
アジア新興国事業の敵は内にいる
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この動画の要点
- アジア新興国事業を妨げる敵は、外ではなく内側にいることが多い。
- ディストリビューターは、常に自分たちの都合で経営資源を配分する。
- 現地社員を通した情報には、悪気なくバイアスがかかっている。
- 過去にやったことの中にこそ、突破口が眠っていることが多い。
内なる敵について話す回です。挙げているのは三つ。売ることを長く預けてきたディストリビューター、情報が一本化されている現地社員、そして長く駐在した人の「あれもこれもやったが駄目だった」という声です。1,000店舗に入っていると聞いていたのに、決められたSKUが決められた場所に置かれているのは2割だけ。競合は1日30軒回っているのに自社は15軒。オーナーに会えていなければ、訪問した意味もありません。ウルトラCのような手はまず現れず、答えは過去に試したことの中にあります。誰が、いつ、どこまで精緻にやるかで結果は変わります。
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDER INITIATIVEの森辺です。今日は、前回Podcastの番宣みたいなエピソードになってしまいましたけど、前回ちょっとお話をしようと思っていた、大石先生とPodcastで対談したときに議題に上がったお話をちょっとこのYouTubeのほうでもお話しようかな、すごく重要なことなのでお話しようかなと思っていたんですけど、そしたら時間がなくなって、前回番宣になってしまって…。今日はその話をしていきたいと思います。どんなお話かというと、戦略を構築をしていくということがすごく重要ですよねと。大石先生も前回言っていましたけども、先進グローバル企業だけじゃなくて、中国企業とかASEANのローカル企業の競争力がここ10年でものすごく上がっていて、彼らは非常にマーケティングを自分たちの武器にするし、戦略的に戦っていると。そんな中で日本企業もしっかりと戦略的に事業を推進していかないといけない。ただ、それをしようとしたときに、大きな敵が実は中にいるというね、こういうことって非常に多いんですよね。私たちが見ている現場でもそういうことばっかりで。
大きく分けて3つ内側に敵がいるんですけど、1つはディストリビューターが敵になるということがあって。結局、大手の、例えば消費財メーカーさんなんかは、もともとアジア新興国市場って、自分たちから戦略的に攻めていった市場かというとそうじゃなくて、向こうから、もともとは生産拠点として出ていっているわけで、消費市場として見始めたのって本当にここ、本気になったのはここ10年ぐらいの中でね、でももっと前から、20年30年前から出ていて、それってもともと向こうから話があって出ていきましたと。売りたいと、売らせてもらいたいと。どちらかというと、ディストリビューター主導でやってきたという歴史的な背景があるんですよね。その背景の中で、つくるのは自分たち、売るのはディストリビューターでやってきていて。ディストリビューターがマーケティングの大部分の領域を好きなようにやってきた。好きなようにやってきたというと大げさですけども。そんな中で、今、さらにそれをもっと拡大していくためにメーカーが前のめりになっても、ディストリビューターが言うこと聞かないわけですよね。「いや、そんなことをやったって無理だ」と、「今さら、つくる人でずっとやってきたのに、なぜ売るところに介在してくるんだ。分かっていないんだ。俺たちに任せておけ」という話で、なかなか思い通りにディストリビューターが動かない、パートナーが動かないと、こういう、これは身内の敵ですよね。ディストリビューターってこっち側の人間なので、敵は中にいるってまさにこういうことで。ディストリビューターというのは、常に自分たちの都合で動く。もうこれは当然なんですよね、経済合理性考えたら。メーカーは自分たちの事業の5年先10年先、なんなら15年先を見据えて、今、ブランドをどうするのか、この商品をどうするのか、そういうことを考えていかないといけない。一方でディストリビューターはほかにもたくさんのブランドを抱えていて、自分たちの持っている経営資源の中で最も売りやすい場所に売りやすい商品を売るというのが彼らのビジネスの常なんですよね。そうすると、この彼らのビジネスのポイントとメーカーのやりたいことと彼らのやりたいことが非常に合っている時期は、これはうまくいくんですよね。でも、それが途中でずれていくという、当然ずれていくんですよ。特にディストリビューターに任せっきりにすると、当然大きくずれていく。それをずれなくさせるためにメーカーはいかに彼らに5年先、10年先、15年先の彼らの繁栄を見せて、一緒に成長していくかということをやっていかないといけない。それをやれているのが先進グローバル企業なわけですよね。その一緒に将来の夢を見れなかったディストリビューターが全部切られていっているわけなので。なので、本当に残っている先進グローバル企業のディストリビューターというのは非常にロイヤリティが高いし、彼らとのビジネスを非常に大切にする。それと真逆の方向をやってきてしまっていて。だから、ディストリビューターがまず敵であるということは1つですよね。
あともう1つが、自分たちの現地法人のナショナルスタッフ、これはなかなかちょっと誤解なきようお願いしたいんですが、自分たちの現地法人のローカル社員が悪いと言っているのではなくて、情報がすべてナショナルスタッフからしか入ってきていない、日本人の耳に。自分たちも現場へ行きましたと、行っているんですと。なんだけど、それって過去、じゃあ、何回行きましたかと、行っても何十回レベルですよね。何十回でも多いと思いますよ、駐在の日本人が現場に、伝統小売の現場に行くのって。でも、それって、1人で行くのって帰り道、自分の近所の伝統小売ぐらいですよねと。やっぱり誰かに連れていかれる。ディストリビューターに連れていかれる。ナショナルスタッフに連れていかれる。そうすると、やっぱりディストリビューターやナショナルスタッフが見せたい現場しか見せられていないので、本当に見なきゃいけない現場というのは見れていない。すべての情報を、重要な情報を全部ナショナルスタッフ経由で入れられているので、基本的にこのナショナルスタッフから上がってくる情報にバイアスがかかっているんですよ、100%かかっていて。これは悪気があってとかじゃなくて。そうすると、やっぱりここで解釈が事実と異なる。例えば伝統小売入っているんですと、入っているんですよと、入っているんです、でも売れないんです。だから、プロモーション、ATL、バンバン投資しないと駄目なんです。こういう説があったと、仮説があったと。でも、実際にわれわれがこれ入って見てみると、1,000店舗に入っていると言ったけど、実際にまともなSKU、決められたSKUが決められた場所にしっかり置かれているのって2割じゃないですかと、8割の店舗では3SKU入るはずが1SKUしか入っていない。ここに置くはずが変なところに置いてある、欠品している、入っていない、そんなのたくさんありましたよと。あと、オーナーに会えてないじゃないですかと。行っている、行っている、入っている、入っている、営業マンは行っているんだ。敵は30軒行っている、1日に。私たちの営業は15軒しか行ってないとか。あと、行っていたとしてもオーナーに会えてなかったら全く意味ないじゃないですかと。決めるのはオーナーですみたいな、これもやっぱり入っているんです、行っているんですという、ナショナルスタッフからの情報を日本人の駐在員がそのまま鵜呑みにしているけども、実際調べてみるとそういう差があるとか。これも中に敵がいるわけですよね。だからといって、じゃあ、駐在員が現場に入り浸るかというと、それもまた違って、駐在員のやるべき仕事はそんなことじゃないので。なので、だからこそわれわれのような外部機関を使って徹底的に丸裸にして事実を可視化して、ファクトベースで考えていくということをやらないといけない。別にポジショントークで言っているんじゃなくてね。
こういうやっぱり内面の敵っていうのが非常に多くて、何も分かっていない人なんていないんですよ。だって、事業をやっているんだし、何十年も前から。ただ、われわれが本社から相談を受けるときってね、うちの現法はこう言っているんだけども、なかなか腹落ちできない。なので、それをチェックをしたいとか、ディストリビューターはこう言っているんだけども、なかなか腹落ちできない。本社と現法がディストリビューターはこう言っているんだけども、腹落ちできないから相談したいと、こういうケース。もう、だいたい敵は中にいる。ディストリビューター、ナショナルスタッフ。
あともう1つあるのが、日本人の長期駐在者というか、長期経験者というんですかね。ちょっとこれは誤解なきよう、私は駐在員の味方ですから、誤解なきようお願いしたいんですが…。やっぱり長くいればいるほど発言力がすごく強くなるんですよね。タイに20年いますと、通算20年ですと、社内に何人いますか、そんな人。それは商社やタイヤメーカーや何かだったら、それはゴロゴロいるかもしれないですけど、普通の一般の製造業で、タイに20年いますと、フィリピンに20年いますと、そんな人ほぼいないですよ。でも、タイに20年いるような人は、おそらく本社でもある一定の役員と呼ばれるようなポジションになる、過去いましたとかね、なってたりする。そういう人の発言って、やっぱり非常に影響力が社内でもあると。でも、あなた、20年いたの、それ20年前ですよねと、今、20年でタイこんなに変わっていますよと、インドネシアこんなに変わっていますよと、最後に出張行ったのいつですかと、2年前行きましたねと、行ったんだけど、結局アルファードの後ろに乗って、きれいなとこだけ見ただけじゃないですかみたいなね。市場変わってるんですみたいな。なんだけども、「いや、タイはこうだろう」って言ってしまったら、もうそっちに引っ張られてしまう。これは別に20年じゃなくても、5年ぐらいいてもね、最前線の5年いた人が「いや、これもやったんです。あれもやったんです。それもやったんです。でも、駄目だったんです」って声を大にして言ってしまうとね、やっぱり今現状5年駐在していない人、タイじゃなくても、別にフィリピンでもインドネシアでもベトナムでもいいんですけど、もう何も言えなくなってしまうんですよね。でもね、「あれもやったんです。これもやったんです。それもやったんです」って言う人多いんですけど、でも、だいたい今まで私が経験したのは、答えはそこにあるんですよね。過去にやったことの中にブレークスルーがあるというケースが本当に多くて。そんなウルトラ必殺技、今まで誰も想像したことがないようなやり方がウルトラCで突然バーンって現れる、ボーンみたいな話っていうのは、もう万に1つですよ。そんなことはまずあり得ない。特に日本の製造業の場合は、経営資源使えないわけですから、経営資源がバンバン使えたら、それはやりようがありますけども、限られた経営資源で最大効率化しようと思う。そうするとね、絶対過去に、みんな頭いいですから、日本人優秀ですから、やっているんですよ。やっているんだけども、どの時代に、誰が、どうやったかによって、得られる成果ってまったく違う。「いや、訪問したんです。セールスマン雇ってやったんです。でも、駄目だったんです」、それって、いや、訪問の数が足りないよと、そんな数訪問したってブレークスルーしないとか、いや、訪問のやり方が駄目。さっき言ったように、オーナーに会ってないんだったら、訪問したって意味がないとか、そういったところにブレークスルーがあるので。50~60、もしくは60~70までは行っているんだけども、最後の30行けなかったからブレークスルーしなかった。なんだけども、それを本当に自分はやった。だから無理なんです。意味ないんです。そんなことやったってみたいなね、こういうのもやっぱり内なる敵。われわれコンサルの立場だと、いろいろあるんですけど、依頼される本社、偉い人から依頼されて行くわけですけども、やっぱり素直に受け入れてくださる現場と、最初ものすごく抵抗にあう現場と、やっぱり2タイプあるので。でも、われわれの中でも鈍感力の強い人間がそこをまず突破していってということになるんですけど。
でもね、意識を皆さんも改めて客観的に、少しちょっと上空から自分たちの今の現状を見ると、必ず敵は中にいる。ディストリビューターか、現法のナショナルスタッフか、ある程度中長期に滞在している身内、ここにある。だから、逆に言うと、答えがそこだっていうことなんですよね。ディストリビューターだったら、やっぱり抵抗しているディストリビューターを完全にこっちに向かせるのは時間もかかるし労力もかかるので、ここはここである程度押さえながら、別のもう1つの柱をつくっていくしかない。これはつくり上がるまでちょっとギスギスするけど、絶対けつまくらないので、これをやっていくしかないし。ナショナルスタッフの言っていることを100%信用しない。外部でしっかりともう1回見るということは重要だし。あと、日本人の担当で「あれもやった。これもやった。それもやった。でも、駄目だったんです」ということを言っているんだったら、もうまさにそれが答えで、あれも、これも、それも、もう1回やれば、しかも別のやり方で正しくやれば、それはブレークスルーできるので、答えはそこにあるというふうに思います。
今日はたぶんすごく長くなってしまったと思うんですが、これぐらいにしたいと思います。こんな話を前回Podcastのほうで大石先生とかとやっていましたので、またそちらも併せて聞いてもらえたらなというふうに思います。皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。


