第103回 「品質」や「機能」が必ずしも評価されない時代
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テキスト版
皆さん、こんにちは。スパイダーの森辺です。今日は、「品質」や「機能」が必ずしも評価されない、ということについてお話をします。アジア新興国市場では、日本企業が得意としてきた品質や機能の高さというのは、必ずしも消費者やユーザーに評価されません。このことをしっかり理解をしておかないと、すべての戦略が品質ありき、機能ありき、品質や機能の高さが土台になった戦略でアジア新興国に出てしまい、失敗をしてする、ということにつながってしまいます。今日は、品質や機能は必ずしも評価されない、ということについて、一緒に学んでいきましょう。この図は、日本と韓国、中国、欧米の企業を4つのグループに分けて、それぞれの特徴をまとめたものです。いずれの業界、業態、カテゴリー、産業においても、おおよそこれから説明するこの4つのパターンに当てはまっている、というのが今の現状ではないでしょうか。まず、日本の企業は、10の機能と品質をいっぱいいっぱい詰め込んで100ドルで売る、という商売をアジア新興国でやってきたと。そうすると、当然市場から、「高い」と、「高すぎる」と。「品質いいのは分かるけどね」と、そういう声が返ってくると。日本企業はどうするかと言うと、値段は下げたくないので、「よし分かった」と、「それでは品質や機能を11、12にするので100ドルで買ってくれ」と、こういう商売をずっとやってきたと。
一方で、中国や韓国企業は、もともとは安かろう悪かろうだったんだけれども、今は技術のレベルが相当上がり、5や7の機能と品質を詰め込んで、50ドルで売る、70ドルで売る、ということをやってきていると。一方で、欧米の企業はどうかと言うと、彼らも7ぐらいの機能と品質しか詰め込めない。しかし、彼らの商品は150ドルで売れる。なぜならば、彼らには圧倒的なブランド力があると。このブランド力はどうやって形成されるか、マーケティングへの投資なんですよね。欧米はマーケティングに投資をしてきた。従って、7の機能と品質しか詰め込んでいないものが150ドルで売れる、ということを実現すると。これを見て分かる通り、結局、中国や韓国は、特に白物黒物の家電を例に例えて想像してもらうと分かりやすいんですけど、中国や韓国は、最低限の機能と品質を詰め込んで、50ドルで、70ドルで売るということで、アジア新興国中の中間層を獲ってきた。アジア新興国だけに収まらず、欧米含めた世界中で、サムソン、LG、今、世界の大物白物家電、10年連続世界1位で、世界の10%の市場を持っているのは中国のハイアールだったりするわけですよね。中国のメディア、美的という会社も非常に大きいと。こういう会社が中間層を獲っていて、富裕層は結局欧米を選ぶ。日本製は、今までは日本企業しかつくれなかった。1980年代、90年代、中国の家電メーカー、そんなものはほとんど存在しなかった。サムソンやLGが日本のヨドバシカメラやビッグカメラ、ヤマダ電機に並ぶ、なんていうのは誰も想像しなかったわけで。サムソンが今ほどの知名度を持ったのは、スマートフォン以降であって、過去はそんなことなかったわけですよね。
そうすると、日本の家電メーカー5社とか6社で世界の市場を牛耳っていたと。その時代から大きく変わったにもかかわらず、いまだに日本企業は、「品質がよければ売れるはずだ」と。「機能が高ければ売れるはずだ」、ということをさんざんやってきて、今の悲惨な日本の家電の状況があると。もし、品質がよければ、機能が高ければ、世界のニーズに応えられているんだという、世界が欲しがるんだと、評価するんだということが事実であれば、三洋という会社はなぜなくなってしまったのかと、シャープという会社がなぜ今、復活してきていますけど、台湾の企業の傘下に入ったのか、日本の家電業界はなぜこんなに苦しんだんだ、ということをどう証明するのかと。
また、もう1つの例としては、例えば、掃除機。掃除機なんていうのは、日本の家電メーカーのお家芸であると。そうすると、日本の家電メーカーの掃除機、29,800円の掃除機を仮に売っていると。それが、中国や韓国は19.800円だと。もしくは、9,800円の掃除機を売ってくると。なので、安いものが出てきて、なかなか日系企業、品質はいいんだけど苦労している、というのが日本の掃除機メーカーの言い訳だったと。じゃあ、そんな世の中、時代において、ダイソンみたいな会社をどう説明するんだと。彼らは、1993年にイギリスで生まれた、ジェームス・ダイソンという方が創業したメーカー。1993年と言ったら後発ですよ。日本の家電メーカーは、全部1993年以前にできている会社なので。そんな新しい会社が、9万円の掃除機や5万円の扇風機を世界中で売りまくり、最近では、4万円のヘアドライヤーも売りまくると。結局、なんで9万円の掃除機があれだけ売れるのかって、彼ら、去年の業績5,000億円の売上を上げて、1,200億円以上の利益をたたき出すという会社ですよね。日本のメーカーがこれだけ苦しんでいるさなか、それだけの業績を出せるダイソンというメーカーは、マーケティングにさんざん投資してきた、ブランド投資をしてきた、だから、あれだけ世界で高い掃除機を売ることができ、利益を残すことができると。
そうすると、安い中国製や韓国製が出てきたから、僕たちの商品売れないんです、という日本企業のその理屈は全くもって通らないと。もっと言うと、彼らの怠慢かもしれないと。結局、日本企業は、品質がよければ世界で売れるはずという、80年代90年代の常識をいまだに引きずって、1億2,700万人の日本の消費者が欲したものを、そのまま正義だと思い込んでアジア新興国に持っていったから失敗をしてしまったと。この家電業界の失敗というのは、決して皆さんの業界においても対岸の火事ではなくて、いかに彼らから自分たちが学ぶか、ということはすごく重要で、いずれの業界においても、世界は必ずしも品質と機能だけを評価しないと。品質がよければすべてよしとはならない、ということを戦略をつくる上でしっかりと理解をしなければなりません。
それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。