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ASEAN プロダクト依存型企業の失敗事例

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日もFMCG、食品・飲料・菓子・日用品・文具…、化粧品ぐらいまでいいかな、を中心に、ASEANを中心に事例としてお話をしていくことになると思います。B2Bとかね、それ以外の企業さんは皆さんの事業に置き換えて聞いていただければと思います。まあまあ、ASEANじゃなくても構いませんけど、新興国全般、特にASEANということでお話をしていきたいと思います。

最近ね、日本の消費財メーカー、中国が腰が引けて、この6~7年前から腰が引けてASEANに移って、いよいよ本当に本格的にインドがね、すごく案件としては増えてきているので、その辺をちょっと想定してお話をしていきたいと思います。

前回からの続きになりますけども、プロダクト依存型企業の失敗事例ということで、ちょっとフレームワークを用いて、どういうふうにプロダクト依存型が失敗していくのか。前回のお話だと、例えば日本の消費財メーカー、これは消費財メーカーに限らずですけど、1P戦略。いわゆるフィリップ・コトラーは、ターゲットに対して、プロダクト、プレイス、プライス、プロモーションが、4P、マーケティング・ミックスが最適化されていて初めてモノはセルアウトし続けていくというふうに言っているわけですよね。これがマーケティングロジックなわけですが、それを1つのP、プロダクトが良ければ、簡単に言うと、プライスも、プレイスも、プロモーションも、二の次になってしまって、バランスが取れていない。それがゆえになかなか市場と合致せずに商品が売れないという、こういう現象が非常に多いですよと、1P戦略。この1PのPにはね、私は皮肉も込めてプレミアムと。どの日本企業と話をしても、やっぱりプレミアムと。プレミアムで売ることは悪くないんだけども、何をもってプレミアムかっていう。いや、そりゃ、誰だってプレミアムで売りたいですよね、単価を上げられるし、そのイメージは非常に良いので。ただ、プレミアムっていうものが伝わりきってないというのが1つだし。じゃあ、プレミアムでも、そこまでのプレミアムを本当に消費者が望んでいるかって、自分たちがどう出したいかっていうことが優先されていて、市場が何を求めているか、消費者が何を求めているかっていうのが二の次になってしまっているケースが非常に多くて。そんな話を前回したのかな。

今回は、じゃあ、このプロダクト依存型企業の失敗事例を少しフレームワークに当てはめてみると…。スライドをお願いします。こういうことで、4P、マーケティング・ミックスね、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションとあるんですけど。できれば日本で実績のある商品を、あんまり仕様変更したくないと、変えたくないと。もうぶっちゃけこのまま売りたい。ラベルだけ現地仕様に貼り替えて、貼り替えるのも日本で面倒くさいから現地でやってくださいと。このまま売りたい、これがもうね、プロダクトの本音の根幹にあって。自分たちは良い原材料を使って、高い技術力で、良いものをつくっているんだと。日本市場で成功しているんだと。実績があるんだと。だから、このプロダクト。で、ASEANだし、少しは安くするけど、できれば日本と同じ価格、プレミアムジャパンで、ちょっと高めでお願いしたいと。プレイスに関しては、基本的には慣れ親しんだ近代小売でやっぱり売りたいよねと。TT大切なのは分かっているけど、手間も労力もお金もかかるし、できれば近代小売でバンバン売れていったらいいなと。伝統小売はディストリビューター丸投げでバンバン売れていくような感じになりませんかみたいなね。プロモーションは実績が出たらかけるけど、実績が出るまではちょっとあまり投資したくないなというケース。もしくは、まだチャネルが整ってないのに、いきなりテレビCMやってみましたみたいなね、そういうよく分からない会社もありましたけども。この4Pがこういうふうに自分たちがやりやすい4Pが前提としてあった上でターゲット。結局、ターゲットが後付けなんですよね。もちろん中間層が大事だ、上位中間層へ行こう、こうだああだと言ってターゲットをぼんやり設定はするんですけど、それよりも、もう決まってしまっている、自分たちよがりの決まった4Pありきで市場に製品投下するので、結局、必然的には中間層に売れずにターゲットが牌の少ない富裕層に偏ってしまうと。でも、ASEANって何が大切かって、中間層が一番大切で、伸びゆく中間層を獲れなかったら何の意味もないし。そもそもFMCG、Fast Moving Consumer Goods、消費財はいかにたくさんの人たちに、いかに早い頻度で、いかに繰り返し永遠に買い続けてもらうかということがビジネスの肝なわけで。富裕層だけを狙うんだったら、高級食材を売っていたらいいんじゃないですか。いや、シャークフィン売ってますとかね、ゴディバのチョコレートを売ってますとか、分からないですけども超高級品、数百円のものを売っているんじゃなくて、数万円のものを売っているんだったら富裕層って言ったらいいんでしょうけども、FMCGで富裕層っていまいちよく分からなくて。日本でそんなこと絶対やってないですよ、FMCGね。なので、なぜそこでターゲットが変わるのかっていうことでね。胃袋、食品メーカー、飲料メーカーは胃袋獲得戦で、いかに若くて大きな胃袋をたくさん獲るかっていう、ここの勝負をしてるのに、良いものばっかり食べているお金持ちの胃袋を獲りに行きますみたいな、よく分からない戦略に出て失敗をするというね、こういうケースが非常に多いと。

じゃあ、どういうフレームワークであるべきなのかと言うと、次のスライドで。まずターゲットは絶対にありきなんですよね。ターゲットに対して4Pではなくて、4Cを当てていくということをやらないといけない。消費財メーカーの場合、ASEANというか、アジア新興国市場全般でターゲットは中間層、一番ボリュームの多い中間層、ここを狙っていくわけですよね。もっと細かい分類すると、どの国の、どの都市の、どのエリアの、どういうライフスタイルを持った、どういう性別の、どういう人なのか。さらにその消費者の先の、その消費者はどういう小売と接点を持っているのかで決まっていくわけですよね。その小売も、じゃあ、その小売の中のどの店舗の、どの棚の、MTだったらね。TTだったら、じゃあ、どのエリアの、TTもランクがいろいろありますから、どのランクまでを狙うんだということを設定していって。そのターゲットに対して4Pではなくて4C。4Cというのは、4Pというのはメーカーの視点ですよね。自分たちが何を売りたいの? いくらで売りたいの? どこで売りたいの? どう知ってもらいたいの?という、すべてがメーカー主導、メーカーの側のお話。これはね、ある意味プロダクトアウト的な発想で、必要な面もあるんですよ。だから、完全否定する意味ではなくてね。これがわれわれの良いなんだということを市場に訴求していく。そういう意味でプロダクトアウト、4P、これは必要ですけど。一番大前提として考えなきゃいけない発想は、やっぱりマーケットインの考え方だし、それをやるんだったら4Cのフレームワークに当てはめないといけない。カスタマーバリュー、コスト、コンビニエンス、コミュニケーション。これ、例えばカスタマーバリューって顧客価値ですよね。顧客が求める商品は何なのかということが前提としてあるので、日本で実績がある商品ではなくて、顧客が求める商品は何なのか。現実的にはね、商品を0開発するなんていうことは…、例えば菓子とかだったらないですよね、まず基本的には、洋菓子、洋菓子というか、いわゆるコンフェクショナリーとかね、飲料とか。でも、やっぱり顧客が求める商品にアジャストしていくという必要性はあるし。例えば日本食由来の調味料とかね、そういったものっていうのは、やっぱり変えていかないといけないし、もしかすると、現地の料理に合わせたものに0からつくり替えるということも必要なわけなので。顧客が求める商品をまず、何なんだという、この発想が根底にないと駄目だし。

あと、FMCGということはね、1回や2回、誰でも買えるんですよ。100円200円のものは。ただ、重要なのは繰り返し使い続けてもらうということで。顧客が本当に賄える価格帯なの?ということがすごく重要なので。賄えるか賄えないかなんですよね。買えるか買えないかじゃなくて、賄えるか賄えないか。コンビニエンス、これもメーカー側がどこで売りたいかじゃなくて、どこで自分たちが売りやすいとか、売れるとかじゃなくて、顧客にとって買いやすい売り場はどこなの?と。買いやすい方法は何なの?ということをベースに考えていく必要があるし。顧客もね、棚に並ぶということは、競合の商品と同じところでさらされるということなので、顧客が5回に1回、4回に1回、3回に1回、自分たちの商品を選んでもらう、これが顧客コミュニケーションなわけですよね。顧客のエボークドセットに入れる。エボークドセットというのは、モノを買うときってね、棚の前に行って「どれにしようかな」なんて言って買わないわけですよね。もうある程度、自分が買おうと思うものが頭の中に描かれていて、「あれを買いに行こう」と、もう決まっているんですよね。お店に入る前から決まっている。そうすると、そのエボークドセットに入ってなかったら、端から買わないわけですよ。店頭でね、BTLでね、売り子さんがめちゃめちゃ推薦してきたら、そりゃあ考え方を変えるかもしれないけど、基本的には顧客とコミュニケーション取ってないのに、エボークドセットに入ってくるわけないので。そこの仕掛けがまったくなくしてね、いや、日本で売れているので、きっとアジアの人たちも分かってくれるはず。いやいや、分かりませんって、というお話なので、このターゲットに対して4Cを当てていくということが大変重要ですよというお話でございます。

今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。