コラム・対談 Columns
本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。
Vol. 32 ストア・カバレッジを上げなければ、マーケットシェアは上がらない
著者:森辺 一樹
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長
伝統小売(TT)のストア・カバレッジとマーケットシェアは比例する
消費財市場においては、下記の図のように、ストア・カバレッジと国全体のマーケットシェアは比例します。販売している店舗の数が少ないのにマーケットシェアが高いなどということは、起こりえません。わかりやすく説明すると、自社商品が100店舗にしか入ってないのにマーケットシェアが30%あるなどということは、1店舗当たり毎日何十万、何百万個売れていれば話は別ですが、そんなことは不可能なので現実的には起こりえないことです。逆に、ストア・カバレッジが高いのにマーケットシェアが低いケースもほぼ存在しないと言えるでしょう。なぜなら、商品が売れなければ棚からは半年で撤去されてしまうので、売れないのに店舗に陳列し続けてもらい、ストア・カバレッジを維持し続けることはできないからです。日本の消費財メーカーで、高いリスティング・フィーを払い、店舗に商品を一気に並べたのはいいものの、あまり売上が伸びずに、半年で棚から撤去されてしまったという例は数多くあります。
最初の3年で黒字ゾーンを目指す
このように、ストア・カバレッジとマーケットシェアは比例するので、ストア・カバレッジが低ければ当然、マーケットシェアも低いままで利益は出ません。 この利益が出ない赤字ゾーンから、いかにして黒字ゾーンに突き出るかが、消費財メーカーが海外で事業に着手して最初の3年間でまずやるべき最初のタスクです。先進グローバル消費財メーカーはこの構造を熟知しているので、最初の 数年をチャネルへの投資期間と定めています。将来、黒字ゾーンに突き出るために、ストア・カバレッジを上げ、なおかつインストア・マーケットシェアを上げることを中期戦略としてひたすら心血を注ぎ込むのです。日本の消費財メーカーは、最初の3年で悪戦苦闘し、色々な戦略を試しては失敗を繰り返しますが、結局は中間層や伝統小売と正面からぶつかることを嫌がるため、成功の法則を見出すことができません。消費財メーカーにとっての成功のポイントは、ストア・カバレッジとインストア・マーケットシェア、この2つだということを忘れてはなりません。