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ASEAN 「売ること」をパートナーに丸投げした企業の末路

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、パートナー依存型の失敗事例ということでお話をしていきたいと思います。前回までプロダクト依存型の失敗事例ですよね。日本の製造業さん、消費財メーカーさん、特にFMCG、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカーがアジア新興国市場で失敗をする、その大きな要因は必ず私が説明しているこの3つの法則に当てはまっていて。今日はその2つ目の法則についてお話をしますと。それはパートナー依存型のお話です、ということで話します。

パートナー依存型なんですけど、これね、プロダクト依存型。前回お話したプロダクト依存型もね、もう基本的にほぼ100%当てはまっていますよね、日本の消費財メーカー。一方で、このパートナー依存型もほぼほぼ100%に近いぐらい当てはまっていて。どういうことかと言うと、消費財のアジア新興国展開において、パートナーとかね、ディストリビューターみたいなのっていうのは絶対に必要なんですよ。現地法人があって、近代小売に直販をするのであれば、これは…。直販をするのであればというか、近代小売に売るのであれば、ディストリビューターやパートナーは要らないです。そもそも現地法人があるのに、近代小売と直接交渉できていないというのがね、まだまだ少なくなくて。これ、欧米の先進グローバル企業で、現法があって近代小売で本部商談を直接やっていないなんていう会社はまずないですよね。日本で消費財メーカーで大手の小売さんと直接商談してないところなんて1社もないはずなのに、現地に自分たちの会社があるにもかかわらず、現地の主要な近代小売との商談をディストリビューター経由でやっている。これは本当に不思議な話で。メーカーにとって近代小売との関係性、コミュニケーション、こういったものってアセットですよね。財産なんですよね。これを時間をかけて積み上げていくから、この国では自分たちは主要3大小売との強固なパートナーシップ、長年にわたって築いてきたというものがあって、いろんなことができて、なくてはならない存在になるわけなんですけど。それをディストリビューターに投げているみたいなね、こういう状態がそうだし。

あと、伝統小売が重要だったりするわけですよ。特にASEANなんか、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピン。インドに行けばもっとだし。そういう市場において、この伝統小売の攻略も基本的にはディストリビューター任せ。本音を言うと、ディストリビューターに任せておいてうまくやってくれたらそれが一番楽みたいなね。結局、メーカー自身が、本当の課題がどこにあって、それをどう解決していけばいいのかっていうのが分かってないので、日本で問屋に全部を任せるなんていうことはないわけで。問屋のほうがメーカーよりも市場が分かっているなんていうことは絶対にないわけで。メーカー自身が自分たちでマーケティングの根幹をしっかりと握って、その上で部分部分問屋さんを使っていくという、こういう構造があるべき姿というか、本来の姿。一方でディストリビューターへの依存度がめちゃめちゃ強いし、ディストリビューター側もやっぱりメーカーを測っているわけですよね。欧米の企業とも付き合っている。日本の企業とも付き合っている。日本のメーカーは何も分かってないなと、これはカモネギだと。これぐらいマージン取ってやれと。問題が起きても「ここが駄目だ。あそこが駄目だ。そこが駄目だ」と。結局、何が問題なのかが明確に分からない、解像度が明確に見えてこない、こういう問題で苦しんでいる消費財メーカーは非常に多くて。

われわれの仕事はそれを可視化して、真の課題を抽出して、その課題を改善していくという、この3つが仕事なわけですけども。やっぱりね、ちょっとスライドを出してもらおうかな。売ることをパートナーに丸投げするということは、問題が起きてもパートナーの言いなり。パートナーというのはディストリビューターであるというケースもあるし、いわゆる同業種の合弁的なパートナーシップもあるので。本当の問題が分からない。パートナーと一緒に同行しても、連れていかれるのはパートナーが見せたい、きっちり配荷されているお店。本来、メーカーが見なきゃいけない、課題がある、問題があるお店には連れて行ってもらえない。調子が悪い理由は、景気と為替と値段が高いからと。問屋から出てくる策は、安売りしようと、「buy 1 get 1 free」やろうみたいな。小売も一緒ですけどもね。安く売るんだったら誰にでも売れるわっていう話で。やっぱり自分たちで市場を、自分たちでディストリビューターよりも、小売よりもマーケットを理解して、その上で議論をしていかないと、やっぱりイニシアティブ取れないですよね。なので、こういう売ることをパートナーに丸投げしている企業で、うまくいっている企業なんて私は見たことないし、逆に、シェアの高い企業で、いや、売ることはパートナーさんにというのも見たことない。シェアが高い企業というのは、誰よりもマーケットのことを理解していて、めちゃめちゃ調査やってますよというね、これが1つ大きいのかなと。

あと、日本の消費財メーカーの場合は、「誰に」売るかよりも、「誰と」売るかに神経が回ってしまっていて、「誰と」売るかなんかあとですよね。「誰と」売るかというのは方法論であって、方法論は何のための方法かと言うと、目的を達成するための方法でね、「誰に」売るかというのがまさに目的なわけですよ。そうすると、自分が売りたい相手に売れない相手と組んだって全然意味がなくて。組みたい相手の特徴もね、とにかくデカいところ、実績のあるところ、財閥系みたいなね。そんなことはどうでもよくて。導入期に財閥と組んでね、本当に、じゃあ、財閥がそこに投資をしっかりしていくんだという計画がしっかりと出ればね、それは別にすべてを否定するものではないけども。大手で実績がある、それは大手で実績があるところはみんないいですよと。ただ、大手で実績があるところは、例えば皆さん、あまり経営資源を投下しない皆さんよりも重要なその他の国のクライアントを持っていたりすると、どうしてもエース級のチームはそっちに割かれるし、やっぱりそっちのエース級のメーカーさんが投下する経営資源が当たり前だと思っているので、それなくして気合いと根性で売ってくれって言われても困るよって言われてしまうわけですよね。だとすると、中堅である程度首根っこつかみやすくてね、コントローラブルなディストリビューターを使ったほうがよっぽどシェアが伸びる、なんていうことは往々にしてあって。なので、大きいとか、実績があるとか、そういうことではなくて、自分たちが売りたい相手に本当に売れるのか、具体的にどう売るんだということを開かせて、そこに納得をするからそこと組むという、こういう選定をしていかないといけないし、これこそがパートナーを選定する基準なんですけど。目的よりも方法が先にきてしまう。「誰に」売るかよりも、「誰と」売るかが先にきてしまうだけじゃなくて、その「誰と」売るかの選定基準もかなりあいまい。なので、売ることはね、自分たち、もうどれだけ自分事になれるかっていう、ここが僕は本当に大切だなというふうに思います。

今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。