森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。前回、前々回とインプットの重要性、調査の重要性みたいなお話をさせていただいて、今日は調査の中でも具体的にどういう種類の調査があって、どんなことをやっているの?みたいな話を少しかみ砕いてお話をしようかなというふうに思っています。実際に僕のところに依頼をされるような調査がどういうものが多いのかという、そんなお話をしていけたらいいかなというふうに思っています。
まず1つ目が、競合ベンチマーク調査がやっぱり非常に多いんですよね。これは競合調査をしてくださいというかたちで競合調査の依頼が来るのではなくて、私のところに相談に来るのは9割方もうすでに進出をしている企業、海外展開をしている企業、9割5分ですよね、している、アジア新興国市場にはもう出ていますよ、何十年も前から出ていますよと。そんな中で、もう出ていて、うまくいっていない、もしくは成長が鈍化しているので、どういうふうに勝ち筋を見い出していけばいいのか、シェアを上げていけばいいのか、成長のスピードを上げていけばいいのか、ということをご相談に来られるケース。それから、海外はもういろんな国に出ているんだけども、この新興国は初めてですということで、どういうふうに出ていけばいいでしょうかと。出ていくだけではなくて、輸出の場合もあるので、どういうふうに攻めればいいかという、どうやって売るかというのがもう100%、僕のところに来る依頼はどうやって売るかということがすべてですと。
その中で、結局1人で市場で、市場に出るということは1人で戦うということではなくて、基本的には競争環境にさらされるわけですよね。重要なのは市場環境と競争環境を見るということがすごく重要で、どれぐらい儲かる市場なの?本当に儲かるの?どうなの?どれぐらい儲かるの?ということを市場環境をしっかり見ていくということと、あと、もう1つは、儲かる市場であれば、当然、競合がたくさん出ているので、競争環境をしっかり見ると。そこに出たときにどういうことが想定されるのかということを見極めていかないといけないわけですよね。その想定に対して対策を打っていくという、こういうことが戦略になるわけなので。まず前提として市場環境を見ていくわけですけど、だいたい市場環境は、マクロデータの収集なので、お客さんのほうでおおよそ出来上がっているというケースが多いんですよね。なので、その情報を共有しながら進めていくというケースがほとんどですと。
一方でやっぱり競合の情報というのは、自分たちのいわゆる最前線で戦っている、営業から上がってくる情報がほとんどというかすべてで、それらの情報というのは、ときに客観性に欠けるんですよね。基本的には解釈がやっぱり自分たちに都合の良い解釈になりがちなので、いかにそれを客観的に見るかということはすごく重要で。依頼元が現地法人の場合もあれば、本社の場合もあって、だいたいは本社なんですけども。そんな中で競合ベンチマークを調査していくという流れになるわけですよね。うまくいっている企業の基準値をつかみたいと、うまくいっている企業の基準値が100だったとした場合に自分たちってどれぐらいなんでしょうかと。70なのか、50なのか、30なのか。その差異を埋めていくということがシェアを上げるということなので、この基準値の差異が分からなかったら永遠にシェアなんて上がらないんですよね。頑張れば上がるなんていうのは、これはナンセンスな話なので。例えば基準値もね、セールスの数とか、セールスの動き方、組織の在り方、もちろん目に見える製品、価格、プロモーションみたいなね、そういうところだけじゃなくて、基本的には4Pで言うところのプロダクト、プライスというのは現場で見ることができるので、ある程度つかみやすい、お客さんのほうでもつかみやすい。一方で、プロモーションもね、B2Bなんかは見えにくいところにプロモーションがあったりするので調べることがありますけども、基本的には表面的に見えていますよ。だって、お客さんが見えているものは競合相手も見えるわけだから、こちら側も見えるわけだから。一番やっぱり見にくいのがチャネルの部分で、直販とディストリビューターの比率がどうなっているとか、ディストリビューターはどういう規模のところを何社使っていて、どういう契約形態になっていて、マージンがいくらで、ディストリビューターの中にはどういう組織をつくらせていて、専任・非専任が何人いて日々どういう活動をしているのかと。それに対して自社のセールスはどういう支援をおこなっているのか、みたいなことを徹底的に調べていくわけですよね。ここの競争力というか、戦闘力が10違うと、やっぱり日々10の差が開いていくわけなので、いかにそれを埋めていくかと。ひと昔前まではね、1990年代、2000年代前半ぐらいまでは、一方的な製品の優位性が非常に重要だったので、それで良かったんですよね。ただ、今は一方的な製品の優位性よりも、相対的な販売チャネルの優位性のほうが圧倒的に重要なので、やっぱりチャネルで負けているというケースが往々にしてあって、なぜこんなに優秀なものがつくれるのに勝てないの?と、それはチャネルで負けているんですよね。もう、新興国事業の戦略って、チャネルの比率が7割とかって考えてもらっても構わないと思うので、そこを調べるという、そういうのが一番多いですかね。僕がやっぱりチャネルまわりで一番調べるべきポイントと思っているのが販売チャネルのストラクチャーと組織体制とマネジメント体制、この3つがやっぱり売上に直結しているので、ここを開いていって自分たちと比較をする。自分たちに何が足りていて、何が足りていないのかを可視化していくという、こういう作業をきっちりやると、次の日から、今日からでもいいですよね、自分たちの組織に何をプラスアルファしていけばいいのかって。じゃあ、ここ1年何をやればいいのかということが明確に見えてくるので、じゃあ、3年後にシェアをここまで追いつきましょう、5年後には追い抜きましょうという、本当の意味での事業計画がしっかり組み立てられるというふうに思うので、競合ベンチマーク調査というのは非常に重要ですねというお話でございます。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。