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第264回 マーケティングミックス(MM)は4つの項目で完成

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、マーケティングミックス、別名4P、MMですね、「マーケティングミックスは4つの項目で完成する」ということについて、お話をしていきます。

アジア新興国市場に展開をしていく際に、このマーケティングミックス、4Pを間違えて失敗している企業というのは非常に多くて。今日は、正しい4Pと間違った4Pを整理立てて説明をしていきたいと思います。今日のお話で皆さんが学べることは、どうやったらアジア新興国市場で正しい4Pを実施することができるのかということになると思いますので、それについて一緒に学んでいきましょう。

スライドをお願いします。まず、これがマーケティングの基本プロセスです。前回、前々回ぐらいからですかね、このマーケティングの基本プロセスの「R」「STP」「MM」、リサーチ、それから、「STP」はセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、そして、今日、最後の「MM」、マーケティングミックス、別名4Pと言われるものですが。4P自体は皆さんもうすでにご存じだと思いますけども、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションの4つのPの頭文字を取って4Pというふうに言っているわけですが、フィリップ・コトラーは、自分たちのターゲットに対してこの4Pをいかに当てていくかということがマーケティング上非常に重要だというふうに言っているわけで。この4Pが最適化されていないとモノは売れないというふうに言っているわけですよね。この4Pが、やっぱり見ていると、アジア新興国市場で多くの日本企業が間違った4Pをしてしまっている。

本来、この4Pというのは、次のスライドをお願いします。例えば、FMCG、食品、飲料、菓子、日用品等のFMCGの業界であれば、アジア新興国、この業界はもうターゲットって中間層以外にないんですよね。食品や飲料、菓子、日用品って、これはマスビジネスですから、このビジネスのポイントは、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、永遠に買い続けてもらうかということがもうビジネスの最大の肝になるわけですよね。これが高級化粧品とか高級食材ということであれば、中間層ではなくて富裕層というのはもちろんあるんですが、ターゲットはあくまで中間層である。そして、特に日本で中間層をターゲットにして商売をしているのに、アジアに、新興国に行った途端、所得が低いからと言って、アジアの人たちの所得が低いからと言って、ターゲットは富裕層だと、これはもう間違った戦略で。日本で中間層をターゲットにしている企業というのは、中間層をターゲットにするノウハウで日本で食っていますから、これはアジア新興国に行っても絶対的に中間層をやっぱりターゲットにしなきゃいけなくて、富裕層じゃ牌が少な過ぎて絶対に儲からないので、出る意味がないんですよね、特にFMCGの業界では。そうすると、あくまでターゲットは中間層です。

そうすると、4Pのもうターゲットって決まっているので、この図の通り、プロダクトは中間層が求める商品でないといけない。日本人がいいと思う商品ではなくて、現地の中間層が求める商品を、現地の中間層が賄える価格で。この賄えるというのが非常にポイントで、買える価格じゃ駄目なんですよね。賄えなきゃ駄目だ。賄えると買えるというのはどう違うかと言うと、買うというのは1回でも買ったら買うなので、賄うというのは自分たちの生活に取り込むということですから。食品や消費財なんていうのは高々数百円、数十円の話なので、買うということは誰にでもできるんですよね。1度買う、2度買う、これは誰にでもできる。重要なのは、いかに賄えるかということなので、賄える価格で。そして、中間層が買いやすい売り場に並べるということ。この買いやすい売り場、アジア新興国の最大の特徴は、近代小売だけじゃなくて、伝統小売の存在がありますよ。いかに伝統小売、彼らの買いやすい売り場に並べるか。自分たちが置きやすい売り場じゃなくて、彼らが買いやすい売り場に並べるということは非常に重要で、中間層が買いやすい売り場に並べて。そして、ここがまた非常に重要なんですけど、中間層が選びたくなるような仕掛けをするということが非常に重要なわけですよね。この4つが最適化されて初めて商品はセルアウト、セルスルーしていく。これが最適化と言われるものなんですが。

では、日本企業はどういうふうに間違った4Pをやっているかと言うと、基本的には、次のスライドをお願いします。日本で実績のある商品をできればさほど変えずに、基本的にはやっぱり日本で良いと評価された商品、日本で売っている商品をさほど変えずにですよね、ぶっちゃけあまり変えたくない。原材料をいじるとややこしい。何か問題があったら誰が責任取るんだ。できればそのままの状態。そして、プライスに関しては、少しは安くしますよ、アジア新興国なので。ただ、できれば日本と同じぐらいの価格で売りたい。私は決してこれ安く売れというふうに言っているんではなくて、1円でも高く売ることはビジネスにとって大変重要である。しかし、先ほど申し上げたように、賄えないといけないので、やっぱり少しは安くするけど、日本と同じぐらいの価格で売るというのはなかなか通用しない。そして、プレイス。まさにチャネルですね。チャネルに関しても、日本で慣れ親しんだ近代小売を中心に、伝統小売にほとんどの消費財メーカーは手が付けられていない。もちろんユニ・チャームや味の素のような伝統小売までしっかりと手が付けられている消費財メーカーもありますけども、その他の多くの消費財メーカーは、近代小売が中心で、なかなか伝統小売に配荷が進まない。そして、できれば実績が出るまでプロモーション投資はしないという、こういう構造で、悪循環が生まれてしまっているわけですよね。

アジア新興国の人たちは決してお金がないんではなくて、1ドルの価値が日本人より高いんですよね。この1ドルを使って、今まで買ったことも聞いたこともないものを買います。そして、失敗したときに、日本人ならそれはもう食べない、使わない、捨てる、そして、二度とそれを買わない。もう数分後にはそのことを忘れている。一方で、彼らにとって1ドルというのは、これは非常に大切な1ドル、価値の高い1ドルです。この1ドルを使って失敗はできないんですよね。なので、知らないものは買わない。特に値段が高いんであれば、やっぱりしっかりとプロモーション投資はしていかないと、これはなかなか手に取ってもらうということは難しい。

結局、この間違った4Pを繰り広げてしまうので、必然的に中間層には売れずに、ターゲットが牌の少ない富裕層に上振れしていくというのが、これが日本企業のだいたいの大きな流れで。彼らとしては、自分たちはプレミアム戦略なんだ、いい原材料を使って、高い技術力でいいものをつくっているので、自分たちはプレミアム戦略なんだ、まずは富裕層からということで、FMCGの業界にとって、メーカーにとって、消費財メーカーにとって最も重要な中間層からどんどん、どんどん、離れてしまうというのが非常に大きな問題になっていて。多くの日本の消費財メーカーのうまくいかない問題、もちろんこれは消費財メーカーだけじゃなくて、B2Bもそうですけども、製造業の海外、新興国市場でうまくいかない問題というのは、ターゲティングと4Pのいずれかに存在すると言っても過言ではないと思いますので、皆さんも今一度、この4P、MMを見直してみてはいかがでしょうか。

それでは皆さん、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。