東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回、VIPの伝統小売がなかなか進まない理由ということで、書籍の中でも日本企業のためのアジア新興国における新チャネル戦略があって、第4章なんですけども、4-1で伝統小売と近代小売の両方を攻略するみたいな、前回おっしゃったようなことなんですけども、この伝統小売だけやりたいのに、近代小売もやらなきゃいけないんだとか、近代小売で売れていれば、伝統小売って勝手に配荷されるんじゃない?とか、そういう誤解もあると思うんですけど。その辺について、どちらの小売も売れるものを置きたいと書いてあるんですが、ちょっとその辺の相関関係というか、相互性というか。
森辺:そうですね。首都と郊外、都市部と郊外っていう関係と、近代小売と伝統小売っていう関係があるんだけども、これちょっと勘違いしがちなんだけど、伝統小売っていうのは首都にも都市部にもどこにでもあるんですよね。郊外に行ってもあると。なので、どちらかと言うと、その対象市場、新興国の対象市場の人口の密度に合わせて、だいたい人口密度が多いところにはたくさんあるから、そういう分布でブワーッと広がっています。一方で、近代小売も同じようにあるんだけども、基本的には都市部だよね、近代小売ってね、首都とかね。
東:うんうん。
森辺:そういう中で、伝統小売だけで売れるっていうのは結構レアケースで。例えば、例外としてあり得るのが、郊外で非常に中間層以下の人たち、今、貧困層とかって言ったほうがいいかもしれないけど、ランクで言うと、DとかEランクの地域に、いわゆる中間層が買うような一般消費財が買えないから、非常に安価な消費財をつくって売っているというメーカーが中にはあるんですよ。中国メーカーだったり、ローカルメーカーだったり。そういうエリアで認知度が高い、シェアが高いっていう商品はまれにある。こういう商品は近代小売に入れないんですよね。なぜならば、安全性もそんなに、確立されてないと言うと語弊がありますけど、言ったらあまり近代小売も、別に好んで置きたくないというね、三流品ということですよね。そういう場合は、伝統小売でだけしか売れないというケースがあるんだけど。基本的には、近代小売で売れなければ伝統小売でも売れないというのが、特に都市部とかはもう絶対で。
東:はい。
森辺:やっぱり、近代小売で買っている、10個入りで買うんだけども、それを1個から安く買いたいと。もちろん1個あたりの単価は高くなるんですよ、バラすからね。グラムあたりは高くなる。それでも、やっぱり個人のキャッシュフローというのが重要で、言ったら、何カ月かあとに食べるもの、使うもの。頭痛薬なんかもそうですよね、24錠、いつ使うか分からないものを24錠買うんじゃなくて、今使いたい1錠だけを買うというのが伝統小売の魅力なので。考え方としては、お金のない人が安い買い物をするのが伝統小売というイメージを持っちゃっているんだけど、いや、そうじゃないんだよと。近代小売で買っている人も、伝統小売に行くんだよと。要は便利だというだけの話で。われわれのコンビニみたいなもので。なので…。何だっけ、質問は?(笑)
東:(笑)伝統小売と近代小売の相関性というか、近代小売、伝統小売にどうして流れないのかみたいなところがあると思うんですけど。
森辺:それは、近代小売で流れてないからという問題と、そもそも伝統小売に配荷するためには、やっぱり、伝統小売に配荷する販売チャネルが必要で、多くの場合は、日本企業が付き合っているディストリビューターというのは近代小売に強いと。なぜならば、彼らも楽なんですよ。近代小売はね、セントラル物流にボーンと商品を置けば、あとは勝手にマーチャンダイジングしてくれて、年間うるさいプロモーション協力を何回か言われるけども、メーカーから金もらって金払っておけば、それで大量に毎月出るよと。けど、伝統小売は1個1個開拓していかないといけないでしょ。
東:うんうん。
森辺:なので、手間が掛かると。そうすると、大きくなればなるほど、ディストリビューターは近代小売が強くて伝統小売が弱くなるという傾向があるので、伝統小売のディストリビューターというのは、ディストリビューション・ネットワークとして複数をネットワーク化しなきゃいけない。それがまさにネスレ・リーバモデルと言われるディストリビューション・ネットワークなわけなんだよね。
東:はい。
森辺:なので、そういうものをつくらないといけない。それがないと伝統小売には流れないということでございます。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。