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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 87 Q&A 良いディストリビューターを選ぶポイントとは?

今回も私がセミナーや、YouTube番組、Podcastなどでよく頂く質問についてお答えしていきたいと思います。

<質問>

消費財メーカーです。ディストリビューターはどのように選定すべきでしょうか? いいディストリビューターを選ぶポイントを教えてください。

<回答>

ディストリビューターを選ぶ際にまず必要なのは、ディストリビューターにどこまでの機能を求めるのかを明らかにすることです。輸入機能は必要か。配送さえできればいいのか。セールスやマーチャンダイジングまで必要なのか。はたまた、プロモーションまで担ってほしいのか、などです。大前提として、こちらが求める機能を持たない会社と契約しても意味がありません。

次に、自社のターゲットとする小売やエリアを得意としているかどうかについても考える必要があります。近代小売(MT)と伝統小売(TT) のどちらに強いほうがいいのか。それとも、その両方を求めるのか。近代 小売であれば、具体的にどのタイプの小売と強い取引ができるのか。伝統小売であれば、都市部、地方部、どのエリアに強いのかなど、自社がターゲットとする小売やエリアを得意としているかを基準に選びます。

また、もう1つ重要なのは、常に競合他社のディストリビューターと比較してどうなのかという観点です。自分たちがその国に進出するということは、競合との戦いを始めるということです。相手よりも販売チャネルが弱ければ、その差はどんどん開いてしまいます。すでに現地に根付いている競合のチャネルの能力が100だとしたら、自分たちもそれに近い能力を持たなければ勝負にはなりません。だからこそ、販売チャネルの大きな要素を占めるディストリビューターが競合と比べてどうなのかを見極めることは大変重要なのです。

このように、「ディストリビューターに求める機能」「ディストリビューターの得意なターゲット」、そして「競合のディストリビューターとの比較」という3点の基準を明確にしてから、ディストリビューターを探すプロセ スに移ることが大切です。これを明確にしないまま、「他の日系大手企業 が使っているから」とか、「日本語が堪能で社長の人柄も良さそうだから」
「取引のある金融機関に紹介されたから」などといった理由でディストリビューターを選んでいては、強いチャネルはなかなか作れません。この3点の基準が明確になってはじめて、ディストリビューターの選定プロセスを始めることができるのです。

では、次に、ディストリビューターの選定プロセスについてお話をしま す。これは、でお話ししたように、対象としている国の、対象としている産業のすべてのディストリビューターを網羅的にリストアップしていくということです。そして、すべてのディストリビューターを絶対評価で絞り込んでいきます。このようにして残った数社について、今度は「どちらがいいか」という 相対比較で選んでいきます。ここでは規模が大きくて、自分たちの取り扱っている商品に強いディストリビューターがいいと考えがちですが、「スキルセット」と「マインドセット」を整理し、比較することが有効です。特に、スキルセット以上にマインドセットが重要であることはすでに述べました。完全なるワンマン企業がほとんどである新興国のディストリビューターは、社長が右と言ったら右に進むのが当然という世界で、社長の気持ちが自分たちの商品に向いていなければ、どんなに優秀なスキルセットを持っていても、ビジネスは前に進みません。

ディストリビューターの選定は、まずは自分たちが必要としている機能を明確にする。その上で、ディストリビューターを網羅的にリストアップし、絶対評価と相対評価で絞り込んでいく。その際、最低限のスキルセットを満たしているのなら、最後は、マインドセットを重視して選定するのが最も正しいディストリビューターの選定方法です。