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第138回 「輸出」か「現産現販」か

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、製造業の一般的な海外展開におけるステップについてお話をします。このステップを理解することで、各ステップごとに製造業がどのようなアクションを取らなければならないのか、どのようなプロセスを踏んでいけばいいのかということが整理できます。今日は、製造業の一般的な海外展開のステップについて一緒に学んでいきましょう。

この図の通りなんですが、製造業の海外展開って、これはB2CもB2Bも大きく分けて2つのステップが存在します。1つは輸出のステージ。だいたい、日本の製造業の海外展開というのは、この輸出から始まるわけですよね。いきなり売れる見込みがあるのか分からないし、売れる実績、売っている実績がない国にボーンと行って工場を建てて生産して売る、なんていうことはなかなかリスクが大きいのでやらない。まずは、日本の製造業は日本から製品や商品を輸出していくということから始まるわけですよね。その輸出をする、ここでは分かりやすくFMCG、食品や飲料、菓子、日用品等の消費財メーカーを例にとってお話をしますが、最初は輸出をすることから始まる。例えば、菓子でお話をすると、輸出をしますと。その輸出をしていくということがある程度大きくなってくると、例えば、このタイでは輸出で非常にたくさん売れた。これ、タイに工場をつくってタイで売るということは可能なんじゃないかということで、今度、現法ステージというのが出てくるんですが、まさに現産現販をやっていくステージですよね。現産現販ビジネスというふうに私は呼んでいますが、輸出のステージと現法ステージ。輸出のステージは、まず輸出ビジネスをやる。この輸出ビジネスというのは、自分たちの商品を海外に単純に輸出をしていくということで。一方で、現法ステージのこの現産現販ビジネスというのは、現地でつくって現地で販売をすると、こういうビジネスをやるわけですよね。多くの日本の製造業の意識レベルというのは、まず輸出を始める。いまだに輸出をしている国と、ごめんなさい、いまだにという言い方はおかしいですけど、輸出をしている国と現産現販をしている国が大手なんかは混在していて、物量が少ない国は輸出のビジネスをしていて、物量が多い国は現産現販していると、こういうポートフォリオになっている。日本の消費財メーカーは、この仕組みを大きく変えていかないといけない。このステップ自体は、この輸出ステージから現法ステージに上がるというのは、これは自然なステージなので、これは全然問題はないんですよね。問題は、この輸出ビジネスと現産現販ビジネスをどうやってチャネルビジネスに変えられるのかということが非常に重要で。

例えば、輸出ステージで輸出ビジネスをしている会社さん、これは輸出ビジネスって一体何かと言うと、自分たちの会社で海外のインポーターに輸出をする、もしくは、日本の問屋さんに商品を国内で渡して輸出してもらうというのが、これ輸出ビジネスですよね。これって、グローバルビジネスでも何でもなくて、ただ、特に日本の問屋を使っているケースなんて、日本の問屋に日本で渡して、あとはよろしく、どうぞと。その自分たちの商品が、どこの国のどこの都市のどこの小売にどういうふうに置かれて、どういう消費者がそれを見て買って、リピートしているのか、していないのかみたいな、消費財メーカーにとって最も重要なところを完全に無視した売り切り商売、これが輸出ビジネスなわけですよね。こんなことをしていたら、海外の市場の売上なんていうのは、途中で止まってしまいますし、大きく成長はしていかない。だから、日本の、例えば、自分たちで輸出している場合でもそうですよね。FOBジャパンで商品を引き渡してしまって、あと、それがどうなっているかというのはほぼ分からない。聞けば教えてくれるので分かるけども、海外のインポーターとか日本の問屋に聞けば分かると。日本の問屋も自分たちの商品が海外に輸出されたところまでは分かっているけど、その先どうなっているかというのは一切不理解な状態でやるビジネスというのが、この輸出ビジネス。一方で、私どもが提唱している、この輸出型のチャネルビジネスというものはどういうものかと言うと、ビジネスモデルとしては輸出でいいんです。日本の港から輸出をしていく。ただ、自分たちの商品がどのようなインポーター兼ディストリビューターに引き渡されて、それがどの小売のどの店舗に配荷されて、どういう消費者がそれを買って、リピートしているのか、していないのかということまでをしっかりと見るビジネスをしましょう。これが輸出型のチャネルビジネス。チャネルにもっと介在をしていきましょう。仮に輸出だったとしても、チャネルに介在をしていく。これこそが将来的に現法ステージにより早期に行ける、非常に重要なことなわけですよね。この輸出のビジネスも輸出型のチャネルビジネスをすることによって、商品の単価にもよりますけど、例えば、菓子だったら、1カ国ASEANで10億20億ぐらいまではいけるんですよね。輸出ビジネスだと、ほとんどたぶん数億円で止まると思います。しかし、輸出型のチャネルビジネスにすれば、20億ぐらいまではいけます。20億ぐらいまでくると、その国だけで、その国で工場をつくってその国の内需と近隣諸国に輸出するための工場設備投資をしようという経営判断に上げられる。その経営判断のステージに上げられる。そしたら、今度新たな現法のステージになってくるので、より数十億の戦いじゃなくて、100億200億の戦いができるようになってくるわけですよね。そういうステージに行かないと、最終的には欧米の先進的なグローバル消費財メーカーが現地に工場をつくって、現産現販したら、一気に市場は淘汰されてしまうので、早く現産現販をしないといけない。特に消費財メーカー、特に菓子メーカーなんていうのは現産現販ありきなので、地産地消しなければ絶対にグローバル市場って勝てないというのは、もうこれ、分かりきっていることなので、いかにこの現法ステージにいくか。そこまでのスピードを速めるか。ただ、日本の本社の経営トップが現産現販するという判断というのは、やっぱり輸出である程度売れなかったら、そんな怖い判断できないわけですよね。工場設備でラインを引いて、菓子メーカーのライン、少なくとも数億円~10億円ぐらい1ラインしますから、それだけの設備投資をするということは、それなりに実績をつくならいといけない。だから、輸出ビジネスじゃなくて、さっさと輸出型のチャネルビジネスをやって10億20億の実績をつくって、さっさと現産現販型に進んでいきましょうというのが、われわれが提唱していること。

さらに、現法ステージでも現地に法人があって、現産現販しているにもかかわらずチャネルの解財力が弱いというのが日本の現地法人で。自分たちの現地法人が、現地で使っているディストリビューターが、いかに競合のディストリビューターと比べて戦闘能力がどうなのかということを数字で全く理解していないケースが非常に多い。自分たちのディストリビューターには何が足りていて何が足りていないのか、自分たちのディストリビューターと競合のディストリビューターには日々のルーティンのプロセスの中でどういう差異があって、それがどう、シェアの差に表れてしまっているのか、そういったことを全く数字で理解をしないというのが、この単なる現産現販型のビジネスで。これをいかに現産現販型のチャネルビジネスに変えていくか。日本企業はいい製品を、いい商品を持っているんだから、いかにこのチャネルに介在をして、チャネルを通じて把握していくかということが非常に重要で、チャネルビジネスに転換をしないといけない。そうすることによって、現産現販のパフォーマンスを最大限高めることができるというのが、私どもが提唱している概念です。

今日もお時間が来ましたので、これぐらいにします。また次回お会いいたしましょう。