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第140回 アジア新興国市場 「輸出ビジネス」から「チャネルビジネス」への転換

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、輸出ビジネスからチャネルビジネスへの転換ということでお話をしたいと思います。

この番組でも、前回、前々回、前々々回ぐらいから、ずっとこの輸出型ビジネスや現産現販型ビジネス、この2つの大きなステージの中に4つのステップがあって、製造業のグローバル展開というのは最初は輸出から始まり、最終的には現産現販になるべきだという、そんなお話をしました。ただ、この輸出のステージにおいても、現産現販のステージにおいても、日本の製造業は、今までのビジネスのやり方からチャネルビジネスに変えなきゃいけないんだと、そんなお話をしました。

今日は、この輸出のステージを特にお話をしたいんですが、この輸出のステージの中も単なる今までやってきた輸出のビジネスではなくて、輸出型のチャネルビジネスになぜ変わらないといけないのか、変わることによってどういうメリットがあるのかというお話をしたいと思います。
今までの話をちょっと整理を、前回、前々回の話を整理をすると、日本の製造業のグローバル展開には大きく分けて2つのステージがあります。最初、どのような製造業も輸出から始まるわけですよね。日本でつくったものを海外に輸出をしていくということで始まっていく。これだと、当然、現地の消費者、B2Bであればユーザーを企業が直接見ることができませんので、駐在員事務所を出してみたり、支店を出してみたり、販売法人を出してみたり、どんどん、どんどん、現地との関わり度合いが濃くなってきて、最終的には現地の工場をつくって、現地でつくって現地で売るというステージに変わっていく、これがまさに、現産現販ステージ、現地生産現地販売、略して、現産現販のステージに移行していくわけなんですけども。この図にも書いてある通り、いわゆるグローバルビジネスって市場環境と競争環境が劇的に変わったという話をこの番組でもしましたが、市場環境というのは、今まで、日・欧・米で経済支配をしていたこのグローバル市場が、プラス新興国が加わってきましたよと。今、日本企業のターゲットになる市場というのは、日・欧・米の先進的な市場と、一方で、アジア新興国のような、これからさらに発展をしていく後進市場、新興国の市場ですね、こういったものが加わってきたというのが、この市場環境の変化で。

もう1つの競争環境の変化というのは、今まで日本しかつくれなかったものを、中国や台湾や韓国の企業でもつくれるようになっちゃった。もともとは欧米の企業がつくっていたものに日本企業が、よりよく、より小さく、より安くつくることに彼らからつくることで、彼らから産業を奪っていったわけですよね。その産業が今は、中国や台湾、韓国の企業に奪われていて。一時期の、80年代90年代、Japan an No.1と言われていた、日本企業しかつくれなかった時代はとうの昔に過ぎてしまった。競争環境が劇的に変わったんだと。アメリカからその地位を奪った後は日本企業だけが競合だったのに、今では、中国や台湾や韓国の企業も競合になっていると、こういうのが競争環境ですよね。この競争環境が変わったから、市場環境が変わったから、われわれは輸出のビジネスからチャネルのビジネスに変わらないといけないんだ。単なる現産現販のビジネスじゃなくて、現産現販型でもチャネルのビジネスをしなきゃいけないんだ。チャネルのビジネスって何かとこの番組でもお話をしましたが、いわゆる輸出と輸出型のチャネルビジネスの違いをもう1回整理をすると、輸出型のビジネスというのは単に港から港の商売をしているだけですよね。B2Cの、例えば消費財だと、日本の問屋とか自社の輸出事業部が海外のインポーターなどに輸出をして、基本そこで終わりです。その輸出をして、向こうから見ると輸入をすることになりますけど、輸出をして相手の国の港に着いた後、その商品がどういう中間流通を通じて、どういう小売に置かれて、どう置かれて何SKU置かれて、それでそれがどのようなレーンのコーナーに、どういうSKUで置かれて、どういう消費者が何を思ってそれを買って、リピートしているのか、していないのか。そういったことを一切見えないビジネスをしてきたわけですよね、輸出ビジネスというのは、ですから、製造業にとって最も重要な消費者との対話、消費財メーカーにとって最も重要な消費者との対話を無視したビジネスが輸出ビジネス。B2Bで言えば、日本から輸出をします。向こうで買いたいと言っているインポーターに輸出をして、以上だと。そうすると、自分たちが本当に重要な、現地のユーザー企業の本当のニーズや、それを使ってみて何を改善してほしいのか、ほしくないのか、どう感じて使っているのか、どういう用途に使っているのか、そういったことが一切見えないビジネス、これが輸出ビジネスなわけですよね。日本企業しかつくれなかった、要は売り手市場だった時代は、競争環境の変化も市場環境の変化もなかった売り手市場だった時代は、それでよかった。いいものさえつくって売っていれば市場がそれを買ったんです。日本企業しかつくれないんだから、当然市場はそんなに偉そうなことは言えない。それを、ただ買わせてもらうだけ。でも、もう、そんな市場じゃないわけですよね。もう、そんな世界はとうの昔に過ぎ去ってしまっている。だからこそ、チャネルビジネスをしろと。このチャネルビジネスって何かと言うと、B2Cの場合は、自分たちの商品がどういう中間流通を通じてどういう小売に、どういうふうに置かれて、どういう消費者がそれを買って、何を思ってリピートしているのか、していないのかということを全部把握をする。仮にこれが現産現販じゃなくても、輸出のビジネスであったとしても、ビジネスモデルとしては日本からの輸出だったとしても、それを把握するようなビジネスをしていかないと、これからは競争環境も市場環境もこれだけ大きく変わってしまったら、マーケットシェア獲れない。いつまで経っても輸出型のビジネスから脱却できずに現産現販に移行できない。現産現販に移行できないということは、そのうち輸出ビジネスは淘汰されてしまうので、競合が現産現販型を始めれば、輸出の伸び率というのは下がっていって、最終的には淘汰されるので、そういうチャネルビジネスをやっていかないといけない。これは、B2Bの企業もそうです。ユーザーのニーズがどこにあるのか。今までは日本企業の商品しか買えなかったけども、これからは彼らは別の選択肢があるわけですよね。中国製や韓国製、台湾製、そういったものを買うという選択肢があるわけなので、いかに日本からの輸出であったとしても、自分たちの商品がどういう中間流通を通じて、どういうエンドユーザーにそれが売られて、そのエンドユーザーは、エンドユーザー企業は、どういう用途にそれが使われているのか、過去にも日本から製品を輸出しているB2B企業で、自分たちの商品が一体どういう用途に使われているのかと言ったら、全く分からないと言う企業をたくさん見てきました。こういう輸出型のビジネスを日本企業はそろそろやめて、輸出型であってもチャネルビジネスをしなきゃいけない。なぜ日本企業はチャネルビジネスをしなくてよかったのかって、やっぱりものづくりがベースにあって、ものづくり、いいものさえつくっていれば、世界がそれを求めた。なぜなら日本企業しかつくれないから。けど、これからはそうじゃないので、ものづくりも当然重要なんだけども、チャネルというものをしっかりと可視化をして理解をして、そして、B2Cだったら消費者、B2Bであればユーザー企業との接点をより近く持たなければ、それが輸出であろうが、現産現販であろうが、なかなかマーケットシェアを上げていくことは難しい。そんな時代に来ていると思います。日本企業はものづくりからチャネルづくりへの投資を、今まさにやらなきゃいけない。そんな岐路に立たされていると思います。
それでは、皆さん、また次回お会いいたしましょう。