森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。
今日も前回に引き続き、先進グローバル企業の強さの秘密ということでお話をしていきたいと思います。前回、「3つぐらいありますね」というお話をして、その1つ目のお話をしたと思います。
先駆者メリットを最大化するための早期の判断とか進出が非常にうまいと、新興国市場に関しても。日本企業はどうしても出遅れ感がありますよねという話をして。「なぜこんなに早く決められるの?」というお話で、彼らの組織の中のマインドセットとして、誰よりも早く動くということが、誰よりも早く失敗するということにつながって、それが誰よりも早く学ぶということに結果としてつながるので、最終的には誰よりも早く成功するという、この好循環の仕組みを分かっている、サイクルを分かっているので、早く動くということが勝ちになるんだよと。
一方で、日本企業の場合は、早く動いて失敗したらどうなんだということで、その敗者復活戦がなかなかしにくい、ミスを嫌うというね、こういう背景があるのでなかなか動けないので、石橋を叩いて叩いて叩き過ぎて動けないから「NATO」だと言って、「No Action Talk Only」と言ってASEAN市場から揶揄されるという、そんなお話をしたんですが。私が今まで過去、いろんな先進グローバル企業にインタビューをする中で見えてきたものというのは、こういう好循環の仕組みが非常に理解されているよねと。その中で、この日本の失われた30年とかっていう長きにわたる時間の中で、かつてのオールドエコノミーの時代って、日本企業は戦後急激な成長を遂げたんだけども、そのあと、いわゆる戦い方が大きく変わってしまった。ガラケーからスマホに、それからインターネットが登場して、ITが出てきたタイミングでなかなかこう、ハードからソフトの戦いになったときに、日本企業というのはなかなか勝利ができなくなってしまったと。
その中で1つあるのが、ディスラプティブ・イノベーションという言葉があるんですけど、日本語に訳すと破壊的イノベーションという、米国の経営学者のクレイトン・クリステンセン先生が提唱した概念なんですけど、すでに確立された技術であったり、ビジネスモデルによって形成されている既存市場や既存業界の構造そのものを劇的に変えてしまうようなイノベーションのことを言うんですよね。例えば、Uberなんかそうですよね。タクシー、日本だとUberは規制であまりみんなUber Eatsのほうがメインだと思っているかもしれないですけど、基本的には配車サービスなわけですね。日本では配車というのはタクシー会社、人と車を雇用して、車を購入してやるというものですけども、Uberというのは基本的に車を持っている個人が空いた時間でUberのシステムにつないで配車サービスを提供するので、1台の車も持たずに1人の運転手も雇わずに世界最大の配車サービス会社になったというのがUberですけども。こういうディスラプティブ・イノベーション、戦いですよね。テスラなんか、まさに今、電気自動車で今までのエンジンを軸とした自動車の業界を破壊しようとしている。まだ完了していないのでどうなるか分かりませんけども、おそらくディスラプティブ・イノベーションになるだろうと。
そう考えてみると、なかなか日本からこのディスラプティブ・イノベーションの類のようなものって出てこなくて。欧米を真似したようなもの、アメリカを、シリコンバレーを真似たようなものは出てきて、ある程度ユニコーンに育つものの、日本初のディスラプティブ・イノベーションというのはなかなか出てきてなくて。そう考えると、過去どうなんだろうなというふうに考えたときに、ソニーのウォークマンなんかまさにディスラプティブ・イノベーション。今まで音楽って部屋の中で座って聞く、そういう概念を、音楽を持ち歩くと、そういう概念になって、今の世界が広がっているわけですから、あれはまさにディスラプティブ・イノベーションだったわけですよね。なので、日本もディスラプティブ・イノベーションは生んできたし、過去生めていると。でも、その当時の企業ってどうだったんだろうって考えたときに、やっぱり創業間もなかったし、誰よりも早く動いて、誰よりも早く失敗をして、それをものともせず誰よりも早くその失敗から学んで、結果として誰よりも早く成功するという、この好循環を受け入れられてきたんじゃないかなと、組織としてね。なので、破壊的イノベーションみたいなものを生めてきたんだと思うんですね。
でも、それがなかなか生めなくなってきていて、その状態で新興国市場でじゃあ戦うと言っても、新興国の企業もリバース・イノベーションなんて言って、新興国初のイノベーションが先進国で浸透していくというものをリバース・イノベーションと言うんですけども、そういったものも生まれる中で、やっぱりイノベーションが生めない日本企業のそもそもの根源というのが何かと言うと、やっぱり失敗に対するノー、ネガティブなイメージ、イメージというか、ネガティブな待遇も含めてすべてだと思うんですけども、いかに失敗を良しとするって、言葉だけじゃなくて、組織全体として受け入れていくかということをやっぱりつくり上げていかなきゃいけない。
先進的なグローバル企業、私が見てきた先進的なグローバル企業は、少なくともこの失敗をやはり成功に変えていくという好循環サイクルが概念としてしっかりと理解されているので、彼らは早く判断ができるんですよと。日本企業がより判断を早期にする、できる組織に変わるというためには、やはりそういうサイクルの理解が必要なんだろうなというふうに思います。
今日も話が長くなってしまって申し訳ございません。これぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。