東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の続きなんですけども、「売ってもらっている」という意識がたぶん強過ぎるんじゃないかという、日本企業側がですね、という話をしたんですけども、たぶん、ちょっとこれにつながってくる話だと思うんですけども、どこまで本音で言っていいのか分からないみたいなことを、クライアントさんからも質問とかでもよく受けるんですけれども。結構、遠慮して、思っていることはあるけども、ディストリビューターに強く言う必要はない、偉そうにするつもりはないんでしょうけど、強く言えないみたいなところは、結構、前回のテーマとちょっと結び付くところはあると思うんですけど、その辺って、本当に客観的に見られてどう思われますかという。
森辺:言い方の問題は別にして、基本的には全部ストレートに言わないと、「分かってくれてるだろう」というのは、もう絶対分かってくれていないので。これは日本人の間だけの話なので、だから落ち着くんだよね、日本人同士というのは。なので、世界中、どの人間と会っても、もう言わないと駄目。なので、「全部言うんです」と。なぜ言えなくなるかというのは、「売っていただいている」という、「売っていただいている」=「お任せしている」「言わなくても分かっている」みたいな、いや、「売っていただている」という気持ちは持っておいていいんだけど、それを表にあんまり出し過ぎると、向こうはそれをストレートに捉えちゃうよということなんだよね。
東:それをそのまま、もう。日本だと、それをいいふうに解釈して「信頼してもらっているんだ」と思って頑張るぞみたいな話につながるじゃないですか。
森辺:うんうん。
東:それが海外だと。
森辺:「売っていただいている」=「そうだよ。おれたち、売ってやっているんだ」と。(笑)
東:(笑)
森辺:極端な話ね、極端に言うとね。
東:はいはい。
森辺:「あいつら日本企業分かってないから、おれたちが売ってやってんだ」と。「おれたちは全部分かってんだ」と。「プロモーション費用だけ出せ」と。「お金だけ出せ」と。
東:「口は出すな」みたいな話に。
森辺:もしくは「もっと安く入れろ」と、「入れさせろ」という話になっちゃうので、そうじゃないよということなんだよね。「分かってくれないですよ、そんな表現」ということなので。
東:結構、じゃあ、そこは日本人同士だから分かるものの前提で、それが一歩日本から出てしまうと、なかなかもう、通じないと思ったほうがいいという。
森辺:うん。なんで言わないかと言うと、日本の言葉の表現で「角が立つ」という話だと思う。これは、言わなきゃいけないんだけど、敢えて言うと角が立つと。言わなくても、まあ、分かってくれてるだろう。もしくは、別の表現を使って、角が立たないようにするという、角は立てたらいいんですよね。別に問題なくて、日本人は角が立つのが嫌なんだけども、外人はそんなこと気にしないので、むしろ言わないことのほうが問題なので。外人って、十把ひとからげにするつもりはないんだけども、「角を立てましょう」ということなんです。「角を立てる」ってWikipediaで広辞苑でどういう定義なんだろう。僕の言ってる「角が立つ」というのは。
東:(笑)
森辺:要は、何だろうな…。「これ言うと、ちょっと、なんか角が立つな」と。「悪く思われるんじゃないかな」みたいな。
東:「言わないほうがいいかな」と思う…。
森辺:「言わないほうがいいかな。けど、言わなくても何となく分かってくれるよな」と。例えば、遅刻しましたと。「これ言うとな、角立つな」と。「言わなくても、きっと次は遅刻しないだろう」みたいな。
東:はいはい。
森辺:「いやいや、それ言わないとずっと遅刻しますよ」という話だから、「9時って言ったよね」と。「プロモーション、店頭プロモーション始めるの9時って言ったよね」と。「9時5分じゃないよ。9時って言ったよね。だから9時に始めてくれ」というのはちゃんと言わないと駄目よという、例えばね。
東:分かりやすく言うとですよね。
森辺:うんうん。
東:なるほど。
森辺:そこはやっぱり1つあるんじゃないかな。
東:じゃあ、そういう、ちょっと、少し遠慮に近い気持ちがあったり、「売ってもらっている」という気持ちがあるがゆえに、なかなか突っ込んだ議論がしにくいというお話なんですね?
森辺:しにくい。うん。なおかつ、3年4年で駐在クールが代わっていくわけじゃない?
東:はい。
森辺:そうすると、最初はどうしても、駐在してすぐに遠慮から始まるわけじゃん。それが時間が経ってようやく慣れたと思ったら、また新人、新人というか駐在交代して、また初めと言って。だからもう常時、日本企業は過去、分からないけど、10年とか20年とかずっと駐在員が何人も何人も代わっている間、建て前でずっと来ているから、角が立つことを極端に…。
東:避けてる。
森辺:避けてるという。でも、別にそんなの角なんて立たないですよ、アジア新興国の人に。
東:ディストリビューター側はどうなんですか? 言ってほしいのか、言ってもらったほうが分かりやすいのかって言ったら?
森辺:いや、向こうにしてみたら、日本企業にごちゃごちゃ言われるよりも、自分たちの好きにやれたほうがよっぽど絶対いいわけだから。
東:そうですね。
森辺:日本企業が遠慮してくれればしてくれるほど、現地の市場のことが分からなければ分からないほど、自分たちの思う通りにできるわけだから一番いいよね。だって、いろんな企業を解剖すると、もうディストリビューターの利益率が最もピークに達するところでシェアが止まっちゃってるところってあるわけじゃない?
東:うんうん。
森辺:これ以上シェア伸ばそうと思うと、一時的にディストリビューターの利益率を下げることになる。ぜならば、ディストリビューターが営業マン投資をしないといけないとか。営業の車の投資をしないといけない。トラックの配荷の投資をしないといけない。だから、将来的にはシェアが上がるかもしれないけども、利益率が悪くなるから、足元が、もうこのシェアで留めておくとか。よくあるのが、ほら、MTとTTやって、TTやり過ぎると、当然ある一定のストアカバレッジ行くまで利益率悪くなるから、もうMTだったらセントラルにボーンとぶち込んで配荷できるから、もうそこで留めるみたいな、そういうディストリビューターだって国によってはいるわけだから。そう思っているんじゃないかな。もちろんディストリビューターにもよるけど。
東:まあまあ、いろいろ良し悪しというか、ディストリビューターにも、いいディストリビューターとそうじゃないみたいなところもあるし、商品によっても違うでしょうし、さまざまなディストリビューターがいる中で、ただ、ある程度、それはストレートに言わないと伝わらないという。
森辺:そう。だから、日本で付き合っているディストリビューターさん、日本だったら代理店さんとか特約店さんという呼び方をしていると思うけど、その人たちと付き合っているような感覚はもう全く捨てたほうがいいよね。
東:うーん。
森辺:だって、B2BでもB2Cでも代理店さんのところに行けば、腰低く、玄関でだいたい、靴脱ぐとこもまだあるでしょう。靴脱いで、下駄箱のもう一番下の隅のほうに自分の靴置いて、スリッパを履いて、もう足をするように歩いて、米つきバッタのように頭下げながら来客室に行ったりとか、営業フロアを回って「どうですか?こうですか?ああですか?」ってやるわけじゃない?
東:うん。
森辺:そういう感じはもう、ちょっと違うよね。なので、だいぶあれなんじゃないかな。はっきり言わないといけないんじゃないかな。
東:うーん。そうすることで、会議室の中での関係性というか、言い合わなきゃいけないけども、それは外に出たらあんまり何とも思わないんですかね、ディストリビューター。
森辺:もう、何とも思わないよね。だから、日本独特の「売っていただいてるんで、もうありがとうございます。ありがとうございます。代理店様様です」という態度をとるなという話で。一方で、それをとるなと言うと、今度、「売らせてやっているんだ」みたいな横柄な態度になっちゃうので。
東:極端にやる。
森辺:それもとるなと。フラットでいいということだと思うんだよね。僕たちはパートナーで、つくるで売るということを、自分たちはつくって、売るということを一緒に考えようという話だから、売ることはディストリビューターが実際は物理的にはやるんだけども、それは全部ディストリビューターの責任ではないし、メーカーとしては一緒になってそれをどうやって売っていくかということをやっていくわけだから、そこはストレートにやっぱり表現をして議論をしていくということはすごく重要ですよね。
東:分かりました。じゃあ、森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。