アジア新興国 仮説の精度を上げた企業が勝つ
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「仮説の精度を上げた企業が勝つ」ということについてお話をしていきたいと思います。「仮説の精度を上げた企業が勝つ」ということで、対象はアジア新興国市場、FMCG、いつも通りですね、食品・飲料・菓子・日用品を中心としたB2Cの製造業が中心になりますが、今日の話はB2Bでも製造業であれば問題…、製造業じゃなくても問題ないですね。今日の話は全般的にということで。ただ、事例なんかはもしかしたらB2Cが多くなるかもしれません。「仮説の精度を上げた企業が勝つ」ということで、仮説って何?ということなんですが、アジア新興国市場、ASEANでも、インドでも、中国でも、どこでもいいんですけども、自分たちの勝ち筋を見出そうとするときに、戦略を考えるわけですよね。戦略とか戦術を考える。これってすべて仮説を描きながら、少し試して合ってる合ってない、微調整をして、さらに先に進むということになるわけで、最初からこうです、ガチャッ、結果が出るまでこの方法は変えません、ドーンみたいな、こういう話ではなくて。もちろんガチャッと決めるんだけども、その結果というのはある程度の期間で細切りにしながら状況を見て方向を変えていく。これは言ったら、中途半端に少しだけやってすぐに方向を変えるということじゃなくて、自分たちの仮説を検証しながら前に進むという意味で、微調整していかないといけないと。
この仮説の精度が弱い企業というのは、当然ながら勝つ確率が少なくなるわけですよね。仮説の精度が高ければ高いほど勝つ確率というのは上がっていくわけですよね。これを少し図を使って説明をすると…。すみません、スライドをお願いします。こういう図になるわけですが、インプットが多い、インプットというのは情報量ですよね。情報量が多い企業は、仮説の精度が高くなるわけですよね。なぜならば、当たり前ですよね、情報が多いですから、競合の情報、市場の情報、流通の情報、あらゆる情報が粒度が細かく、解像度が非常に細かい、こういう情報をたくさん持っていると、考え出せる仮説、設定できる仮説の精度が非常に高くなりますよね。具体的になると、さらにね。そうすると、その具体的で精度の高い仮説を実行したときに、仮説というのは実行したら必ず誤差が出るんですけど、この誤差の振り幅がどれぐらい大きいかっていうことが非常に大きなポイントになるわけなんですが、高度な仮説、精度の高い仮説というのはこの誤差が少ない。誤差が少ない仮説は、その場で修正しながら再び走ることができるので、成功に行き着く確率が高くなりますよということを申し上げています。一方で下の話、情報が少ない、競合の情報も、市場の情報も、流通の情報もよく分かんない。ただ、日本で実績がある、とにかく良いものを持っているし、やってみればいいじゃん、やってから走りながら考えようよ、ドーンと行きましたと。やってみたんだけども、えっ、何、伝統小売って、聞いてたけど、こんな感じなの? こんな難しいの? えっ、主要の小売に入ったのに輸入品棚にしか置かれないじゃんと、メインの棚で3SKU、5SKU、獲れないよと。えっ、なんで棚に置いているのに消費者の手が伸びないの? 仮説の精度が低いので誤差が大きくなると。誤差が大きくなると、もう進出して出てしまっていますと。出て出血が出ていますと。出血というのは固定費がかかっていますと。そうすると、ここから伝統小売を獲るためにはどうしよう、ああしよう、こうしようということを考えていると、結局、停滞をしたり撤退をするということに近づいていくわけですよね。なので、成功の確率が低くなりますよと。
走りながら考えるとかね、とにかくやってみるみたいな、非常に耳障りがいいし、聞こえはいいと。なんだかチャレンジングで、非常に前向きな表現なんだけども、これ、アジア新興国のB2Cの消費財のビジネスでね、これはもう失敗の前例、事例なんていうのは山ほどある中で、それを見ずして、とにかくやってみよう、チャレンジしてみよう、走りながら考えよう、なんていうのは、明らかにナンセンスな話で。走りながら考えるとか、とにかくやってみよう、チャレンジするというのは、これはシリコンバレーのイノベーション、誰もやったことのない、前例のないことに挑戦する人たちの使う表現であってね、それを消費財のASEANとかアジア新興国のビジネスで、失敗・成功の要因がたくさん転がっている世界でその言葉を持ってくるというのはね、僕はこれはあんまり賛同ができない。
なので、やっぱりしっかりと調べると、調査をすると。日本の企業はとにかく調査しなさ過ぎ、無形なものにお金払わなさ過ぎ。調査に予算をしっかり割く。調査は投資なんですよね。この成功の確率を高めるための投資なので、これをやれないと、やっぱり永遠に新興国市場で成功を掴むということはなかなかやっぱり難しくて。東アジアでね、しっかり調査したこの経験というのはASEANで生きてくるので、東アジア進出でちゃんと調査を投資突っ込んだらね、これは、そのときは高かったかもしれないけど、東アジアではしっかり成功できたし、一方でそのときの調査ノウハウとか、どういう調査会社を使えばいいのかとか、どういうふうに調査の結果を活用すればいいのかとか、どういうふうに進めばいいのかということがノウハウとして社内に溜まってますから、それがASEANで生きる、メコン経済圏で生きる、インドで生きる、アフリカで生きる、南米で生きると、ほかの地域にも応用できるわけですよね。ただ、これがいつまでも、「いや、調査にお金をかけた前例がありません、うちは」みたいな、「自前でやれ」みたいな。調査屋は調査屋ですから、メーカーがやれるような調査って、セカンダリー情報を収集するんだったらいいですよ。セカンダリー情報というのは、いわゆるネットで転がっているような情報ね。なんですけど、やっぱりプライマリーの情報から真実は分かるし、自分たちが当事者でね、プライマリーの情報を教えてもらえるわけは当然ないわけで。なので、われわれみたいな機関をしっかり使って調査をするということはやっぱりすごく重要で、調査は費用ではなく投資であるということが大前提ですよと。
調査をやらない会社はね、やっぱり結構難しい、難しいと思うんですよね。10年前、15年前から同じ課題で足踏みしている会社はたくさんあって、じゃあ、共通点は何かって言ったら、インプットがもう確実に少ない。なんでインプットが少ないのか、調査をする予算が取れない、取らない。取れないということはないので、取らないっていう話なんですよね。なので、その間にね、5年、10年、15年、非常に遅れを取って後手に回るんだけども、その間に担当者が何人も代わっているので、なんとなく遅れを取っていることが顕在化しにくい状態というのが、私が過去見てきた実態なので。本当にね、声を大にして申し上げたいのは、調査をしてくださいと。インプットが日本企業は少な過ぎて、日本企業が新興国市場でマーケットシェアが伸びない要因は、高度な問題で、高度な次元で何か課題があるのかというと、そうではなくて、非常にベーシックな部分、ベーシックな領域で課題があるというふうに思って言います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。




