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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 62 オフィス・倉庫から見るディストリビューターの特徴

著者:森辺 一樹

ディストリビューターの規模は倉庫でわかる

ここで規模別にディストリビューターの機能の違いを紹介いたします。
まず、ディストリビューターが持つ代表的な機能、以前この連載でも解説したような5つの機能の有無は、ディストリビューターの規模に直結します。規模が大きなディストリビューターは、強いセールス機能やデリバリー力に合わせ、マーチャンダイジング機能、プロモーション機能(BTL 中心の場合が多い)を保有している傾向が強いです。
中には、パッケージングの機能や、ボトリング、半製造業的な機能まで有しているところもあります。
逆に、規模が小さければ、基本的にはセールスとデリバリー機能のみで、その対応エリアや対応小売も地域密着度が高く限定的になります。ディス トリビューターを見る際に最も重要となるのはやはり倉庫です。
オフィスは、日中に行ってもセールスや営業車、配送車などは出払っているので、広さや席数からなんとなくの規模はわかっても詳しい情報を取るのは難しいものです。
しかし、倉庫を見れば大概のことはわかります。どのような商品を取り扱っているのか。何が売れているのか。主力商品はなんなのか。どのよう に管理しているのか。どれぐらいの量の商品があり、どれぐらいの規模のビジネスをしているのかなど、重要な指標はほぼ把握できます。
大規模なディストリビューターは、オフィス棟が3階建などで見るからに規模が大きいのがわかります。そして、倉庫も大きく、置いてある物量でおおよその規模が想定できます。
一方で、小規模なディストリビューターでは、事務所棟などはなく、小さな倉庫に仕切りをして事務所スペースになっているケースが大半です。

大規模ディストリビューターの売上は、取り扱っているモノにもよりますが、おおよそ数十億円前半から数百億円前半です。ASEANなどの地域では、特に米P&Gが好んで活用しているクラスです。彼らはこれら大規模から中規模のディストリビューターを1カ国で8社程度活用する傾向が あります。
一方で、小規模のほうは売上数億円規模です。セールス機能は持ち合わせていません。基本的に周辺地域の既存店に配達するデリバリー機能のみ です。これらは英蘭ユニリーバや瑞ネスレなどが好んで活用しています。彼らは、こうした小規模のディストリビューターをエリアごとに、1カ国 150〜200社程度活用しています。

大規模ディストリビューターのオフィス

次にオフィスの中を見てみましょう。
大規模なディストリビューターで高いパフォーマンスを発揮している企業は、いくつかの特徴があります。まず1つは、プリンシパルである欧米系の先進グローバル消費財メーカーの担当者の部屋があったりします。メーカーの担当者は、基本、毎朝このディストリビューターに出勤し、相手先の担当マネージャーと共に日々の売上管理や週間目標の管理をしています。
このように一緒に活動することでディストリビューターの管理と育成を行っているのです。場合によっては、セールス担当者にGPSを持たせている企業もあります。もちろん、監視するという意味合いもありますが、高いパファーマンスを出す人は往々にして行動プロセスが効率的であるため、そのプロセスを分析して社内にシェアし、パフォーマンスが低いセールスの参考にするのです。

次に、オフィスには担当者別の目標に対する進捗表が貼り出されています。セールススタッフは自身のスマートフォンにデータを打ち込んで仕事を進めます。
先進的なディストリビューターは、セールスにエクセルをいじらせることはしません。すべてスマートフォンの専用アプリへの単純な入力です。セールスにセールス以外の仕事を極力させないことがポイントです。アジア新興国では、特にこのことは重要です。なぜなら、日本人のように様々なことへの対応力や忍耐力、手間や労力への対応力、さらにサービス残業的な概念があまりないからです。

小規模ディストリビューターのオフィス

次に、小規模なディストリビューターを見ていきましょう。小規模のディストリビューターは、夫婦で切り盛りしているケースが少 なくありません。奥さんが経理や契約ごとなどの事務的な仕事をこなし、旦那さんがデリバリーをこなします。
一応、旦那さんが社長で奥さんが副社長ですが、実質的には奥さんが会 社を回していることも少なくありません。アジアの女性は優秀で、特にベトナムやフィリピンは女性のほうがしっかりしていて、ディストリビューターにも女性社長が少なくないのです。
小規模ディストリビューターは、先にも説明した通り、主にデリバリーが業務です。小さな雑然とした倉庫に数種類の商品が積み上げられており配送だけを行っています。
これらの小規模なディストリビューターはあまり多くの種類の商品を取り扱っていません。メインの商品を数点です。オフィスには、数名の社員がおり、主に伝票などの管理業務をしています。
メーカーから決められたエリアの決められた伝統小売(TT)にしっかりデリバリーすることが彼らの業務です。このようなディストリビューターを伝統小売市場への販売チャネルとして、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは、100社も200社も活用して、市場の隅々まで商品を行き渡らせるのです。