第348回 ディストリビューター選定で成否の7割は決まる その1
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、中小企業向けのお話をしていきたいと思います。この番組で中小企業向けのシリーズでお話をしておりますが、ここで言う中小企業は、売上数十億円から数百億円で、EBITDAでしっかりと利益が出ているということが条件になります。そうは言っても、大企業の1部門では中小企業1社程度の海外輸出でとどまっているという新しい商品とか新しい製品、部門というのはたくさんあると思いますので、そういった大企業の部門にとっても十分役に立つ話だと思います。この番組で中小企業の話はそんなにしてこなかったので、今ここ何回か、10回かな、くらいずっと中小企業の話をしております。もう少し中小企業の話をしていきたいなというふうに思っています。
今日のお話なんですが、中小企業の海外展開、海外販売の成功の可否の約7割はディストリビューターの選定で決まるというふうに言っても過言ではないということについてお話をしていきたいなというふうに思います。ディストリビューター選びが非常に重要ですよというお話ですね、「誰と売るのか」と。前回は、「誰と売るか」よりも「誰に売るか」が重要ですよというお話をしました。日本企業の多くの失敗要因というのは、大手も含めて、「誰と」売るかのほうに神経が先にいってしまって「誰に」売るかがぼんやりしてしまうと。結果、選んだ相手、最善だと思って選んだ相手「誰と」が、この相手が自分たちが売りたい「誰に」に売れなかったと、だからうまくいかないというケースが非常に多いわけなんですけども。今日のお話は、「誰に売りたいのか」がもう明確に決まったと。そのあと、じゃあ、「誰と売るんだ」ということでそのパートナーを決めるという、そういうステージのお話になります。
この「誰と売るか」を間違えると、実際には3年~5年ぐらいは足を引っ張られることになるんですよね。前回か前々回もお話しましたけども、結局、1度決めたパートナーとそんなに、じゃあ、あっさりすぐにお別れするというケースって少なくて。1年目は、「やってみたんだけども予定通りいかなかった、目標通りいかなかった。でも、1年目だからしょうがないよね、もう1年見てみよう」って絶対なるんですよね。2年目も、「2年目だからしょうがないね、こんなに簡単にあきらめちゃいけないね、3年目も見てみよう」って絶対なるんですよ、日系企業の場合。そうすると、どんどん、どんどん、時間だけが経っていく。なんだけども、重要なのって、頑張ってるとか頑張ってないとかっていうことではなくて、「そもそもこのディストリビューターのケイパビリティで自分たちのターゲットにモノが売れるんですか」というところを見抜かないといけない。これはメーカーの仕事なんですよね。そこの目利きを誤っているにもかかわらず、「ディストリビューターが頑張っているから、このディストリビューターとずっとやっていこう」という判断をするということは、ここでまた2つ目の過ちをおかすということになってしまう。だって、売れない、売れるケイパビリティを持っていないところに、飴をあげてムチを打って、もっと頑張って何とか売らせようとしているわけですから。重要なのは、自分たちのターゲットに売れるディストリビューターを選定するということなんですよね。それができていないのにも、それができているにもかかわらず何かの要因で売れないことを頑張ろうというのは、これはありだと思うんですけども、そもそもケイパビリティがあるのかないのかも不明確な状態で頑張らせていくというのは、これはなかなか賢いやり方とは言えませんので、重要なのは、自分たちのターゲットに本当に売れるディストリビューターを選定するということが大変重要です。これでロスをするので、3年~5年とロスをするので、まずもって間違ってしまうと非常に痛手を負います。その国の売上ならびに将来性に関して言うと、非常に痛手を負うよということが1つですね。
ディストリビューターの選定で7割が決まるという話なんですけど、まず、このスライドを見ていただいて。ディストリビューター、強い販売チャネルをつくるということは、単にディストリビューターを選ぶだけじゃなくて。大手とかの話なんですけどね、これは大手の企業とかでわれわれが入って販売チャネルをつくるというときは、まず、黄色い文字で書いてあるディストリビューターの発掘選定ということをまず絶対やる、最初に。これがいわゆる適切なディストリビューターを選んでいくということですよね。どのディストリビューターとやるべきかということを、ただ、自分たちのこの手の届く範囲の中から選ぶということではなくて、この商品を売れるディストリビューターを全部1社残らずリストアップして、そこから絞り込んでいくというのがこの発掘選定で、多くの中小企業は、たまたま出会った何とかとか、たまたまこの手の届くところにいるディストリビューターの中から選ぶと。あとで気付いたら、実は全然手の届かないあっちのほうにいたディストリビューターのほうが良かったとかっていうケースというのは全然あって。恋愛は出会いで選んだらいいと思うんですけど、ビジネスパートナーはやっぱり出会いとかではなくて、科学的な手法でしっかり絞り込んでいくということをやらないと、なかなかうまくはいかないですよという、この発掘選定というプロセスが1つ。
発掘選定が終わると、多くの日本の企業は契約、言ったらディストリビューション契約をするわけなんですけども、守りが中心になった契約書で契約を結んで、「はい、それでおしまい」というケースが多い。契約までがすべてなので、契約が終わると、「もう自分たちはつくる人なので、売るのはディストリビューターの仕事です。あとはお任せ」ということで、そもそもこの契約の交渉プロセスというのが非常に弱いし、契約交渉のあとのこの赤字の管理育成というところがもう皆無というのが、だいたい大手の日本の企業の状態なんですよね。半年に1回、1年に1回の定期訪問を管理育成だというふうに解釈しているケースというのも非常に多いので。そんなものは全然管理育成とは言わないので。基本的には、ディストリビューターは、プリンシパル、つまり、メーカー側がしっかりと管理育成をして成長させていかなければいけない。
欧米の先進的なグローバル企業というのは、すべてこの管理育成をやっているし、ここに投資をしっかりしているんですよね。契約交渉なんていうのも、KPIを契約の前にしっかりと設定をするし、どうなればどういうインセンティブを支払うか、どうなればどういうペナルティを課すかということが非常に明確で。
日本企業の場合は、「これはやらないでください」「あれはやらないでください」「それはやらないでください」みたいなところは、守りのところはしっかりしているんだけど、攻めのところが全然ないのと。分かりやすい例で言うと、結局、この1社に独占的に権利を与えるにもかかわらず、一応、何かあったら困るから非独占契約とかっていうのを結ぶわけですね。しかも、1年の単年度契約です。これ、メーカー側にとっては実はリスクが少ないと思っているんでしょうけども、実際にディストリビューターの立場から見ると、単年度の契約ということは1年間で契約が切られるかもしれないし、彼らは、「いやいや、事実上独占だと言っても契約書上は非独占なので、別のディストリビューターを持ってこられるかもしれない。こんなリスキーなところにわれわれの経営資源を投下できない」という、当然判断になるわけですよね。1年間で成果を出すなんていうことは無理で、商品をしっかり新たな新興国の市場で売っていこうと思うと、それ相応の時間、投資をし続けないといけない。それをディストリビューターが担っていくということは、やっぱり複数年度の契約をもらって、「その代わり最低売上みたいなものが達成できなければ、契約は単年に切り替わるよ」みたいな条件があるんだったらまだ頑張るということをしますけども。そういうアップサイドの条件もなければ、ダウンサイドの条件もない、「ただ、単年度契約で非独占ですよ」みたいな契約をやっているケースが結構あって。これだとやっぱり、ディストリビューターは表向きの顔は、「よし、頑張ります」と言うけども、本当に、じゃあ、自分たちの財産を投資できるかと言ったら、彼らは一族系のトップダウンの企業ですから、個人企業が多いですから、そうすると、それを、じゃあ、自分たちのリスクを取って投資するかって、なかなかしないということにもなるので、この3つが大変重要ですよということで。
ちょっとだいぶ話が逸れて長くなっちゃったので、ちょっとここで一旦切って、また次回続きを話していきたいと思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。