森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺一樹でございます。今日は、ディストリビューターとの契約交渉についてお話をしていきたいなというふうに思います。対象地域は、ASEANに限らず、新興国市場全般でよろしいかと思います。対象は、製造業になりますので、B2CでもB2Bでもどちらでも構わないかなというふうに思います。
最近、ディストリビューターとの契約交渉、新規ですね、新規で契約交渉する際のいくつかのポイントに関して結構お客様からレクチャーを求められたりするケースが多いので、その件についてちょっとお話をしていくと、これは未進出の国に新規で展開をして、ディストリビューターと契約交渉するケースと、あと、今、既存で進出をしているんだけども、なかなか現状のディストリビューターとうまくいかないので、ディストリビューターをスイッチすると、それで新たに契約をするというケースがあるわけですけども。私もこの番組でいずれのケースにおいても、ディストリビューターの契約においては、日本の製造業さんは契約書の守りの部分は完璧なんだけども、攻めの部分が少し足りていませんねというお話を過去何回もしてきていると思うんですよね。結局、ディストリビューターのディストリビューター契約がゴールであり儀式であるので、そこに到達することが目的になってしまっていて、そのあとのアクションが、実はというか、そのあとのアクションのために契約というのはやるので、そのあとのアクションが数字に跳ね返ってこなければ、契約をしても何の意味もないわけですよね。そうすると、契約において最も重要なのは、契約締結後のアクションが数字にいかに結び付くかということが1点、これが攻めのポイントですよね。一方で、将来にわたって何か問題があったときに自分たちをしっかりと守れるかというのが2点目、守りの部分ですね。この守りの部分はいいんだけども、攻めがないよというお話を番組でもしていると。
じゃあ、この攻めの部分って何?と言うと、目標数値ですよね。目標数値に対してどれだけのコミットが得られるか。いわゆる向こう1年ないし向こう2年の売上を想定していくわけですよね。当然、ディストリビューター契約、ディストリビューション契約をするということは、どれぐらい売れそうなのかという想定をして、その想定がただ想定されたものではなくて、完璧、一番いいのは契約書にしっかりとコミットメントとして盛り込まれるということは重要ですけども、なかなかそうもいかないので、目標は目標で立てておいて、ただ、最低ここまではコミットしますという、いわゆる最低クリアラインみたいなものを契約書なり覚書で別途締結するなりしていく、これがまさに攻めの部分ですよね、これによってディストリビューターの本気度合いが、やっぱりギアがちょっと変わってくるので、そこをしっかりやっていくということはすごく重要だし。
一方で、特に独占を与えるのであれば、独占契約ですね、こういったギブアンドテイクですから、独占というギブを与えるのであれば、最低コミットラインというテイクをもらうということはやっぱりしていかないといけない。何のコミットメントももらわず独占を与えているというケースは非常に多いので、そこはしっかりとやっていかないといけない。また、相手に何かを要求するということは、メーカーとしての支援ですね、特にプロモーションの支援もやっぱりある程度準備をしっかりしないといけないし、「プロモーションは後回しです。実績出てからです。売ってください」みたいなスタンスだと、やっぱりディストリビューターもなかなか好意的に、ポジティブな方向には進まないので、そこもやっぱりギブしながらテイクを取るということをやっていかないといけない。
これってどこまでのトーンでやったらいいんですかという質問を結構受けるんですよね。もう、おっしゃっていることはその通りだし、今まで、ただ契約を結んでいましたと。法務部から回ってくるうちのひな形というものでただ契約を結んでいたと。そうではなくて、ある程度攻めの部分を盛り込みながら、契約締結後にしっかりと数字に反映するように具体的に進めていきたいと。ただ、どこまでギブを与えるのか、どこまでテイクを取るのかというね、この度合いがやっぱり非常に難しいですよねという、そんな話が結構あると。これって先方のディストリビューターのエクスペクテーションがやっぱり非常に重要で、どれぐらいのギブとテイクをエクスペクテーションしているかということがすごく重要なんですよね。それってどういうことかと言うと、今、どういう企業と取り引きをしているか、どういうブランドを取り扱っているか、例えば欧米の先進的なグローバル企業を取り扱っていたら、やっぱりそれなりのプロモーション予算をしっかりと割かれているし、その代わり目標数値みたいなものは厳しく管理されているし、彼らは欧米の先進的なグローバル企業標準のエクスペクテーションを持っているので、それぐらいの要求をしてもね、もしくは向こうからそれぐらいの要求をされるというケースもあるわけですよね。一方で、取り引き企業が日本企業だけの場合だと、やっぱりそんなに積極的な攻めの契約はしてないので、「取りあえず契約を結びましょう。あとは一緒に頑張りましょう」みたいなトーンをエクスペクテーションしているので、あんまり過激なことを言うと、「えっ?」ていう話になってしまうので、ここってやっぱりディストリビューターがどれぐらいの、今、エクスペクテーションを持っているかということがやっぱりすごく重要になってきますね、というところが1つの判断基準かなというふうに思います。
今日はちょっと時間が来てしまったのでこれぐらいにして、また次回引き続き、ディストリビューターとの契約のお話をしていきたいと思います。それでは今日はこれぐらいにして、また皆さん、次回お会いいたしましょう。