コラム・対談 Columns
グローバルの流儀 フジサンケイビジネスアイ紙 特別対談シリーズ『グローバルの流儀』は、弊社代表の森辺がグローバルで活躍する企業の経営トップにインタビューし、その企業のグローバル市場における成功の原動力がどこにあるのか、主要な成功要因(KSF)は何かなど、その企業の魅力に迫る企画です。本企画は2015年にスタートし、今年で9年目を迎えます。インタビュー記事は、新聞及び、ネットに掲載されています。
Vol.5 覚悟を持って中長期的に海外事業に取り組む
ハウス食品グループ本社株式会社 専務取締役 経営企画部担当 国際事業本部担当 広浦 康勝 氏森辺: 広浦さん、1つだけ以前からお聞きしたいことがありましたのでぜひこの機会にお聞かせください。 アメリカでは豆腐事業を、中国ではカレーを人民食という形で根気強く展開されていますが、 ハウス食品の海外事業における信念と根気強さが軸となっていて、これは御社のDNAであり、海外事業における強みだと考えますがいかがでしょうか?
広浦: やはり食文化を作っていくという我々の取り組みですので、短期的な覚悟では出られないということです。 会社として覚悟をして、意思決定しなければならないと考えております。 中国展開も当然我々の覚悟として食文化を作っていくわけですから、やはり時間も長くかかるしそれなりの苦労もあります。 それでもやはりマーケットとして中国は大きいですし、海外の全体戦略からしても無視できない重要なエリアです。 いろいろと問題はありますけれどそれを乗り越えていく企業が多分、中国で認めていただける企業になっていくのではないかなと理解しています。
それと、ハウス食品の理念の理解ですが、創業の精神でもありましたようにファミリーのイメージであるとか、 特に親がお子さんの成長を思う気持ちであるとか、家庭を大切にしていく、 そういったことに対して我々は食を通じてどれだけ貢献できるのかどうかが、ハウス食品の企業の理念なのです。
森辺: とてもよく分かります。 やはり経営としての覚悟、中長期の投資になるぞという意思がはっきり設定されているということでしょうか?
広浦: 海外事業を展開していくときに常に何を重視するのかを確認します。 大きな項目の1つに『リーダーシップ、やりきる力』があります。 これを生むもっとも重要な要素は、覚悟を持って取り組むこと、それと会社の覚悟なのです。
森辺: 素晴らしいですね。 覚悟という意味では、チャネル構築も相当な覚悟を持って取り組むべき課題だと考えますが、 御社はチャネル構築についてどのようにお考えですか?
広浦: チャネル構築のポイントというのですか、大きなこだわりは『顧客が見える』かどうかというところです。 やはりお客様が我々から見えないなかで販売して頂いているだけというのでは、長期的に見てメーカーとして1つの課題になってくるのではないか。 いかに顧客が見えるチャネルを構築できるかどうかが、非常に重要であると考えます。
森辺: 顧客の見えるチャネル構築は素晴らしい言葉ですね。
最後に御社の今後の海外事業の展開についてお聞かせください。
広浦: はい。海外売上比率が20%、利益で30%が目指す姿として、これはグループとして確認している数字です。
ゲスト
広浦 康勝 (ひろうら やすかつ) 氏
ハウス食品グループ本社株式会社 専務取締役 経営企画部担当 国際事業本部担当
Yasukatsu Hiroura, HOUSE FOODS GROUP
昭和30年和歌山県生まれ。53年ハウス食品(株)入社。生産部門(工場、生産統轄室)を経て、平成5年マーケティング部門へ異動。平成14年、調味食品部長、平成16年執行役員、平成18年取締役マーケティング本部長。平成22年取締役専務執行役員マーケティング本部長兼ソマテックセンター・品質保証部担当。
インタビュアー
森辺 一樹(もりべ かずき)
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 特任講師
Kazuki Moribe, SPYDER INITIATIVE
1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。大手を中心に17年で1,000社以上の新興国展開の支援実績を持つ。著書に、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』中経出版[KADOKAWA])、『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』白桃書房)などがある。