第405回 【本の解説】「R Research」で勝てるか否かを見極める
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も、私が昨年出した『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社について解説をしていきたいと思います。今日の解説ですけども、43ページの「1-9 「R」(Research)で勝てるかどうかを見極める」ということで、前回、マーケティングの基本プロセス「R」「STP」「MM」を、全体像をバーッと説明をしたと思います。前回、前々回の3回ぐらいに分けてやったのかな。今回はその中でも「R」、一番最初の「R」のResearchの部分にフォーカスを当ててお話をしていきたいと思っています。この「R」なんですけども、「R」の目的って、海外展開、新興国に展開をするときのリスクを最小限に抑えるために非常に便利なフレームワークツールなんですよね。これっていつやるかと言うと、一番ベストなタイミングは、基本的には参入前にやるべきプロセスなんですね。ただ、大手を中心にほとんどの企業というのはアジア新興国を中心に展開はしていると。展開はしているんだけども、なかなか規模拡大できない、もしくはシェアが拡大していかないという中で足踏み状態にあると。もちろんそういう状態の中で再参入戦略をつくるという意味で、この「R」をもう1回やっていくというのは大変有効な手段だと思うので、そういう観点で少し聞いてもらえたらなというふうに思います。
早速、すみません。スライドをお願いします。「R」の振り返りなんですが、マーケティングの基本プロセスの一番最初の、「R」「STP」「MM」の一番最初の「R」は、マクロ環境分析、ミクロ環境分析、SWOT分析の3つから構成されていると。この3つなんですけど、マクロ、ミクロ、SWOTとかって、もうカタカナと英語で言っても何が何だかよくイメージできないと、パッと直観的に分からないということを前回お話をしていて。じゃあ、それぞれどういうふうに解釈をしたらいいの?ということなんですが。
マクロ環境分析というのはどういう市場なの?どんな市場なの?もっと言うと、儲かるの?儲からないの?ということを見ていくと。例えば1人当たりGDPってどうなんだったっけ?国の経済力ってどれぐらいでしたっけ?可処分所得ってどれぐらいなの?それから、世帯年収ってどれぐらいなの?はたまた外資規制ってどうなっていたの?文化ってどう?言語ってどう?宗教どう?こういうマクロの環境を全体的にバーッと見ていくと、この市場って一体どれぐらいの需要があるのかということが推計できていくわけですね。これがマクロ環境分析でどんな市場なのかを見るためのツールです。
一方で、ミクロ環境分析というのは、じゃあ、それだけ魅力的な市場なのか、まあまあ魅力的なのか、魅力がないのか分かりませんけども、その市場にどれぐらいの敵がいるんですか?どんな脅威がそこに待ち受けているんですか?ということを見ていくツールなわけですよね。なので、平たく言うと、競合調査にあたるのがこのミクロ環境分析であると。
このマクロ環境分析は、実は一般開示されている情報が非常に多い。例えばシンクタンクが開示をしていたり、外資のコンサルファームが開示をしていたり、IMFとか、OECDとか、それからFBIのWorld Fact Bookとか、JETRO、こういったところを検索していくと意外にいろいろ出ていると。厄介なのが、すべてがそれぞれの基準値で数字を出しているので、基準値合わせを国で横串し刺してやっていくというのがちょっと大変なんですけど。そういうことをやろうと思うと、まあまあ社内の人間を使ってやるというのも1つですけども、外注に出してやってもらうというのも1つありなのかなというふうに思いますけども。基本的には社内でできるというのがマクロ環境分析。
一方で、ミクロ環境分析というのは競合の情報を収集してくると。これも自分たちのいわゆる前線にいる営業がとってこれるような競合の情報ではなくて、もっと深いところの情報なんですよね。なおかつ客観的な情報。自分たちの前線にいる営業がとってくる競合の情報ってやっぱりバイアスがかかっているので、それをいかに客観的に深くとってくるということがすごく重要で。これに関しては、残念ながら、もう完全に外注を使ってコストをかけるということをしていかないと、なかなか具体的な情報というのはとれてこないのかなと。
どんな市場なの?そこにはどんな敵が待ち受けているんですか?ということが、マクロ環境とミクロ環境で分かったときに、この2つの情報、ファクトをもとにSWOT分析するんですよね。じゃあ、そこに自分たちが参入したらどんなことが起こり得るのかと、起こりそうなのかということを分析していくと。
SWOT分析ってどうやって分析するんですか?ということに関しては、次のスライドをお願いします。もうこれはネットを叩いていたらいっぱい分かりやすいサイトが出てくるので、それを見てもらったらよろしいと思うんですけど、基本的には自分たちの「強み」「弱み」「機会」「脅威」をこの図の通りマトリクスにかけて分析をしていく。そして、「自分たちの強みを生かして機会をとらえる」「弱みを打ち消し脅威に備える」ということをやっていくのがこのSWOT分析なんですけども。こういうことをやっていく。そうすると、これは自分よがりのSWOT分析をやりがちなんだけども、すごく客観的にやっていくということが重要なので。自分たちでやるというのも当然ありなんですよ。ありなんですけども、客観的に社内の専門家にやらせるというのも1つこれポイントで、自分たちのSWOT分析と社外のSWOT分析を見比べて最終的に判断をしていくということも1つ方法としてはありますよと。
ここまでできると、そうそう「こんな分かりきった問題で失敗したのか」とかっていうことに陥らない。なおかつ国の優先順位も間違えないですよね。例えば、ASEANで、まだタイを攻略していないのにいきなりベトナムの市場へ行くとか、インドネシアの市場をやるとか、そういうわけの分からない海外展開をしてきている日系企業って結構今までたくさんいるわけなんですけども。そういう意味では攻めるべき優先順位が明確になる。初めての海外進出でインドとかね、何を考えているの?という話なので、、そういうわけの分からないことには陥らないですよね、ここまでしっかりやると。結果、ここに外注コスト、専門家に頼んで外注コストをかけたとしても、参入をして失敗したときの損失を考えたら、全然ペイできるんですよね。
ちょっと時間なんですけど、参考までにお話すると、欧米の先進的なグローバル企業と日本企業の調査に対するコスト意識の違いなんですけどね。欧米の先進的なグローバル企業というのは、こういうことをやるのって、もう正しいファクトを集めてこないと分析なんかできないじゃないですか。分析というのは、できるだけ正しくて深くてたくさんのインプット、情報を入れてないと、それを分析できない。分析ということ、分析結果がアウトプットだとすると、アウトプットを出すにはインプットを入れないといけない。そこに、餅は餅屋で外部の専門家を使うということは「投資」と彼らは捉えているですよね。一方で、日本の企業は、それを「費用」というふうに捉える、「経費」というふうに捉えてしまうので、なかなかやっぱりそこの予算が出にくいというのは、20年調査をやってきてすごく感じるところではあります。ただ、日本の中でもやっぱり海外展開をうまくやっているところは、もう調査予算は投資だと思ってバンバン出すし、その調査をやることに慣れていますね、調査慣れしているというのは1つやっぱりあるのかなというふうに思います。
今日も、すみません、私の話が長くなっちゃって、時間がオーバーしちゃいましたけども、「R」の説明に関してはこのぐらいにしたいと思います。
それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。