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『良いプロダクト』の定義を疑え

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日もFMCG、食品・飲料・菓子・日用品、消費財メーカー向けのお話です。対象エリアはASEAN、アジア新興国、新興国全般というふうにしておきたいと思います。

今日は何の話をするかと言うと、前回からの少し続きでもあるんだけども、プロダクト依存型の延長線上の話で、日本の消費財メーカーが新興国市場で失敗するいくつかのパターンの中にプロダクト依存型というのが非常に大きな比率で存在していて。このプロダクト依存型の中でも、前回お話したようにね、『1P戦略』、これが課題で、『1P戦略』からいかに脱却するかという企業もたくさん見てきたし。

もう1つあるのがね、『良いプロダクト』の定義を疑うというね、ここもやっぱりすごく重要で。日本の『良いプロダクト』が必ずしも世界の良いプロダクトとならないという。何だろうな。例えば『良いプロダクト』の良いって、何をもって良いと定義されるんだろうと。われわれ日本人が感じる良いと、海外の人が感じる良いってね。まず、味覚の問題でも全然違って、例えばパクチー嫌いなのに、「パクチーいいでしょ」って、「パクチーサラダ食べて」って言われても困るわけじゃないですか。僕はパクチーめちゃめちゃ好きなんですけど。でも、嫌いな人はほんとに嫌いで。僕も14歳ぐらいのときに初めてパクチー食べたときに「何だ、この葉っぱは!」と思ったので。でも、そこからやみつきになっていったんですけど。パクチー嫌いな人に「パクチーサラダ食べろ」と言っても。これって、一部の例えば女性中心向けのタイ料理屋とか、ベトナム料理屋とか、ちょっとアジアエスニック料理屋さんでパクチーって、これは人気かもしれないけど。これを例えばマスに「パクチー」と言っても絶対無理じゃないですか。消費財って、いかにたくさんの人に、いかに早い頻度で、いかに繰り返し買い続けてもらうかということがビジネスの非常に重要なコアになるんですよね。そこに対して、パクチーを小さい頃から食べているタイやベトナムではいいかもしれない。シンガポール、ASEANもそうだけども。でも、日本の子どもにね、ブロッコリーを食べるのに躊躇する子どもに「パクチー食え!」みたいな、これはなかなか難しいのと一緒で。何だろうな。例えが悪いな。例えば、分かんないですけど、中国の人にね、「月餅美味しいでしょ?」と、「月餅食べて。食べまくって」とか、例えば日本の羊羹を外国人に「どう? 食べて、食べて」って押し付けてもね、虎屋の羊羹の良さを僕が分かったのは40歳過ぎてからですよ。日本人の僕でもそんなものだし、日本茶が本当に美味しいなと思い始めたのも40歳過ぎてからなので。なので、僕は虎屋の最中とか大好きなんですけど、昔、最中とかあんこ系とか和菓子なんていうのは一切口にしなかった。それが40歳過ぎてからなので。日本人でも難しいものを海外の人にみたいなね。この本当にわれわれの言っている良いって、海外のその国の人の良いなのかっていうことを考えないといけないということと。

一方で、ある意味、それを早く、食べ物とかだったらね、口に入れたものの勝ちっていうのがあるわけで。いわゆる口に入れるものってすごく難しいんだけども、食べた瞬間に「こんな美味しいものが世の中にあったのか」と思えるようなものと、あと、食べた瞬間に「うっ…」と一瞬思うんだけども、でも、それをずっと食べ続けると、それが味覚として慣れていって良くなってくるという、いろんなものがあると思うんだけども。僕がここで言いたいのはね、食べ物だけじゃなくてもいいんだけども、食べものにおいては、本当に日本の良い、われわれが良いと信じていたものが本当に良いのかなと。これは製品的にね、これは例えば味覚の話もそうだし、クオリティ、クオリティ良いが、その国の人の良いにはならなくて、クオリティなんかよりも、値段下げてとかのほうが良いになるし。あと、買う場所ね、プレイスがより身近な伝統小売でいつでも買えるほうが良いになったりとか。あと、もっともっと知名度があって、宣伝いっぱい見えているほうが安心して良いだったりとか、要は本来のモノの良さよりも、イメージで良いになったり。だから、良いの定義が必ずしも日本で良いで評価されてきた定義とは違いますよということを疑い続けるということがすごく重要で。よく日本企業のありがちなパターンとしては、いわゆるオーバースペックなクオリティ、機能、こういったもので良いを勝手に決めつけてしまっていて。でも、そこまでのものは望んでいなかったりとか、そこまでクオリティを上げるんだったら値段を安くしてほしいとか、もっとチャネルに投資してどこでも買えるようにしてほしいとか、もっとイメージを植え付けてほしいとか、そういう話にもなるので、良いの定義を疑うと。

一応、大したスライドじゃないんだけど、またスライドあるんだけども。(笑)編集の人も気を利かせてもしかしたらもう少し前から出してくれているかもしれないけども、こういうスライドがあって。別にスライドにするほどのことでもないんだけども。(笑)とにかく良いプロダクトの定義をもう1回見つけ直す。いや、それでも良いんだったら別に全然良いんですけど、なんだけども、疑うということは絶対に必要ですよという話でございます。

それでは、今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。