東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回は華僑のオーナー社長がどんな人かっていうのと、最後に例えで、孫さんとか柳井さんみたいな経営者が華僑系で、規模はちょっと大なり小なりあるけれども、そういう人たちがいっぱいいるみたいな感覚だと。すごい日本の人もわかりやすいと思うんですけど、逆にそんな人たちがいっぱいいたら怖いなっていう、印象も起きると思うんですけど。
森辺:そうですね、逆にその財閥系ぐらいになると、会長さんとかはそういう人だったんだ、もうおじいちゃんで70とか80になっちゃうんで、昔はそういう人だったんだろうなっていうのを会話の中で感じるんですよ。2代目の人たちは、ほとんどが米国の大学を出て、米国流のマーケティングを学んで、それを自分の財閥ファミリー企業に持ち込んでるので、財閥の中っていうのは逆に言うと日本の企業よりも先進的な面を持ってるケースが非常に多い。会議のやり方ひとつもそうですし。日本みたいに会議始まって、じゃあ今日は何話しましょうかみたいな話じゃなくて、会議の前からレジュメが決まってて、それに関して会議の中で結論全部出していくみたいな会議だし。こんなインドネシアの田舎企業が、田舎財閥がって思うわけですよね。フィリピンのが、とかね、ベトナムのっていう。ベトナムは財閥いないんであれですけど、そう思う。タイとかも。
東:前回の中で、ファミリービジネスみたいな話が出てきたんですけど、日本の中小企業も家族経営とかよく呼ばれるじゃないですか。よく日本の中小企業の家族経営と、華僑のファミリービジネスって、なんか違うなって感じるところが結構あるんですけど、森辺さんなりにそこってどう思われますか。
森辺:そうですね、日本の中小企業は、僕は中小企業でいることに違和感がない気がしてるんですよ。中小企業って呼ばれることに対して腹も立たないし、はい、中小企業ですと。
東:中小企業っていう言葉が定着しちゃってるってのもありますもんね。
森辺:一方で、アジアの中小企業の社長と日本の中小企業の社長の絶対のちがいは、成長意欲が全然違う。日本の中小企業の社長は、自分たちは中小企業の社長だから、お金はないので海外進出は出来高で、みたいな。一方でアジアの中小企業っていうのは、いやいや俺たちは大企業になるよと。だから投資するところには投資するよっていうのが明確に違う。だからどっちかっていうと中小企業っていうよりも、アジアの中小企業はベンチャーに近い。ベンチャーって呼ばれてるような会社さんに近いんですよ。2代目3代目であっても。3代目ってあんまりないですけど、2代目が多いですけど。ベンチャーに近いです。
東:もう一つなんか自分は感じるんですけど、日本の家族経営って本当に、その親類だけでやってるような、近い人たちだけでやってるじゃないですか。アジア行ってもそうなんでしょうけど、ファミリービジネスっていうともう少し枠が大きいような感じを受けるんですけど、その辺って日本の家族経営とファミリービジネスの輪の違いっていうんですかね。
森辺:家族の定義が違うんですよ。家族は日本でいう家族は、お父さんとお母さんとその子供が家族じゃないですか。それ以外は親戚ですよね。アジアに行くと、家族っていうのは、親戚含めて、たとえばチャンっていう名前だったらチャンっていう名前がついたファミリーは全部ファミリーなんで。僕の兄弟とかお姉さんとか言われるじゃないですか。ここに義理のお姉さんも入ってこれば、義理のお兄さんも入ってくる。けどそこに義理のとかっていう意識は全くないんで、ファミリーが広いんですよね。それが経営に参画して関わってたりするので。たとえば本流のビジネスは、ほんとに中国ファミリーの息子長男次男がやるけど、そこから派生してるサブビジネスは親戚のお兄さんに任せてるとか、そういうイメージですよね。
でも日本はどんどんどんどん核家族っていうのか、親戚はもう何年も会っていませんみたいな。その時に僕が思うのは、4人家族の力って結局4人じゃないですか。かたや向こうは20人とか30人のファミリーで、30人の力と4人の力どっちが強いって、そりゃ30人のほうが強いですよ。そこに大きな違いを感じることは多々ありますよね。良い悪い別にしてね。だから家族の定義が違うと思いますね。
東:もう一つは、日本の中小企業ってどっちかっていうと、これと思ったこれで伸びてきたじゃないですか、専業メーカーみたいな。やっぱ華僑系の人って、どっちかっていうと発想がコングロマリットっていうか、複数のビジネスやって会社を大きくするみたいな人が多いような感じはするんですけど。
森辺:そうですね、要は結局、1個のビジネスってビジネスが生まれて成長期に入って、成熟期に行って、衰退期に落ちる4つのステップがあるじゃないですか。これを意識してなのか意識してないのかは分かんないですけど、華僑の人たちは1つのビジネスを成長にのせたら、次のSカーブを作りに入るわけですよ、次の事業を。それもまた成長したらまた次の事業に入っていくっていうことを。恐らく1つのビジネスが永遠に成長し続けることなんてありえないってことを感覚的にわかっているので、それをじゃあ戦略的にやっているかっていうと、僕はそうじゃないと思うんですよね。ただ感覚的にそう思ってるんで、染みついている。Aという事業で成長したら、次のBという事業、Cという事業、Dという事業をどんどんどんどん立ち上げていく。そこのセンスにすごく長けているイメージがあって。
東:そうすると、前々回くらいに話した、張るっていうところにつながる。
森辺:そうですね。そこでどんどん張っていく。当然失敗もいっぱいしてるんですよ、失敗もしてるんですけど、その失敗の中からまた何かを見つけて、とにかく成長意欲が高いので、成長しないことはしないじゃないですか。だからよく言われる議論ですけど、日本人の、我々の国民性なのかもしれないですけど、1つのことをコツコツコツコツと極めたって死ぬまで極めきれないとかって職人さんとかがよく言いますよね。だから素晴らしいものができるし、日本にしかないものができるってそれは1つのよしじゃないですか。けどビジネスでいうと、極めるっていうのは永遠の成長じゃないですか。永遠の成長を1つの事業でやるってことは無理なので、時代はどんどん変わっていくわけじゃないですか。それをどんどんどんどん、時代の読み方がうまいっていうのかな。
東:なんか肌感覚で時代を読めてる感じはしますよね。
森辺:だからそこはすごく思いますかね。たとえば、洋服屋さんがいきなり飲食店やるとか、飲食店やってると思ったらいきなりテレビ会社買収してテレビ局やるとか。メーカーになっちゃうとか。そういう話なので。
東:その辺もやっぱ肌感覚というか、それは華僑の人たちが共通して持ってるものだろうと。
森辺:持ってますね。あとね、国境越えに全くもって違和感を感じてない。要は、自国の中だけで商売をしようなんて発想が全くないので、どんどん行くわけですよ。今どこ行ったって中国人だらけじゃないですか。だからアフリカにまでも行くし、やっぱりその国境を越えることに何の違和感もないんですね。じゃあ、決して英語がうまいかとか、現地語を話すかっていったらそうじゃないんですよね。なんかそこはやっぱすごく思いますよね。
東:ちょっともう今日はこれまでにしたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。