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第425回 【本の解説】導入期の戦略が違う その3

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が去年出した本ですけども、この本の解説をしていきたいと思います。

今日も前回に引き続き、2-5、86ページからのところのお話です。今日で3回目ですかね。この章は、「導入期戦略が違う」ということで、結局、日本の消費財メーカーがなかなか導入期から成長期へ行けない、その大きな要因に、伝統小売に手をださないからだというお話をしました。

伝統小売に着手しないと、絶対に導入期から成長期にはいけませんというお話をする中で、日本企業の中には、大手の消費財メーカーの中には、「伝統小売というのは将来的に近代化されて近代小売になるので、今やらなくていいんじゃないの?」と、「将来、近代化してから手を出したほうがいいんじゃないのか、楽じゃないのか」という、こういう質問を結構受けるんですよね。この希望的観測というか、間違った認識が結構日本の伝統小売の着手の遅れに繋がっていると思っていて、そこが遅れると成長期に入れないので、結局マーケット争いになかなか入っていけないという。そして、どんどん、どんどん、シェアが開いていくという状態で。ユニ・チャームとか、味の素とか、伝統小売の比率が高い企業は、そんなことまったく考えてないですよね。伝統小売こそが主戦場であって、伝統小売をいかに攻略するかがアジア新興国、ASEAN市場の最大の肝であるというふうに彼らは捉えているからこそ、あれだけ伝統小売に積極的に投資をし続けてきているわけですよね。

そんな中で、なぜ伝統小売は近代小売にならないかと、私の仮説は、ならないというふうに思っているんですけども。確かに伝統小売の数は減っていくと思います。減っていくんですけども、そんなに急激に減らない。これは何かと言うと、なぜ日本では伝統小売が急に近代化するんじゃないかという考え方が結構年齢の上の方を中心にあるかと言うと、日本の小売の近代化とやっぱりオーバーラップしているんですよね。日本ってもともとは駄菓子屋みたいのがガーッといっぱいあって、そこにコンビニ形態が入ってきて、これが日本人と非常にマッチをして、本国を超える、世界で類を見ないようなコンビニ大国にぶわーっと成長していったという、そんな背景があって。なぜ日本の小売がこれだけ早く急激に近代化したのかというのは、実は小売が単体で近代化したんじゃなくて、日本は狭い国であると。ASEANより狭くないんだけども。何が一番のあれかと言うと、その他のインフラが同時並行的に北海道から沖縄まで津々浦々同じように近代化していったんですよね。高速道路が近代化していくとか、物流が近代化していく、小売に入るシステムが近代化していって早くから高度なシステムを取り入れていったし、それからガス・水道・電気なんていう基本的な生活インフラなんていうのは、日本のどこに行ったって近代化しているわけですよ、通信含めて。

じゃあ、ASEANを見てくださいと言ったときに、まだまだ地下鉄を掘っていたりとか、高速道路をつくっていたり、道路のインフラだってままならない。日本でASEANの首都に見るような、1日中車が動かないような渋滞なんて東京都内で起きますかって、絶対起きないんですよね。でも、タイを見てください。インドネシアを見てください。そこら中で渋滞していて、そんな中で物流どうするんですか。コールドチェーンなんてまだまだこれからの市場で、そういったものが近代化してないのに、小売だけが近代化するなんて絶対にあり得ないんですね。そうすると、日本で迎えたような急激な小売の近代化というのは、ASEANでは今現時点ではなかなか起こりにくい。

われわれもいろんなデータを見ています。各国の、ASEANの向こう5年10年の開発計画、政府の開発計画みたいなもので発表されているもの、いろいろ道路の開発計画とか、全部、都市の開発計画を見ているわけですよね。でも、どう考えたってあの当時の日本の近代化のスピードに比べたら、やっぱり部分的なんですよね。津々浦々じゃない。そう考えていくと、小売だけが単体で近代化なんてしないですから、いろんなインフラが近代化することによって、そこに乗ってる小売も一緒に近代化するという話なので、伝統小売が急激に近代小売になるなんていうことはない。少なくとも、この10年20年で伝統小売が一掃されてしまうなんていう世界は来ないというふうに思っていると。
じゃあ、この10年20年の間に伝統小売に何が起こるのかと言うと、僕が思うのは、これはデジタル武装が始まる。伝統小売のデジタル武装。この2年間のコロナ禍でもいろんなことがデジタル化していってるというのは皆さん肌で感じていると思いますけども。実は、コロナの前から伝統小売のデジタル化というのは始まっていて。伝統小売がデジタル武装すると、実はコンビニより便利なんですよね。だって、コンビニは100m、200mおきにある。でも、伝統小売って家を出たらすぐ目の前にあるんですよね。そして、キャッシュレスで買える。伝統小売のオーナーもスマホで注文して、グラブとかゴジェックのバイクで届く、商品がですね。代金は全部オンラインで決済される。これはディストリビューターにとっても、オンラインで決済できるということは、営業マンは今何をどうやって商品を届けて現金回収しているかと言うと、現金を受け取って商品を手渡しているんですよね、今、伝統小売って。そんな面倒くさいことをしなくてよくなる。だから、いろんな仕組みが変わっていくわけですよね。スマホにメーカーも直接店舗のオーナーに商品の案内を飛ばしたり、注文とかキャンペーン。デジタルで頼んでもらえれば、問屋だって割引できるし、メーカーだって割引できるんですね。そんなことはもうすでに始まっていたりする。何万店単位でデジタル武装した伝統小売ができてきている。

そうなったときに、コンビニとデジタル武装した伝統小売、どっちがいいですかと言うと、必ずしもコンビニじゃなくなる。コンビニもだんだん打ち止め感が出てきている、昨今、もしかしたらコンビニが問屋の機能を担うかもしれない。一旦トラックでコンビニへ配送されて、そこには冷蔵庫や冷凍庫があって、そこで保管されたものをオンラインで伝統小売のオーナーがスマホで頼んだのをゴジェックがピッキング、ピックアップに行って届けていくという、いわゆる人要らずの自動のディストリビューション、ディストリビューターになっていく可能性すら秘めていると僕は思っているので、伝統小売が近代小売になるなんていう単純な話ではなくて、伝統小売が、僕は、デジタル武装をして、それによってコンビニは問屋に業態が変わっていくんじゃないかと、そんな可能性すらあるんじゃないかというふうに思っているので。今、伝統小売に手をつけないと、デジタル武装したときに入っていっても、もう入れてくれないですよね。仮に伝統小売が近代化したときに、「さあ、僕たち、高付加価値の日本企業です。皆さんが近代化したので参入します」と言って入って、入れますかと、絶対に入れないので。今のうちから市民権を得るという、消費者に馴染みの商品になるということがやっぱりものすごく重要で。そうしないと、伝統小売が近代化するなんていう希望的観測は捨てるべきだというふうに僕は思っています。

ちょっと話が長くなっちゃいましたけども、この話はこれぐらいにして、また次回ちょっと最後、次回で最後にしたいなと思いますけど、この章はね、お話をしていきたいと思います。

それではまた皆さん、次回お会いいたしましょう。