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アジア新興国 日本企業の弱点

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は…、前回まであれですか、「R」-「STP」-「MM」、マーケティングの基本プロセスを魔法のフレームワークと称して解説をしてきたのかなというふうに思います。魔法のフレームワークというとちょっと怪しいですけど、そんな話をしてきたと。

今回は、その「R」-「STP」-「MM」のね、マーケティングの基本プロセスのフレームワークの中で、日本企業が最も弱点としている部分、いろんな企業を見てきて「こことここが弱いですよ」ということをちょっとお話をしていきたいなというふうに思います。

それでは、スライドをお願いします。これは「R」-「STP」-「MM」。このフレームワークさえしっかり最適化できれば、基本的にはモノは売れますよと。「R」をしっかりやれば、出てからね、こんなはずじゃなかったという大きな間違いにぶつかることはほぼないし、「STP」、ターゲティングですよね、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングがしっかり設定されれば、それに対してどう「MM」を組むのかということが考えられるので、まずこのターゲティングをしっかりやっていくということと、ターゲティングがしっかりやれればやれるほど「MM」は強固なものになっていきますよ、というお話を前回までしてきて。

この図の通りね、やっぱり日本企業が弱点となっているのはね、日本企業の弱点となっているのは、販売チャネルの競争力なんですよね。これ、「R」って、「それはどんな市場なの? どれぐらい儲かる市場なの?」というのがマクロ環境分析で。一方で、じゃあ、「その儲かる市場に対してどれぐらいの敵がいるんですか、潜んでいるんですか」と、これがミクロ環境分析。「そこに自分が出たらどういうことが起こるのか、勝てるのか、負けるのか、どれぐらい勝てるのか、どれぐらい負けるのか」、これがSWOT分析なわけですよね。このときに、マクロ環境に関してはね、これはもう基本的にセカンダリーデータをしっかり見ればね、デスクリサーチで十分、ある程度想定ができるし、調査するまでもないというケースも往々にしてあるわけですよね。確かにSWOT分析は客観的な分析が必要なので、われわれみたいな第三者が分析するのと自分で分析するのでは視点が違ったり、というケースはあると思います。ただ、そもそもやっぱりこのミクロ環境の競合の競争力に対するインプットがほとんど入っていない。競合を具体的に理解できていないというのが一番の弱点になるところかなというふうに思います。

じゃあ、競合の何が理解できていないのかということをもう少し深く見ていくとね、この「MM」のところのプレイス。プレイスって言ったら販売チャネルのことですから、販売チャネルが見えていない。製品の差とか、プライスの差とか、これって正直、表面上に、目にあるものなのでね、目に見えているもので、プロダクトがもうそもそもダメだったらどうにもならないわけなので、基本的にはプロダクトでっていうことってほぼないんですよね、日本企業の場合は。プライスはもっと努力をすれば、もっとどうにでもなる話だし、基本的には表面に見えているところというよりかは、このプレイス、販売チャネルの表面では見えないところ、見えにくいところ、ここがやっぱり全然理解ができていないというケースが多くて。チャネルがね、プレイスがしっかりできていないと、プロモーション投資なんかできないわけですよね。プロモーション投資をしても、プレイスがしっかり消費者に行き届いてないと空回りしてしまう。砂漠に水をまくようなものになってしまうので、プロモーションがね。なので、これは前輪駆動がプロダクトとプライスだとすると、後輪駆動がプレイスとプロモーションで回っていかないといけない。同じスピードで回さないといけない。

そうなったときに、ターゲットに対してこの「MM」を最適化するんだけど、やっぱりどこまで最適化していけばいいのかという基準値がないので、それで結局チャネルも出たとこ勝負とか積み上げになってしまっていて、競合の販売チャネルがこういう状態であって、何%のシェアを持っている、そうすると自分たちはどういう販売チャネルをつくらなきゃいけないのかというね、基準値ベースでチャネルをつくらなかったら、チャネルとチャネルのぶつかり合いですからね、新興国市場の消費財のビジネスなんていうのはね。そもそも商品が駄目とか、価格が高過ぎるって、もうこれは論外なので。ここが駄目ということは、そもそも出ては駄目という話なので、そこでの競争じゃないですよね。チャネルのやっぱり競争で圧倒的に負けている。例えばね、ディストリビューション・ネットワークがそもそも、ストラクチャーがそもそも違う。チャネルのストラクチャーがそもそも不完全だとかね、使っているディストリビューターの規模と数と質で負けているとかね。じゃあ、ディストリビューターの数では勝っているんだけども、実は、じゃあ、その中で自分たちの商品を売ってくれている専属のセールスマンの数と質で負けているとかね。こういうふうに見ていくと、だから、伝統小売の配荷が進まないとか、だから、近代小売も偏った配荷しかできないとかね、こういうことになっていくので。基本的にはこのミクロ環境分析とこのプレイス、競合の販売チャネルを可視化するというところが一番弱点になってくるのかなというふうに思います。

次のスライドをちょっと補足としてお話すると、やっぱり日本の企業と先進グローバル企業、それからローカルの企業、消費財で言うとね、競争力はやっぱり先進グローバル企業が一番高いわけですよね。これがもう圧倒的なシェアをどの国でも持っていて。例えばP&Gとか、ユニリーバとか、ネスレの話をしていますけども。それに追随するようになってきたのがローカル企業で、アジアの企業というふうに言ってもいいかもしれないですけど、これがやっぱり日本企業よりもシェアを獲り始めていますと。そんな中でね、じゃあ、確かにローカル企業は価格優位性はあると。製品は劣っている。日本企業と、じゃあ、先進グローバル企業の製品はね、別にそんなに劣っていない。価格優位性は確かに少しグローバル企業のほうが高かったりもする。なぜならば、彼らは世界標準化がもう大前提としてあるので、基本的にどの国でも同じものを売りますから、コストも優位性を出せるわけですよね。一番、じゃあ、この中で優位性が高いのってね、チャネルなんですよね。チャネルが高いとプロモーション投資ができる。なぜならば、このプロモーションをこういうタイミングでこういうふうに打てば、チャネルが生きているので、しっかりとそれが返ってくるということが分かっていますから、プロモーション投資を大きくできるわけですよね。このチャネルの比較をまったくやっぱり日本の企業はできていなくて。自分たちのディストリビューターがいけているのか、いけていないのか、優秀なのか、優秀じゃないのか、どう優秀なのか、競合と比べてどうなのかっていうところがまったく分かっていない企業がたぶんほとんどで。何か不満がありますと、でも、一応これぐらいはやってもらっていますみたいなね、そういう状況でちょっといきなり変えるわけにもいかないし、どうしたらいいんだっていう、そういう状況が多いのかなというふうに思います。
なので、ちょっとまたスライドを1個戻ってもらって、このスライドにある通り、競合のチャネルをしっかり見るということから、どういうチャネルで自分たちは戦うべきなのかと。チャネルとチャネルがぶつかり合うわけなので、チャネルは一夜にして強固なチャネルは出来上がりませんから、そのチャネルを今一度見直していただけたらなというふうに思います。

今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。