(東さん)
こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
(森辺さん)
こんにちは。森辺一樹です。
(東さん)
引き続き、上海からお送りしたいと思います。
森辺さんはよくチャネルをデザイン、マネジメント、コミュニケーションをすると言われますが、小売の現場へ行くと、広大な中国ではデザインをどうすれば良いのか分からないと日本の企業は悩んでいると感じるのですが、前回の直販の話と合わせて、どうお考えですか?
(森辺さん)
一般的によく言われているのが、中国は広いので、自分たちがどのエリアから攻めていくのかを決めなければいけません。
そしてそこを攻めるためのチャネルをデザインするということをしなければ、いきなり中国全体でデザインしても、なかなか一気に進まないはずです。
エリアベースでデザインするのも、小売ベースでデザインするのも同じで、小売によっては本部が河南にある場合もあれば、北京や上海にも小売はありますので、自分たちがどのエリアから攻めていくべきなのかを最初に決めなくてはいけません。
(東さん)
まず決める時に、小売ベースなのか、地域ベースなのか、大きく分けてこの2つになるわけですね。
(森辺さん)
はい。
なぜ一気には無理かと言うと、小売は店(たな)貸し屋さんなのでイニシャルで必ずコストが掛かります。
(東さん)
店貸しや不動産屋さんをどういった意味合いで仰っているのか教えて頂いて宜しいですか?。
(森辺さん)
リスティングフィーとも言われますが、その小売に商品のバーコード登録をしてもらうためにリスティングをするのでそのフィーが掛かります。
店を取るのに1SKU当たりいくら掛かります、置いても売れない可能性があるのでセールスの女の子を最低週に3日店頭に置いてください、それには一日いくら掛かります。店が出しているチラシに載せるといくら掛かります、など小売のメニューがあります。
一般的に考えるとメーカーから商品を仕入れて、自分達の店頭で売るというのが本来のリテーリング・ビジネスですが、中国の場合、小売は箱を作って、そこに店を整えてその店を貸すというビジネスになっているので、たくさん店を借りたいのであればその分お金が掛かります。
そして売れなければ全部撤去されてしまうので、全ての小売りを一気に全土でやろうと思ったらとてつもないお金が掛かる訳です。
そのため自分達にとって最もRIの高いエリア、RIの高い小売りから選んでそこから始める。
小売のフィーも交渉次第でいくらでも下がるので限界まで下げ、そこで成功事例を作ると「あの小売店が扱っているおたくの商品を使いたい」と別の小売から声が掛かります。
そうなった時に初めてこちらが有利に立つことができます。
そうなれば、うちの商品を使いのであればこういう条件だと言えるので、まずは絞ってから始めなければ、一気に全土となると現実的にはお金が掛かって出来ません。
(東さん)
どこから始めるかが重要という事ですね。
日本の企業は実際の直販ができていない、片や外資系の企業はできていると言っても、店代は高いし、交渉も大変そうなので、ディストリビューターに任せておいた方が良いという考えにもなりそうだと聞いていて思いましたが、そこはどうなのでしょうか。
(森辺さん)
現地法人があっても、中国人の社員がいて、小売に直接交渉しないのであれば何のための現地法人なのか分かりません。
ただの管理会社になってしまいます。
確かに交渉は大変ですし、日本人がそんな所で出ずばっていても何も本音の話は出てきません。
うちの場合中国の従業員が初めて新しい小売に接触したら、そこからあの手この手で仲良くなり、Eチャットを交換し、プライベートの相談まで受け関係を築きます。
時には香港や、日本に招待したりと、そんな泥臭い事をする訳です。
ですが、何百万とする店代が下がり、店割りも少しひいきしてもらえます。
そしてバイヤーさんがその会社や商品に力を入れてくれないと、商品なんて伸びませんし、長い目で見てもらえません。
つまりそういった事を自分たちでやらなければ、儲かっている代理商ほど自分たちの売り上げにとって貢献度が高い商品に力を入れ、新しい商品にあまり力を割かないので、圧倒的な商品力がない限り、なかなか伸びていきません。
結局、代理商にお金を払って、そのお金が何に使われているのかもよく分からず、どこまでプロモーションされているのかも不明確です。
ならば自分たちでやった方が透明性が高いと私は思います。
その苦労を乗り越えないから、突き抜けないのだと思います。
東さんもご存知だと思いますが、小売のバイヤーは最初とても態度が大きいですよね。
若い30代前半のお兄さんが「おうっ!来たの」みたいな。
3時間待たされ、やっと会えたと思ったら、20分で終わることもありますが、そこから積み上げていくものです。
ASEANでの小売のバイヤーもそうです。
私も腹が立つので、小売のバイヤーは嫌いですが、そこから仲良くなっていくと、結構いい奴だな、そりゃ世界中から商品を持ち込まれて、いちいち面倒くさいよな、自分ももしバイヤーだったら、そうなってしまうなと思ったりもします。
そういう中国人を社内で育てる、もしくは外から引っ張ってきて、彼等に委ねていかないとなかなか難しいです。
(東さん)
そのように直販を試みた展開をしていくというのが、一つの突破口になるということでしょうか。
(森辺さん)
日本企業も代理商を使うことは、悪いことではありません。
戦略的に代理商を使った方がこういう理由で効率が良いから、RIが高いからということであれば使って頂いて良いと思います。
ただただ、よく分からないし、面倒くさいから代理商に頼む。
よくあるのが同業種と提携して、その会社の販路を活用できる、というすごく安易な戦略を組んでなかなか売り上げが思うように進まない事はたくさんあります。
自分達でやってみてダメだと実感することも一つの学びですし、日系企業で直販をやっている所は本当に少ないのでそれはとても残念です。
やってもいないのに駄目と決めつけてしまう。
(東さん)
逆にチャンスでもあるということですね。
(森辺さん)
非常にチャンスだと思います。
消費材のメーカーさんで小売に直販して来る業者さんはいません。
今は韓国や台湾は来るが、日系は来ないと言われているので「お前等はすごいい。日系では会った事がない。お前はこのバイヤー商談ルームに入った初めての日本人だ」と言われたりもします。
そういう意味でもすごくチャンスだと思います。
(東さん)
分かりました。
今日は時間が来ましたのでここまでにしたいと思います。
森辺さんありがとうございました。
(森辺さん)
ありがとうございました。
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それではまた次回お目に掛かりましょう。
「森辺一樹のグローバルマーケティング」この番組はspyderグループよりお送り致しました。