第399回 【本の解説】「輸出型チャネルビジネス」への大転換 その2
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、本の解説をしていきたいと思います。私が去年出した『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社からですけども、引き続き解説をしていきます。前回1-5、27ページの説明をしているんですけど、私の話が長くてね1回で終わらなかったので、今日も引き続きお話をしていきたいなというふうに思いますが。前回、輸出型のステージのお話をして、今回は現法ステージのお話になるわけなんですけども、現法ステージでもこれ話は一緒で、現産現販ビジネスというのは現地でつくって現地で売るなんですけど、結局、日本の製造業の多くは、自分たちはどこかつくるのが使命であって、売ることをディストリビューターなりパートナー側に任せるというケースが非常に多い。例えば、工場そのもの、現産現販の場合、工場そのものを現地の同業種と合弁をするというケースがあるわけですよね。なぜ現地の同業種とわざわざ合弁するの?と、日本で同業種合弁なんて絶対しないのになぜするの?と言うと、結局、彼らは工場の投資の総額を減らしたいということももちろんなんですけど、彼らの反応が欲しいわけですよね。自分たちと同じようなものを売っているわけだから、その販路が使えるんじゃないかということで、リスクを半分にして彼らと一緒にやるわけなんですけど。どこかで現地のいわゆるパートナー側は、いわゆる汎用品しかつくれなくて、付加価値品というのは日本企業の高い技術力じゃないとつくれないからということで合弁やるわけなんだけども、結局、市場、蓋を開けてみたら、そんな付加価値の高いものをまだ求めてないよということになって、結局、技術だけ吸い取られて提携解消でお別れみたいな話というのは結構多いわけなんですけど。話が逸れるのでそれは置いておいて…。
そのパートナーなりディストリビューターを使うときに、自分たちはつくる人で売るのは相手ですということで、マーケティングのすべてを相手に委ねてしまう。ですから、これはもう輸出のときと同じで、自分たちの商品がどういう流通、例えば2次店を通じて、どういう小売のどういう棚にどう並べられて、どういう消費者が何を思ってそれを買ってリピートしているのか、していないのか、みたいなところがまったく見えていない。現地に法人がありながら、自分たちのディストリビューターの先の二次店の数とか、会社名とか、例えば担当者とか、それから小売の担当者とか、そういった情報をほとんど持ってない。何となくぼんやりしか持っていない。なので、マーケティング施策をメーカー主導でやるということがなかなかできずに全部ディストリビューター任せ、もしくはパートナー任せになっている。ディストリビューターにもパートナーにも優先順位があるわけで、必ずしも日本のメーカーのプリンシパルのことを最優先には考えないし、あと、ディストリビューターとメーカーにはやっぱりコンフリクトがあるんですよね。ディストリビューター、アジアのディストリビューター、ASEANのディストリビューター、新興国のディストリビューターってだいたいファミリービジネスなので、ファミリーでどうやって富を蓄えるかということが彼らにとっての一番のプライオリティですと。そうなったときに、もうすでにある既存の販売チャネルで商品を流通させるというところが最もコストが掛からずに利益を最大化できるチャネルなわけですよね。
でも、一方でメーカー側としてはよりたくさんの人に、より多くシェアを獲りたいと思うと、もちろん新規開拓をしていかないといけない。でも、新規開拓というのはある一定のところまで行かないと、ディストリビューターにとっては持ち出しになる、新たな投資になると。そうすると、そういうスイートスポットにはまってしまっているようなディストリビューターはそういう新たな投資を嫌がる傾向にあったりもするわけですよね。結局、日本側はやってみて駄目だったら引くし、やれと言うけど大したプロモーション費用は出ないしということで、これは一概にディストリビューターのせいでもないんですけども、そういう問題があると。
なので、マーケティングそのものをメーカーが考えないなんて、これは国内の市場ではあり得ないわけですよね。問屋のほうが小売のことをよく知っているとか、問屋のほうが消費者のことをよく知っているなんていうのは消費財メーカーではあり得ないし。B2Bでも一緒ですよね。販売店さんのほうが顧客のことをよく知っているとか、そんなことはあり得なくて。販売店も顧客を知っているけども、結局、メーカーがしっかり顧客をグリップをして、そして、ある程度手間の掛かる部分を販売店にお願いしているというのが実際の構造なので。そう考えると、国境を超えると、海を超えると思考が停止して、売るということ、マーケティングということは考えなくていいんだみたいな思考になる企業が非常に多い。でも、それはそうではなくて、自分たちの商品がどういう中間流通を通じて、B2Cならどういう小売に、B2Bならどういうユーザーにそれが渡って、何を思って使われて、リピートしているのか、していないのか、ということを把握した上で一部分の機能をパートナーであったり、ディストリビューターに任せるということを本来やっていかないといけないので。本当に輸出のビジネスであろうが、現産現販のビジネスであろうが、チャネルビジネスをしっかりやっていく、流通チャネルに介在していく、マーケティングに介在していくということが大変重要であって、ここをやらないと劇的に数字を伸ばすということはなかなか難しいというのがアジア新興国での現状です。
これが先進国になれば、なればなるほどある程度輸出は輸出ビジネスでもいい、チャネルビジネスとかあまり難しいことを言わなくてもいいし、現産現販を普通にやっていればよかった。けど、新興国の最大の特徴はそこなんですよね。自らがやっていかないと、もう企業の創業期と同じような状態なので、自らが自らの責任でつくりあげていかないと、やっぱりなかなか商品がずっと継続的にセルアウトしていくということが起きにくいので、そこにしっかりとメーカーは投資をしていく必要があるわけです。
ということで、今回は輸出ステージと現法ステージのチャネルビジネスのお話を2回に分けてやらせていただきました。また次回、次の章をやっていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。また次回お会いいたしましょう。