第347回 「誰と売るか」よりも「誰に売るか」が先 その2
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、「誰と売るか」よりも「誰に売るか」が重要であるということでお話をしていきたいと思います。繰り返しになりますけども、中小企業向けのお話をしばらくしています。この番組でなかなか中小企業向けの話を取り上げてきたことがなかったので、今、シリーズであと何回かにわたって中小企業向けの話をしています。ただ、大企業でも1部門とかって言うと、中小企業の1社と同じぐらいのステージにいるケースというのはまだ多くございますので、大企業の1部門の取り組み、まだ輸出でビジネスをしているとか、そういう部門があれば十分に役立つ話じゃないかなというふうに思います。
ここで言う中小企業の定義は、売上数十億円~数百億円で、EBITDAでしっかりと利益が出ているということが中小企業の条件になります。
それでは、前回の続きですけれども「ターゲティングが重要ですよ」と、「誰に売るか」ということが、「誰と売るか」よりも大変重要であると。日本企業の多くの企業の失敗は、この「誰に売るか」ということを何となくぼやっとさせたまま、「誰と売るか」のほうにフォーカスをしてしまって、結局、この「誰と」ということで選んだ最善と考えた相手が、自分たちの売るべき「誰に」に売れなかったということで失敗につながっているというケースが多々あります。マーケティングのセオリーは「誰に何をどう売るか」なので、この「誰に」が明確に決まっていなければ、「何を」も決まらないし、「どう売るか」ということも決まらないので、「誰に売るか」ということはものすごく重要なんですよと。日本企業の新興国展開の最大の過ちは、「誰に」が不明確。B2Cだったらもう「中間層である」ということは分かっているのに、ターゲットが上振れしてしまうと。上振れするのであれば、そもそも新興国に出る必要性がなくなってくるわけですから、「誰に」ということは大変重要ですよというお話でございます。
前回のおさらい、繰り返しになってしまうところもあると思うんですけども、このB2CとB2B…。スライドをお願いします。スライドで見て分けて考えると、B2Cは消費者なんですよね。「どういうペルソナ、ターゲットに売るんですか」ということを見ていくわけなんですけど、結局、中小企業が輸出でね、B2Cで海外、新興国に売るときに、いちいちペルソナを組んでターゲットを割り出しても、その通りいかないので、正直あまりそこに神経を使っても意味がなくて。ある程度ざっくりターゲットを決めたら、「そのターゲットが買っている小売はどこなんだ」と、ショップというふうに書いていますけど、「ショップはどこなんだ」、そのショップをターゲットに持っていったほうが、効率がいいです。戦略をつくる上での効率が圧倒的に高い。
例えば、富裕層がターゲットであると。本来は新興国というのは中間層がターゲットなんだけども、輸出で数億円やりたいという場合は、首都圏に在住の富裕層だけを狙っても十分それは達成できる話なので。そうすると、富裕層であると。そうすると、富裕層が行く小売ってどこなんですか。首都圏のA、B、Cの小売が富裕層が買い物をしています。D、E、Fは、これは郊外型で中間層が買い物をしているので、A小売、B小売、C小売ですということで、そこがターゲットになるわけですよね。そうすると、じゃあ、「このA小売、B小売、C小売に強いディストリビューターってどこなんですか」ということでディストリビューターを探せばいいので、良いディストリビューターの定義が非常に明確になるんですよね。日本企業がディストリビューターを選ぶときの「良いディストリビューターって何なんですか、定義は何なんですか」と言ったときに定義が非常にあいまい。だから、結局、良いディストリビューターを選べなかったりする。「大手だったら良い」とか、「財閥系だったら良い」とか、「誰々の紹介だから良い」とか、「日本語がしゃべれたら良い」とか、まったく関係のない要因で選ぶんですけど、重要なのは、大手であるべきでも何でもなくて、日本語がしゃべれるわけでもなくて、自分たちがターゲットとしている小売に商品を売れるディストリビューター、これが良いディストリビューターの定義なんですよね、皆さんにとってですね。なので、それ以外の要因を勝手に良いとご認識して付き合ってしまって、そして、結局、うまくいかないと。1回ディストリビューターと組んだら、別れるのに3年~5年はかかる。なぜならば、1年目はトライさせてみるけど、できなかったけど、「1年目だからしょうがないよね」ということになるんですよね、「もう1回チャレンジしてみよう」。2年目も、「まあ、頑張っているからしょうがない」。だいたい日本企業は優しいですから、「頑張っているからしょうがないね。ここまで来てすぐにあきらめるのはよくないね」と。すぐに判断をするということは日本ではよくないというふうに解釈されるので。欧米では即決即断は良い経営者の仕事なんですけども、「すぐにコロコロ変えることはよくない」という判断になるので、結局、3年4年5年と時間がかかって、ずぶずぶになって、最後、お互いが嫌い合うまで憎しみ合うまで別れないみたいな。だいたい、お互いがお互いの悪口を言って別れていくというケースに陥っているのを多々たくさん見てきたので。私から言わせると、やっぱり、選ぶときの日本のメーカー側のプリンシプル側の選定基準があいまいだったし、ディストリビューターのですね、また、ディストリビューターを決める前にターゲットをしっかり決めておかないからそういう結果になったというケースが往々にして見られるので、ターゲットを先に決めるということは非常に重要です。
B2Bの場合は、インダストリーをまず決めましょうねと。なぜならば、インダストリーを決めると、営業のプロセスで標準化できることがたくさんあるので、まず「どのインダストリーに売りますか」ということを決めて、そして、そのインダストリーの企業名を全部リストアップする。そのときにやっぱり順序があって、日系企業、外資系企業、ローカル企業、こういうふうに順番に売っていく。なぜならば、日系企業が一番自分たちにとって営業が有利に進む可能性が高いわけですよね。金額的なディスカウントの金額も少なくて済むし、ある程度日本での実績も通用するし。その次に、やっぱり合ってくるのが欧米の企業になって、最終的に一番コスト的に苦しいのがローカル企業というふうになってくるので。その順番でターゲットを決めていって、バイネームで、もう企業名までリストアップする。B2Bなんて全部企業名を出せますから、自分たちがターゲットとすべき企業名をリストアップして、「そこにしっかりとセールスをしていけるディストリビューターがどこなんだ」ということで選んでいく。明確ですよね。「私たちの商品はこれです。この企業に売りたいんです。あなたたち、この企業と取引ありますか」ということでディストリビューターを決めればいいだけですので、「誰と売るか」よりも「誰に売るか」ということが、もう圧倒的に重要ですよと。「誰に売るか」を決めてから「誰と売るか」ですよと。マーケティングというのは「誰に何をどう売るか」なので、「誰に売るのか」ということを先に決めるということが大変重要。これは中小企業に限った話ではなく、大企業も含めて、「誰に売るんだ」ということが大変重要であるというお話でした。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。