東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:前回、ディストリビューターとの契約書について少しお話したんですけども。そうすると、長くある必要はないけれども、ここだけはやっぱり押さえておいたほうがいいんじゃないかみたいな、森辺さんから見ても、当然、弁護士先生のチェックが入ってOKが出た段階で次にくると思うんですけど、実務面から見ると、「これはしておいたほうがいいんじゃないの?」というのが何点かあると思うんですけど、その辺はどうですかね。
森辺:基本的には、もう一番絶対重要なのは支払条件のところですよね。
東:うんうん。
森辺:これが、基本的に輸出でやる場合は絶対に先払いなので、「先にもらって、モノをあとに出す」ということだと思うのね。なので、支払条件が1つですよと。もう1つが、商品の納品をして、検品をして、届いたのが勝手に「不良品だ」と言われても困るわけじゃないですか。
東:はい。
森辺:だから、どういう状態で検収をしてもらえるのか、その期間と内容みたいなところをやっぱりしっかり決めておくということが1つ。あと、お互いパートナーとしてやっていくわけだから、どういうところにマーケティング活動、営業活動をしていくのかというところの情報共有だよね。こっちもいろんな営業をするための「プロモーションフィーをここまで出します」とかするわけだから、向こうも営業に対してどれだけ顧客情報を開示するとか。よくあるのが、ディストリビューターが顧客情報を開示してくれないんですみたいな、そんなのディストリビューターじゃないと僕はよく思っていて、そんな関係でやっているんだったら、たぶんそれはパートナーじゃないですよね。要は、ディストリビューターが中抜きされることを気にして顧客情報を開示しないという話だよね。
東:はいはい。
森辺:なんだけども、それって全然心が通わないディストリビューション契約なので、何かを一緒にやろうなんていうことはできないので、僕の書籍でも書いているような「輸出型輸出ビジネス」の究極なんですよね。だから、そういう意味では、やっぱりそこはすごく、僕はポイントとしてはその3点は注視しますかね。あとのことはどうでもいいみたいな。数字のところで言うと、目標金額どうするとかとか、そういうことなので。1つは支払条件、支払条件と検品はセットだよね、これね、これが1つですよと。あとは、いわゆるマーケティングまわりの情報共有とか役割分担の話、これが1つですよと。もう1つが…、何だっけ。
東:数字ですか。
森辺:数字、目標数字ね、どれぐらいやりますかみたいな。この3点ぐらいがしっかりしていれば、やっぱり最後の目標数値をいくらやるかということと、それをどう実現するかという、ここに神経を注いだほうがいいわけですよ。分かりやすく「10億やります」と言っているのに、お客さんが5人だったら1社2億ずつ押し込まないといけないわけじゃないですか。
東:(笑)確かに。
森辺:それって不可能だよねということが、極端な例で言うとね、分かるとなると、やっぱり顧客は100社いないと駄目だったとか。そういう数字合わせ含めて、いくらやるのか、どうやるのか。「どうやるのかをお任せ」というのが非常に多くて、そういう会社はどこかでやっぱり限界が来るので、そういう意味では、そこに神経を注いだほうがいいんじゃないかなという気はしますけどね。
東:なるほど。そのどうやるかというのを丸投げというのは、基本的にはそこにメーカー側があまり関わらないということですか。
森辺:うん。すごいよね。売ることを放棄するという話だから、もうあり得ないと思うのね。ディストリビューターが売ってくれる人たちなんでしょうという、自分たちはつくる人というのはあるんだけど、それっていうのは、言ったら、その機能をね、ディストリビューターに売るという機能をお願いするだけの話であって、戦略からその機能がどうワークするかというのを自分たちで理解したうえでやらせるのと、まったく理解しないでお任せしますというのでは、やっぱり得られる結果が、今は同じでも、将来もし何か別の状況に陥ったときに対策が打てないんですよ。
東:そうですね。
森辺:だって、任せきりですからね。だから、それは企業経営としてはリスクですよね。だから、そこに神経尖らせたほうが、僕はいいんじゃないかなという気はしますけどね。
東:分かりました。じゃあ、最後に振り返りで、森辺さんが重要だと思う3つのことをもう1回教えていただきたいんですけど。
森辺:ディストリビューション契約ね、輸出で新規で新興国でディストリビューターを見つけて契約をするということに限って言えば、あまり枚数の多いガチガチの契約書に神経尖らせるよりも、基本的には支払条件、それから2つ目がマーケティングまわりの情報共有と役割分担、そして目標数値、目標額とそれをどうやるのかみたいなところがしっかり押さえられていたら、あとのことはもうそんなに最初から決めなくてもいいんじゃないのと、ある程度の桁が数十億とかっていったタイミングで、「そろそろわれわれの事業規模も大きくなったので、ちゃんと契約書を結び直しましょうか」と言ってもう1回やればよくて。契約書なんてフェアで結ぶので、お互いが納得して結ぶので、アンフェアな契約書なんかどうせ結ばれないわけだから、あとで、先にうにゃうにゃって結ばないと駄目だとかって話ではないわけですよ。
東:そうですね。
森辺:あとね、国際裁判なんてやったらもう疲弊するだけなので、基本的にお金を払おうと思っていない人、もしくはお金のない人からお金は取れないので、そういう状況に陥ったら終わりなんですよね。もう損をするというだけなので、いかにそうならないようにするかということのほうがもっと重要なので。だから、契約書は要らないですと言っているのではないですよ。契約書はするんだけども、国際裁判なんて相当な金額にならなかったら、もうやっても意味ないですから。なので、そう思います。
東:分かりました。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。