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第189回 ASEAN市場 近代小売と伝統小売の相関性

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。いつも当番組SPYDER CHANNELをご覧いただきまして、誠にありがとうございます。まだチャンネル登録がお済みでない方は、ぜひチャンネル登録をお願いします。また、この番組が少しでも皆さんのお役に立っているようであれば、ぜひいいね!ボタンを押していただければうれしいです。よろしくお願いします。

さて、今日は近代小売と伝統小売の相関性ということでお話をしたいと思います。アジア新興国市場、アジアに限らず新興国というのは、必ず伝統小売というものが存在するので、Traditional Tradeですね、伝統小売というものが存在するので、今日のこの近代小売Modern Tradeと伝統小売Traditional Tradeの相関性の話は、非常に新興国を攻めていくといううえでは消費財メーカーにとっては非常に重要なお話になると思います。

消費財、ここで言っている消費財というのは、食品・飲料・菓子・日用品等のFMCGならびにFMCGの周辺消費財のメーカーのことを言っています。この図の中央に図がありますけども、何からどう話そうかな…、相関性、MTとTTの相関性で2つぐらい重要なポイントがあって。まずあるのが、新興国になればなるほど、MTだけをやっていても絶対に儲からないというのがこの中央の図の説明なんですよね。どういうことかと言うと、MTの店舗数って、まだまだ新興国だと少ないんですよね。例えば、ASEAN6、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンのASEAN6の中で最もModern Tradeの少ない国ってベトナムなんですよね。ベトナムは近代小売の数が現在2,000店舗ぐらいしかない。2,000店舗しかないと、もう週販どれだけ売っても日販どれだけ売っても、基本的には現地法人を構えてしまったら、この図の青いラインですね、矢印が上に向いていますけど、絶対に赤字ゾーンから抜けられないですよね。日販10万個売るとかってそういう非現実的な話はなしとしたときに、やっぱり現地法人を置いてしまうと固定費がかかります。固定費がかかっている以上、2,000店舗であれば、どれだけセルアウトしていてもなかなか赤字ゾーンから黒字ゾーンにいくということはできなくて。一方で、ベトナムは50万店のTTが存在する。そうすると、やっぱりある程度、TTまで売らないと、この黒字ゾーンにはいかないというのがこの図の説明なんですよね。結局、1店舗あたり、MTで売れる、週販売れる個数って、だいたい決まっていますよね。それがいきなりグワーッて伸びるというのはないので。そうすると、だいたい決まっていると。そうすると、2,000店舗で週販、毎日1個売れたと。週に7個売れると7個で×2,000店舗で、2×7=14で1万4,000個。1万4,000個じゃ、さすがに100円のものを売っていても、0を2つ付け加えたって140万なわけなので、なかなか儲からないですよねと。そうすると、TTというものを50万店のTTをどれだけ増やしていけるかということがベトナムなんかだと重要だし。

じゃあ、ASEAN6の中で最も近代小売が多い国はどこかって、インドネシアなんですけど、インドネシアの場合、3万5,000店舗ぐらい近代小売があります。ただ、一方で300万店、伝統小売があるわけですよね。あれだけ巨大な人口を抱える国で、やっぱり3万5,000店舗だけじゃ不十分で、あそこも3万5,000店舗だと、現地法人の規模にもよりますけど、3万5,000店舗、100%配荷できれば赤字にはもしかしたらならないかもしれない。ただ、これも現実的じゃなくて。なぜならば、3万5,000店舗のうちの3万店はアルファマートとインドマレットというローカル系のコンビニなんですよね。そして、ハラルの国ですから、基本的にはハラル対応じゃない商品というのはアルファマートもインドマレットもあまり置かない傾向に今あります。そうなってくると、アルファマートとインドマレットに置くためにハラルに対応した商品であるかということと、もう1つ、3万5,000店舗のMTのうちの3万店も2社のコンビニが持っているということは、小売との交渉力がめちゃめちゃ小売優位になっている。そこに対して、日本の企業が本当に交渉できますかと。逆に、やりましたと。やりました。でも、相当なリスティングフィーを1SKUあたり×店舗数で取られると、3万5,000店舗だけやっていても、めちゃめちゃセルアウトしないと絶対利益が出ない。そうすると、やっぱり300万店のTTをやらないと、インドネシアでも利益が出ないと、そういう構造になっているわけですよね。なので、基本的には現地法人を構えてしまったら、MTだけでは利益は出ませんよと。TTまでやらないと利益が出ませんよ。なぜならば、MTの絶対数が少ないからという、こういう1つのポイントがある。こういう相関関係、MTとTT。

もう1つは、じゃあ、MTはもうマストでやらないと駄目…、ごめんなさい。じゃあ、TTをやるうえで、このMTの評価とTTの評価って書いていますけど、どういうことかと言うと、TTをやるときに、じゃあ、MTをやらずに最初からTTだけやろうってなって、じゃあ、TTのオーナーがそれで置いてくれるかと言うと、またそれも話が違って。TTのオーナーというのは、自分の狭い店舗に、限られた店舗に売れないものは絶対置きたくない。そうすると、どうやって売れているものを判断するかと言うと、MTで売れ筋のものだけを小分けにしてTTで置くというのがTTのオーナーの心理なわけですよね。そうすると、MTで売れていないものをTTのオーナーが積極的に担ぐなんていうことはあり得ない。そうすると、TTで売るためには、やっぱりMTをやらないといけないということ。だから、TTのオーナーはMTの売れ筋を評価するし、逆に、じゃあ、MTのリスティングフィーを毎年交渉して、徐々に店舗を展開していきますから、下げていったりするのって、TTで高いストアカバレッジを持っているメーカーは、やっぱりMTとの小売交渉力が強いわけですよね。そうすると、ほかは1SKUあたり5,000円払っているものが自分たちは3,000円になったり2,000円になったりする。強制プロモの参加費も安かったりする。エンドコーナーがしっかり獲れたりする。置く場所がしっかり確保できる。そんなことというのが全然あるので、やっぱりTTで評価されるということは非常に重要で。じゃあ、各国の、MTがP&Gとかユニリーバとかネスレとかコカ・コーラから高いリスティングフィーや強制的なプロモを取っているかと言うと、日本企業だけ。だけと言ったら語弊がありますけど、日本企業は特にカモネギにされている傾向があって。だって、コカ・コーラを置いていないスーパー、コンビニって恥ずかしいわけですよね、小売としては。置いていないこと自体がもうあり得ないし、P&Gとかユニリーバ、ネスレの商品を置いていない小売店なんて小売店じゃないわけですよね。置けないことのほうが小売にとって恥ずかしいので、お金を払って置かせてやるじゃなくて、ぜひ置かせてください、リスティングフィー要らないので、という傾向になるわけです。一方で、TTにも全然配荷が進んでいない日本のメーカーの商品なんて、どちらかと言うと、別に置いてあろうが、置いてなかろうがどっちでも構いません。ただ、置きたいんだったらリスティングフィーを払ってくださいと、そういう話になるので、やっぱりMTとの小売交渉力を高めるという意味でもTTは重要と。そうすると、MTだけやっていればいい、TTだけやっていればいいって、そういう議論ではなくて、MTとTTは同時並行的に進めていかないと、新興国のマーケットというのはうまみがないですよというのが、最大の特徴になります。

なので、ぜひこの近代小売と伝統小売、2つの相関関係、今、2つ紹介しましたけども、1つは現地法人を出してしまったら、MTの絶対的な数の少なさから黒字化をしていくということは難しいですよ、TTまでやらないと黒字化しませんよということが1つと、もう1つは、MTでの評価をTTが評価をするし、TTでの評価をMTが評価をするという、こういう相関関係になっているので、この2つのことを注意しながら、MTとTTを同時に進めるということが新興国では大変重要です。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。