コラム・対談 Columns
本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。
Vol. 26 “視点”を誤ればグローバル・マーケティングは失敗に終わる
著者:森辺 一樹
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長
「自国を中心とした他国」視点からの脱却
今回は、グローバル・マーケティングの“視点”について少しお話したいと思います。グローバル・マーケティングに似た言葉に「国際マーケティング」があります。これらの違いはどのようなものなのでしょうか。ひとつには企業の進出先の国との関与のあり方や、規模的な発展から見た違いがあります。国際マーケティングという言葉が生まれたのは1960年代だと言われています。当時は自国と外国との間で行われるマーケティングとして「国際マーケティング」というワードが用いられていました。その後、取引に関与する国の数が増え、また取引先国での現地適合化が進むなど関与の度合いもより深まっていったことから、これら国際化の進展に伴い多国籍でのマーケティングを表す「グローバル・マーケティング」へと進化していきました。この「国際マーケティング」とは、英語にすると「インターナショナル・マーケティング」が適当です。その昔、「インターナショナル」という言葉がよく聞かれたと思います。いつ頃からか、この「インターナショナル」という言葉が聞かれなくなり、代わりに「グローバル」という言葉に置き換わりました。これが正に、マーケティングの領域でも、国際マーケティング(インターナショナル・マーケティング)からグローバル・マーケティングに進化したということなのです。
ここでもう少し、この「インターナショナル」と「グローバル」の違いを掘り下げていきましょう。「インターナショナル」とは、日本語にすると、「国際的」とか、「国際間の」と訳されます。英語の「Inter」や「National」の意味から考えても、この「インターナショナル」は、あくまで自国を中心として考えた時の他国との関わり合いを表しています。一方で、「グローバル」はどうでしょうか。「グローバル」は、「地球全体の」、「世界的な」と訳されています。つまりは、地球全体を一つとして捉えて物事を考えることです。つまり、国際マーケティングとグローバル・マーケティングでは、市場を見る時の視点が異なるということです。国際マーケティングでは自国と外国との間のマーケティングですから、市場の区別も「国内市場」と「海外市場」という見方になりますが、グローバル・マーケティングにおいては、自国の市場である国内市場は、基本的には中心には置かれず、グローバルで地球全体を市場として見た際の一市場でしかなく、それがたまたま日本であるというだけの話なのです。
この違いを理解できないと、自分たちはグローバル・マーケティングをやっているつもりが、実はそうではなかったということになってしまい、結果として成果が遠のいてしまいます。グローバル・マーケティングにおいては、常にこの市場を見る時の視点を意識することは大変重要なことなのです。