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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 82 Q&A 伸び悩む海外売上を改善させたい

著者:森辺 一樹

今回も私がセミナーや、YouTube番組、Podcastなどでよく頂く質問についてお答えしていきたいと思います。

<質問>

菓子メーカーです。早い国だと30年ほど前から、国内の商社や問屋を活用し、また一部の国では現地のディストリビューターと直接取引をし、海外販売を行っています。ただ、ここ10年の傾向を見ると、一応は伸びてはいますが、成長が伸び悩んでいるように感じます。この伸び悩みを改善し、海外売上を拡大したいのですが、どうすればよいでしょうか?

<回答>

結論から先に申し上げると、通常の輸出ビジネスからチャネルビジネスへの転換ができていないからです。通常の輸出ビジネスとは、港から港のビジネスです。自分たちの商品が輸出されたらそこで終わりです。自分たちの商品が、どのような中間流通を通じ、どのような小売に、どのように並べられ、どのような消費者がそれを手に取り買って、リピート購入しているのかをほとんど感知しない、もしくは感知できないビジネスを指します。一方で、チャネルビジネスとは、自分たちの商品が、どのような中間流通を通じ、どのような小売に、どのように並べられ、どのような消費者がそれを手に取り買って、リピート購入しているのかどうかをしっかりと把握し、問題が生じれば即座に対策を打てるビジネスを指します。

日本国内の市場では、当然後者の取り組みを行っていますが、こと海外となると、前者になりがちです。まず、国内の商社や問屋を使っていたのでは、中国やASEAN の主要な小売の主要な棚にしっかりと商品が置かれるようになることは難しいでしょう。基本的には日系の小売か、日系の匂いのする小売などが限界です。現地の主要な小売に置かれても、メインの棚には置かれず、輸入品棚にしか置かれません。これでは、買いに来る消費者は日本人の駐在員か外国人、もしくは一部の日本フリークの人たちに限られます。なぜこのような状態になるのかというと、日本の問屋も単に輸出ビジネスをしているだけだからです。彼らは引き合いのある海外のインポーター(輸入業者)に販売しているだけで、相手国の港に自社の商品が到着した後、それがどのディストリビューターを通じ、どの小売に販売されているかなどは明確に把握していません。

また、少し販売のステージが進んでいる国では、自社で探した現地のディストリビューターと直接取引をしているが伸びない、といったものだと思うのですが、これも根本は同じです。単に輸出しているだけだからです。自社が商社や問屋に変わって輸出はするが、その後のことは基本的にディストリビューターにお任せになっているのです。自社の商品がどのような中間流通を通じて、どのような小売に、どのように陳列されているかを理解していないのは、問題が何かがわからないということですので、その状態で売上やシェアが伸びるわけがありません。メーカーの年に数回の現地出張では、ディストリビューターが見せたい小売だけを見せられ、問題のある小売に連れて行かれることはないので、本当のボトルネックは表面化しにくいのです。

リスティング・フィーだ、プロモーションだと、詳細が不明な費用だけを要求されるケースも少なくありません。何か意見を言えば、「現地のことは我々が最も理解をしているので任せておけ」の一点張りなケースもあります。最後は、売上が伸び悩む理由は、円高と景気のせいだと言い訳をする。長年、輸出ビジネスだけをしてきたメーカーの場合、市場の実態をあまり理解していないので、どうすることもできずにただ頭を悩ますだけの状態が長く続きます。こうなったらディストリビューターを変えるにも変えられず、非常に無駄な時間が流れます。

初めはどの企業も「輸出」から始まります。「輸出」というビジネスモデルを否定しているのではありません。ただ、重要なのは輸出型輸出ビジネスではなく、輸出型チャネルビジネスに移行していくことなのです。