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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 66 強固な販売チャネルに必要な3つのこと

著者:森辺 一樹

チャネル作りは「発掘選定」「契約交渉」「管理育成」

過去にこの連載で強固なチャネルを作る3原則に関して説明しました。この3原則が概念であるならば、ここでは各論である方法論について解説します。強固なチャネル作りは、「発掘選定」と「契約交渉」と「管理育成」の3つで決まると言っても過言ではありません。それぞれを詳しく見ていきましょう。
まず「発掘選定」とは、数ある選択肢からディストリビューターを発掘し選定することです。選定方法に関しては、過去にこの連載で解説しましたのでここでは改めて説明はしませんが、どんな相手を選んだかによって、その成果は天と地ほどの差が出ます。当たり前ですが、良い相手を選べば、当然成功確率は上がります。
一方で、ダメな相手とは何年やってもダメです。それどころか、一度ダメな相 手と組んでしまったら、3年は引きずられます。というのは、仮にディストリビューターとの契約が1年ごとの契約更新になっていても、「初年度は様子見だから」となり、次年度は、「去年よりは進歩したし、来年は絶対やれると言ってい るし」となり、結局3年くらいは引きずられます。
なので、ディストリビ ューターの選定は、多少、時間とお金と労力がかかっても、成功の確率を上げるために、先に解説した「絶対評価」と「相対評価」の絞り込みでしっかりと選定する必要があるのです。

次の「契約交渉」とは、契約締結後に、どのようなプロセスで、どのような売上を実現するのかを交渉し契約することです。これは、ディストリビューターとの契約内容はもちろんのこと、契約までにどれだけ共通の目標と、その達成に向けた方法論を可能な限り具体的に数値化して、互いがその達成をしっかりと認識した上で契約できるか、ということです。

日本企業の場合、守備は万全なので、防御力の高い基本契約だけを非独占で契約し、その後のことは契約後に少しずつ詰めていきましょう、で進むケースが少なくありません。従って、攻撃側、つまりはいくらの売上を目指すのか、どのように進めるのかが緩いまま走るのです。
しかし、ある程度しっかり「発掘選定」したディストリビューターは、まったくダメではなく、それなりの成果は出してきます。だからかえって関係が切れずにズルズル不完全燃焼で続いていくのです。重要なのは、契約締結までに、完全に目標の目線を合わせて、その方法論をディストリビューター任せではなく、可能な限り一緒に具体的し、KP(I重要業績評価指標) を設定することす。その両社の約束事が契約書の攻めの部分に反映されることが重要で、防御部分の契約ならだれでもできるのです。

しかし、実は、ここまでの「発掘選定」と「契約交渉」を最大限やっても、成功確率は60%から70%程度にしかなりません。最も重要なのは、その後の「管理育成」なのです。「管理育成」とは、ディストリビューターの管理育成を指しています。 契約までに決めた目標数値や、方法論、なによりKPI がデイリー、ウィークリー、マンスリーでしっかりクリアされているかを管理しなければなりません。

よくある失敗パターンとして、決めるだけ決めて契約し、その後の管理ができずに結局、通期でフタを開けたら決めたことがまったくできていな かったというケースです。これをなくすためには、とにかくKPIの管理です。そして、想定を下回った場合に、想定値が達成できない場合に、なぜ 達成できないのか。どうしたら達成できるのかを一緒に考える。彼らが達成できるための英知を注ぐことこそがメーカーがやるべき育成なのです。この「管理育成」までの3点が一気通貫できてはじめて、60%から70%の確率が100%に近くなるのです。
ある日用品メーカーは、かつては大手を中心としたディストリビューターを選んで後はお任せにしていたのですが、数年前から実際にこの「発掘選定」と「契約交渉」に力を入れてディストリビューターを決め、決めたあともしっかりと「管理育成」に努めた結果、ここ数年で海外売上が1.5倍になっています。