コラム・対談 Columns
本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。
Vol. 45 インプットがないと戦略アウトプットは出せない
著者:森辺 一樹
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長
革新的な戦略のコアは、インプットの質と量による
「インプットができないと戦略アウトプットは出せない」とは一体どういうことなのでしょうか。前回、参入戦略の策定には情報が必要であると申し上げました。具体的には、「市場環境」「競争環境」「流通環境」「消費者」「ディストリビューター」と5項目の情報が必要です。これらがまさにインプットなのです。 これらの情報というインプットがないのに参入戦略というアウトプット など絶対に策定できないのです。情報というインプットが少ないと、戦略というアウトプットも必然的に弱くなります。逆に、情報インプットが多ければ、戦略アウトプットも必然的に強くなるのです。インプットが弱いのに、アウトプットが強いなどということは基本的には起こらないのです。インプットとアウトプットはある程度の割合で比例 するものです。
多くの日本企業は、アジア新興国市場において、この情報というインプットから、戦略をアプトプットすることが得意ではありません。これまで、圧倒的な製品の優位性と、アジア新興国をマーケットとしなくとも世界第2位の経済規模を誇った日本という大きな市場に守られてきたため、アジア新興国市場において戦略をアウトプットする必要性や、そのために情報をインプットする必要性に直面したことがないのです。欧米では、情報は最も重要な価値であり、その価値を得るのに対価を払う商習慣が普通に存在するのに対して、日本では、情報は重要だとしながらも、情報は無料で手に入るものという感覚の人は少なくありません。欧米の先進的なグローバル企業が、情報収集などの調査を「投資」と分 類するのに対して、日本企業では「コスト」と分類するのがこれを裏付けています。
まずは多くの情報をインプットする
最近では、特にB2C企業は、戦略を立てるために情報が重要だということを理解し、積極的にこれら産業系調査を外注するようにはなっていますが、B2B の企業では、大手でも事業部や部門によってはまだ情報というインプットの重要性が理解できていない企業も少なくありません。これから日本企業がさらにアジア新興国市場で活躍するためには、より一層、質の高い情報を大量にインプットし、競合よりも強い戦略をアウトプットしていく必要があるのです。長年多くの進出企業を見てきていますが、実際にうまくいかない企業や、改善が見られない企業は圧倒的にインプットが少ないのです。現場の人間 は実際に現地にいるので、情報の重要性に気がついているのですが、上層 部が調査より根性的な傾向が強く、無駄な調査予算を使うぐらいなら、お前が行って調べてこいとなるのです。これらの企業に具体的な情報を見せると、初めてその重要性に気がつき ます。例えば、競争環境に関して、活用するディストリビューターの数と質を見せただけでも、いかに自社が劣っているかが明確になります。問題点が明確になれば、次はそれを改善しようとなるので、みるみる成果が上がっていくのです。まず大事なのは、多くの情報をインプットすることなのです。