなくていいしね、お店側もね、おつりがないから飴で返すみたいな、そういう世界がなくなって。基本的にメーカーは、今、自分たちの商品が、どこの地域の、どこの伝統小売で、何が、何個売れているかということを瞬時にデータを手に入れることができる。もう、一部こういうDXって始まっているわけですよね。万店舗単位で始まっていて。僕はこれがニューリテールとして結構大きくなっていくんだろうなというふうに思います。だって、やっぱり便利ですもんね、伝統小売は。伝統小売は貧困層が使うものだとまだ思っている人も少なくないので言っておくと、富裕層でも貧困層でも両方使いますよと。
あとね、なぜ伝統小売がなくならないかって、存続のほうにちょっと話をするとね、数がそもそも多いということと、あと、各国の国土交通省の都市開発計画とかを、向こう10年20年30年、バーッと見たらね、もう分かるんですけど、別にそんな、日本みたいに北海道から沖縄まで高速道路バーッひいて、津々浦々、道路が整備されるなんていう計画はないんですよ。小売だけが近代化なんて絶対にしないんですよね。日本の小売が近代化したのは、まず、道路のインフラ、物流インフラですよね、それから、電気・ガス・水道、こういったものが同時並行的に北海道から沖縄まで全部が近代化したので、その上に存在する小売も近代化できたというお話なので、小売だけが勝手に近代化するなんていうのは絶対にあり得ないと。そう考えると、各国の国土交通省の都市開発計画とか、あと、国家予算がそういったインフラに投下される金額とかをね、日本の過去と比べるとね、全然違うわけですよね。そうすると、基本的には伝統小売がそんな10年20年でなくなるなんていうことはね、誰がシミュレーションしたって分かる話でね。だから、今、伝統小売を攻略できなければ、将来やっぱり市場から淘汰される。日本の多くの消費財メーカーは、伝統小売がなくなって近代化されてから、さあ、参入ってね、そんなのはもう何十年も先なので、そのときに「すみません。僕たち、来ました」と言ってもね、これはなかなかやっぱり支持されないことになるんじゃないかなというふうに思います。
あとね、国民性。日本は中央集権で、本部が決めたことを同じようにやると儲かりますみたいな、こういうコンビニスタイルがウェルカムですよね。みんなで同じものを同じように売りましょうみたいな、こういうのが国民性に合っていると。ただね、一方でASEANの人たちと話していると、いやいや、別に今日食べる分だけ売れたらいいんだという人もたくさんいるし、いちいち本部にギャーギャー言われたくないと、自分の好きなようにやりたいという人もたくさんいて、こういう国民性がね、やっぱり合ってるんですよね。そうなってくると、どこまでこれが浸透していくか。日本のような浸透度合いってね、事実なってないわけですよ。シンガポールだって、マレーシアだってね、国土を考えたらね、もっとコンビニ多かったっていいわけですから、やっぱりそこは1つね、大きな理由としてあるよねと。
もう1つがEC、Eコマースの展望の話で言うと、Eコマースもね、コロナ前から比べると3倍ぐらいトータルでは伸びている。でも、これは、自分たちの商品が何かによって全然比率が違うので、しっかりと自分たちの商品別にユーロモニターのデータとかを見ていく必要があると思いますけど。コロナで小売もEC事業者も相当にそこに経営資源を投下したので、Eコマースは流行りましたと。日本みたいに佐川やヤマトはないんだけども、やっぱりシェアリングエコノミーがね、ゴジェックとか流行ったわけですよね。Uberを撤退させるぐらいに進化しているわけですから。そういったものがデリバリーを今、やっているわけですよね。なので、基本的にはゴジェック、グラブでデリバリーが済んでしまうので、バイクですよね。だから、デリバリーまではできるようになったと。最後ある問題はね、住所が分からない問題とか、置き配できない問題みたいのがあって、これはこの地区みんな同じ住所ですとかね、あと、置き配したら20分以内にモノがなくなりますみたいな、こういうやっぱり世界観がまだあるので、そこをどうするかという。ただ、逆に言うと、そういう機能をコンビニがもいかしたら担うかもしれないし、このDXが進むとね、問屋が要らなくなるわけですよね。デリバリーをするだけの仕事によりフォーカスしてくるので、こういった問屋が新しい機能として担うというケースはあるわけですよね。新たな役割ということで、問屋の定義が変わる、コンビニの定義が変わる、こういうことは起きてくるんじゃないかなと思います。
あと、O2OからOMOへということで、これはOnline to Offlineというのが一時期ね、非常に言われていたわけですね。オフラインがオンラインになってしまうよみたいな。でも、これはもう古い概念で、このOnline Merges with Offlineとか、Offline Merges with Online、オンラインがオフラインとマージしていく世界。なので、人にとってオンラインとオフラインって両方必要で。今、乾いた喉を潤したいなら目の前の売店で水を買うし、家で備蓄しておくような水はオンラインで買うしと。中国を見てしまうとね、すごく極端なので、北京の街とか人がいなくなってしまったじゃんみたいな、普通の人よりもデリバリーの人のほうがいっぱいいるみたいなね、何でも全部オンラインみたいな。中国ってね、良いところだと思うんですけど、良いところでもあって、悪いところでもある。極端ですよね。ワーッて、良いと言ったら、EC、ガーッと伸びるし。でも、あれだけEC伸びている国は中国以外にないしね。だから…、でも、ASEANではね、なかなかそこまで極端にはならないと思います。中国はさすがにもう、住所どこだ問題とかないですし、置いてあるものを、北京とか上海の都心部でなくなるみたいなね、ASEANより少ないと思いますから。じゃあ、今みたいな中国に一級都市にASEANの都市がすぐなるかって言うと、そうも考えられないので、両方が存続していきますよと。ECは確かに伸びるんだけども、すべてがECになるということはないというのが今後の世界なんだろうなというふうに思います。
なので、まとめると、伝統小売は存続するよと。なぜ存続するかの理由というのは、都市計画もそうだし、全部のインフラが同時並行的に近代化しないと、小売だけが近代化しないよという問題と。あと、伝統小売という商売の手法が、コンビニよりもASEANの人たちの国民性に合っているというのは1つあるし、数がそもそも多いので、完全になくなった頃には、もうね、そこから参入してももう遅いよという意味でね、やっぱり今、伝統小売を獲るということがすごく重要だというふうに思います。DXもどんどんしていくし、伝統小売は伝統小売でより進化していくので、伝統小売はこのまま弱小で、伝統的で本当にトラディショナルで消えていくんだという世界はない。残る伝統小売はデジタル武装していきますよと。ECは伸びていく、伸びていくからウォッチしないといけないけども、これは製品ごとというか、カテゴリーごとに伸び率が全然違うので、考えていきましょうねと。シェアリングエコノミーがデリバリーはもう解決しているし、最後のラストワンマイルの住所がどこだ問題と置き配できない問題みたいのも、これもね、問屋やコンビニの役割が新たに変わることで解消されるでしょうと。O2OからOMOに考え方が変わっていくことによって、オンラインもオフラインも両方必要になると、そういう世界がもう目の前まで来ていると思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。