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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 88 Q&A ディストリビューターとの上手な付き合い方とは?

今回も私がセミナーや、YouTube番組、Podcastなどでよく頂く質問についてお答えしていきたいと思います。

<質問>

消費財メーカーです。売上を拡大するためにディストリビューターに色々と 施策の提案をしていますが、なかなかそれをやろうという流れになりません。 基本、任せて口を出すなというスタンスのようです。しかし、それでは現状 から大きく売上を拡大させることができないと考えています。どうすればデ ィストリビューターは、動いてくれるのでしょうか。

<回答>

これはメーカーと、ディストリビューターの関係が逆転しているパターンですね。日本の消費財メーカーとアジア新興国のディストリビューターの間では、ありがちな関係です。おそらく、過去、長きにわたりすべてをディストリビューターに任せっきりにしてきたのではないでしょうか? そして、近年、急に、ああだこうだと口を出すようになったのではないでしょうか?

急にあれこれ言っても、ディストリビューターは聞き入れてくれません。仮に、そこそこの金額を売ってもらっているのだとすると、なおさらです。ディストリビューターとの力関係の構築は、最初が重要なのです。もっと言うと、契約交渉の段階から始まっています。その時点から、互いの戦略をしっかりと擦り合わせ、常にコミュニケーションを取っていかないと、ディストリビューターはなかなか言うことを聞きません。

ただ、このケースでは、すでにその状態になってしまっているので、こういった場合は、時間をかけて少しずつ変えていくしかありません。

現状で、売上が大した数字でないのであれば、躊躇せずに新たなディストリビューターに変えるのも1つの選択肢かもしれません。しかし、多くの場合、そこそこ数字があるので、変えるにもリスクだし、言ったとおりに動いてくれないし、と悩まれているケースが大半だと思います。

まず、理解しなければならないのは、ディストリビューターにとってのスイートスポットの存在です。

これは要するに、ディストリビューターの利益が最も安定し、利益率が高い状態を指します。その状態にいるディストリビューターは、そこからさらに経営資源を投下し、売上を上げ、利益を上げるという次のステージに動こうとしません。これは考えてみれば、ディストリビューターの立場としては当たり前です。

また別の例としては、現状のエリアは他のメーカーの商品を同様に配荷しており、それ以外のエリアへ販路を広げると、広げた後は売上も利益も上がることはわかっていても、広げるまでにある程度の時間と投資が必要なのでなかなか腰が上がらないといったケースです。このように、メーカーとディストリビューターでは、時として利益やメリットにコンフリクトが起こります。従って、そのコンフリクトを克服すべく、相手の状況を理解し、それを改善するような提案をしていかなければなりません。そうした提案と実績の積み重ねが、メーカーとディストリビューターのパワーバランスを変えていくのです。