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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 25 必要なのは「営業力」より「マーケティング力」

著者:森辺 一樹
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長

「営業力」と「マーケティング力」は似て非なるもの

本来のマーケティングとは市場調査から始まり、商品を開発、生産、販売し、資金を回収し、アフターサービスまでの一連のプロセスのことです。「マーケティング力」とはその能力の高さを指しています。そして営業とは、顧客アプローチ、顧客提案、クロージングと、マーケ ティングの後半の一部のプロセスしか担っていません。「営業力」とはその限られたプロセスを行う能力の高さを示しています。日本の企業やそこで働く人は、営業力は優れているものの、マーケティン グ力に欠けているというのが実際です。「木を見て森を見ない」という言葉がありますが、営業は木、マーケティングは森です。先進グローバル企業と世界で戦うためには、木ばかりを見ずに森を見なければならないのです。営業力とマーケティング力の一番の違いは、営業力はいくらその能力が高くても所詮は1対1の戦いですが、マーケティング力は優れていれば、それは1対100、もしくはそれ以上で戦えるという点です。要は、ROI(投 資対効果)を百倍にも、千倍にも、1万倍にもすることが可能なのがマーケティング力だと私は考えています。

世界ではマーケティング力がどれだけ重視されているかを知る

「マーケティング」という言葉は、うまく日本語に訳すことができません。そもそもマーケティングというのは米国で120年ほど前に生まれた概念です。私たち日本人はマーケティングという言葉をさんざん耳にはしているものの、その実態がきちんと把握できないために、現在のビジネスに、特にグローバル・ビジネスにおいては活かしきれていないのが現状です。日本には独特の商習慣や人間関係があり、マーケティング力よりも営業力が非常に重要視される中でビジネスを行ってきた背景があります。セロからのマーケティングは創業者をはじめとする先輩方がはるか昔に実施済みで、戦後7年以上経った現在では その土台の上で営業力さえあればビジネスが成り立つのです。

一方で、グローバル市場では、その土台がないので、営業力の前に必ずマーケティング力が問われます。営業力はマーケティング力があってはじめてその効果を発揮します。先進グローバル消費財メーカーではCMO、いわゆるチーフ・マーケティング・オフィサーという役職がしっかり確立しているほど、マーケティングを1つの大きな武器として戦ってきている現実があります。 そんな企業とグローバルで戦うためには、営業力以上にマーケティング 力が大切です。マーケティング力を駆使しないと、世界で勝つことはできません。気合いと根性で世界と戦っても、勝てるわけがないのです。これは決して営業力を否定しているわけではなく、営業力はマーケティングでより高い効果を生むという話です。そして、そうしなければグローバルでは勝てないのです。