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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 89 Q&A 近代小売への効率的な導入方法は?

今回も私がセミナーや、YouTube番組、Podcastなどでよく頂く質問についてお答えしていきたいと思います。

<質問>

消費財メーカーです。新規に参入する場合の近代小売(MT)への効率的な導入方法を教えてください。一気にやるべきなのか、それとも少しずつやるべきなのかで悩んでいます。

<回答>

結論から先に申し上げると、段階的な参入をお勧めします。理由は、いまだかつて、一気にやって成功した日系メーカーを見たことがないからです。欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは一気に入りますが、日系メーカーの場合、一気に進出するための戦略ができてないケースが多く、途中で息切れしてしまうのです。

参入方法としては、まず最初に、自社の商品が最も適している小売形態を決めることです。大きく分けて、スーパーマーケット系なのか、ドラッグストア系なのか、コンビニエンスストア系なのかです。

一気にメジャーな近代小売すべてに配荷を進めていくという方法もありますが、当然、導入のための費用がかかってきます。導入費さえ支払えば、 基本的には近代小売の棚に並べることは物理的に可能です。しかし、売れ なかった場合には数カ月で容赦なく棚から撤去され返品の山となります。

過去にそんな状態に陥った日系企業を何社か見ました。もちろん、導入費は返ってこないので、これは賭けに近いようなリスクの高いやり方です。さらに、一度売れずに棚落ちした商品やメーカーが、再び棚に戻るのは相 当な苦労がかかります。小売側も売れない商品を棚に置いておくことほど 無駄なことはありませんので、敗者復活戦は相当に大変です。従って、基 本的には、自分たちの商品が最も適している小売形態から始めるのが手堅 い方法です。

例えばコンビニ系を選んだ時には、上位3社のA社、B社、C社とある としたら、まず、A社ならA社を選び、ある一定期間そこに独占的に商品 を流通させるというのが一番いい方法です。この方法では配荷先がA社に限定されますが、その分、導入費をはじめとする初期にかかるコストが下がり、またA社側にも独占販売ができるというメリットがあるため取り扱 いが積極的になります。そして「A社で売れた」という実績を作ることが できれば、B社やC社との導入費交渉が非常に楽になるというメリットがあるのです。

また、例えば、A社のコンビニが国内に1万店舗あるとすれば、その中で、商品が最も売れそうな限られたエリアの数百、数千の店舗から始めて、そこで完全に軌道に乗ってから徐々に配荷する店舗数を増やしていき、1万店舗へ攻め上がるというステップを踏むのです。

こうすることで、数百、数千店舗の段階で問題点をあぶり出し、それらを調整しながら進められるので、リスクを最小限に抑えた展開が可能です。実績ができれば、先ほどお話ししたようにB社、C社との交渉が楽になるし、コンビニエンスストア上位3社へ配荷して実績を上げれば、今度は、ドラッグストアやスーパーマーケットとの交渉もしやすくなります。結果 として利益率が上がり、優れた投資対効果が得られるというわけです。