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第424回 【本の解説】導入期の戦略が違う その2

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、『グローバル・マーケティングの基本』 私が去年、日本実業出版社から出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は、前回の続きですね。2-5、86ページ、「導入期の戦略が違う」ということで、先進的な、欧米の先進的なグローバル企業、ここで言っている欧米の先進的なグローバル企業というのは、ネスレ、ユニリーバ、P&Gなんかを指していますけども、こういった企業と日本の消費財メーカーの導入期戦略が全然違いますよということでお話をしていきたいと思います。

スライドをお願いします。前回、1枚目のスライド、このスライドで導入期の戦略が全然違うんですと。問題は、導入期に伝統小売に手を付けないから…。TTと書いていますけど、Traditional Trade、下の赤字ですね、MTがModern Tradeなので。だから、成長期に入れないんですよと。導入期でTT(伝統小売)に手を付けなかったら、絶対に成長期には入りませんよと、そういう話を前回しました。

今日は2枚目のスライドをお願いします。そもそも近代小売と伝統小売の構造とか比率みたいなところをサッとおさらいをしていきたいと思うんですが…。近代小売ってModern Trade(MT)、デパート、ハイパー、スーパー、コンビニ、その他の近代的な小売で、要はぶっちゃけ、POSが入っているか、入っていないかですよね。われわれが慣れ親しんでいる近代的な小売を近代小売というふうに言っている。近代的小売というふうに書いていますけど、僕は面倒くさいので近代小売というふうに言ったり、MTと言ったりしていますけども。一方で、伝統的小売、伝統小売というのはTraditional Trade(TT)。国によってGTというふうに呼ぶケースもありますね。General Trade、これはいわゆる一般的な小売、昔ながらのパパママショップ。国よって、GT、伝統小売、TT側をGTと呼ぶケースがあるんです。人によってまれにね、MTをGTと呼ぶとか、中間的なところをGTと読んだりとか、ちょっと定義がいろいろあれなので、まあまあ、GT、TTが伝統で、MTが近代というふうに覚えてもらったらいいと思いますけども、そういうふうに呼びます。

じゃあ、それって、これはユーロモニターのベースのデータですけども、どれぐらいの比率なの?と、Modern Trade、近代小売と伝統小売って。これ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシアとかって、ASEANを見てもらうと、シンガポールなんかはね、もうほとんど近代小売って1,000店舗ぐらいしかないんですけど、あそこはもうそもそもFMCGの領域で言ったら1,000店舗ぐらいなんですけど、そもそも、ほぼほぼ日本と同じ近代小売が主流なので、ちょっと載せていませんけども。ベトナムなんかって言うと、13%しか近代小売がないんですよね。これは全部金額ベースです。市場、小売を通じて商品が販売される金額の総額のうち、13%が近代小売を経由していて、87%が伝統小売を経由しているという、こういう構造になっていて。中国ですらようやく62%でまだ伝統小売が38%残っているという、こういう状況なんですよね。中国の場合は、ここにオンラインの流通がガーッと入ってくるので、あれですけど。

じゃあ、一方でね、この4枚目のスライドを見て、ベトナムの13%って一体どれぐらいの店舗数なの?と見たときに、8,200店舗なんですよ、ベトナムの主要の近代小売って。一方で伝統小売って何店舗あるかと言うと、50万店以上ある、60万店ぐらいあると言われている。じゃあ、フィリピンは?と言うと、フィリピンは9,400店舗、タイで1万7,000…。フィリピンで9,400店舗で、フィリピンの伝統小売って80万店以上あると言われていますから、もう全然、伝統小売のほうが多いですよね。

一番近代小売が多い国がインドネシアの3万6,700店舗、多いじゃないかと。けどね、日本はセブンイレブン1社で2万店舗超えていますから、多いけどどうなの?と。2.5億の人口がいますよと。日本の2倍ぐらい人口がいる国で、日本はセブンイレブン1社で2万店、インドネシアは3万6,700店。ASEANの中では多いけど、相対的に見たら決してそんなに多くはない。そんな中でASEANというのは、ネットの流通は、FMCGの業界においてはまだまだやっぱり大きくないので、数%なので…。すみません。インドネシアの伝統小売というのは300万店以上存在するという、そういう市場なんですよね。

こんな市場で、結局、日本企業は近代小売で止まってしまう傾向が非常に強くて。言ったらね、伝統小売…。ちょっと戻しましょうかね。この2枚目のスライドに戻ってもらって。近代小売って、少ないんだけども、やっぱりやらないといけない。近代小売というのは、エントリーフィー、棚代、リスティングフィー、半強制的なプロモーションとか、いろんなややこしいお金が掛かるので、基本的に出すことにお金が掛かるんですよね。出すことにお金が掛かるので、下手すると近代小売が少ないと儲からない。1店舗でいっぱい売れるんだけども、やっぱりこれは店舗の数が物理的に何店舗以上ないと儲からないみたいなのがあるので、やっぱり本当に儲けなきゃいけないところ、儲けるところというのは伝統小売で。シェアの高い企業というのは必ず伝統小売を獲っていて。

でも、伝統小売のオーナーというのは、やっぱりこの写真の通り、狭い店先に売れ筋だけを置きたいので、近代小売で売れ筋になっているものしか置かないんですよね、基本的には。近代小売で10個入りで売っているものを1個にばらして売るというのが伝統小売のビジネスですから。実は近代小売と伝統小売、どっちが1個単価もしくはグラム単価高いかと言うと、伝統小売のほうが全然高いんですよ。でも、伝統小売というのは、今使いたい分だけを買えるということが最大の魅力で、例えば、頭痛がしました、40錠近代小売で売っています。ドラッグストアで売ってます。でも、今この頭痛を治したいだけなので、頭痛薬は2錠飲むから2錠しか要らない。残りの38錠はいつ使うか分からないものに今お金出したくないよというのが、これ新興国の人の本音なわけですよね。だから、ばら売りが多少高くても、38錠余計に買うよりもいいということで買うという、こういう構造になっているんですよね。

なので、ちょっと話が逸れましたけども、近代小売を先に獲るということは絶対と。ただ、近代小売が獲れたら同時並行的にすぐ伝統小売をやらないと、やっぱり近代小売だけじゃ儲からないので、息切れしてきちゃうんですよね。息切れしてきちゃう。そして、つらくなってきて、どんどん、どんどん、伝統小売が遠のいていくという、こういう傾向が1つある。

もう1つあるのが、多くの日本企業が、この伝統小売が実は時間とともに近代化していくんじゃないかという希望的観測を持っていて、間違った希望的観測を持っていて、これがなかなか伝統小売に腹を決めて本格的に参入することを邪魔をしているという傾向が非常に強くて、このことについて次回お話をしていきたいなというふうに思います。

それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。