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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 65 会社概要ではなく「戦略」を語る

著者:森辺 一樹

日本での実績よりも「現地での戦略」を語れ

前項で、ディストリビューターは何より日本企業の「戦略」を見ていると述べました。これは小売店についても同じことです。
いくら日本で成功しているメーカーであっても、ディストリビューターや小売店からは、「日本企業が軽い気持ちで来て、ダメだったらすぐ撤退するんだろう」と、最初は冷ややかな目で見られていると思っておいたほうがいいでしょう。
多くの日本企業は、とにかく「自分たちの会社は日本ではとても大きい」「従業員が何千人いる」「100年近い歴史がある」「日本での売上は何千億円 です」「弊社の商品は品質が高い」「日本ではシェアが高い」と、自分たちの会社概要と日本での実績を語ります。
最も重要な、何のために異国であるその国に来て、何を実現したいのか。それはどのような方法で実現しようとしており、ディストリビューターには何を担ってほしいのか。そして、将来的にその国でどのような世界観を描こうとしており、双方にどのようなメリットがあるのか、つまりはビジョンと戦略を語りません。
相手にとって、日本では大きな会社だとか、シェアが高いとか、品質が良いとか、そんなことはすでに知っているのです。
それよりも自社のビジョンと戦略を、「こんなことをあなたたちと一緒に実現したいんだ!」ということをディストリビューターや小売店に話すことが重要なのです。

戦略があるだけで態度が変わる

ある大手化粧品メーカーでは、ディストリビューターを訪問する際に、事前に策定した販売戦略を持って訪問しました。
するとディストリビューターがその化粧品メーカーを見る目がまったく変わりました。一般的な日本企業のスタンスは、何を実現したいかはありますが、それをどう実現するのか、つまりは戦略を持たずに訪問するケースが大半です。そのため、その化粧品メーカーを見る目は、まるで欧米の先進グローバル企業を相手するような目に変わり、態度も真剣そのものになりました。
こうして始まった関係は、その後も歯車がガッチリと合い、メーカーと ディストリビューターとしての良い関係を維持し続けています。売上も対 目標値で毎年110%以上の達成を実現しています。