東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、前回ですけど、ポジショニングがいまいち定まらないと、なかなかアジア新興国の中間層をねらうときには難しいんじゃないですかというような話をされていたと思うんですけど。今、ポジショニングというと、マーケティングであり、戦略であり、そういったところに入ってくると思うんですよね。そうすると、本来であれば、それは進出前とかやる前にある程度決めて、それを実行するというようなステージだと思うんですけれども、具体的にその辺の戦略とかマーケティング、森辺さん、グローバルマーケティングとよく言われますけども、その辺が日本企業は現状どう考えていて、森辺さんから見るとどういう印象を受けるかといったら、どうですかね?
森辺:ポジショニングって、会社のブランドをつくるんですよね。日本企業は一般的にどの業種でも、このポジショニングに対する考え方がすごいブレブレで。欧米の会社って、例えば車で例えると身近だからいいかもしれないですけど、メルセデスって、「メルセデス」って顔してるじゃないですか、どの車も。一緒の顔しているわけですよ。BMWもね。これが「私」なんです。嫌いな人はどうぞ買わないでくださいって言っている気がするんです。Appleもそうじゃないですか。お客さんによって自分たちのポジショニングは変わらない。これがAppleなんですよと。嫌いな人は買わなくて結構ですということを主張しているわけで、これがポジショニングなわけですよね。その姿勢が消費者に、そんなAppleが欲しい、そんなベンツが欲しいと思わせるわけじゃないですか。日本の会社、家電でも車でも何でもいいんですけど、CMで見るとあんなにかっこいいのに、現物見ると、みんなのほうを見て笑っている顔をしているでしょう?
これが僕、考えたことがあるんですけど、日本で「お客様は神様だ」という言葉があるじゃないですか。僕は自分のお客さんを神様だと思っていますよ。それは1つ言っておきます。リスナーの中にお客さんいるんで。神様だと思っていますよ。なんですけど、こんな考え方をするのは日本だけなんですよ。日本と韓国だけ。買う側と売る側というのはギブ&テイクなわけですよ、基本的には。お客様は神様なんていうのはあり得ない。Customer is Godって言っているようなものじゃないですか。そんなの聞かないですからね、僕。
東:聞いたことないですね(笑)
森辺:お客様は神様だから、いろんなお客さんの顔色見ながら、いろんな顔するわけですよ。ポジショニングが定まらないわけですよね。賞品の顔も決まってこない。だからいろんな顔をしているわけで、それが今までの時代はよかったかもしれない。けど、コモディティー化してしまったら、そんなのはもう中国やお韓国や台湾がやっておけばいい。日本は日本らしい顔をしないといけないわけですよね。そこがすごい下手で、それがアジアのビジネスでもすごい出ていて、やっぱりコレといったらこの会社だよねみたいなのがないでしょう、日本って。昔のSONYはあったんですよ。だから、もう遠くから見ても、ああっ、SONYだねという、何かそこがすごい重要。デジカメ買うときに、家電屋さんへ行って、いっぱいあるじゃないですか。どれも一緒に見えませんか? アジアのメーカーもそこに加えたとき、アジアの人たちからしたら、やっぱ写るということが目的なんで、どれも一緒に見えるんだと。安くて写るほう買うわけですよね。けど、ライカというカメラは、同じには見えないんですよ。そこがすごい重要だと思っていて、僕は。でも、そこは苦手なんでしょうね、日本のメーカーというのは。ただ、そのポジショニングがブランドをつくっていくと僕は思っているので、そこはやっぱりメーカーであれば生命線であれるかなと思っているんですれどね。
東:そうすると、ポジショニングがまず明確に定めないといけないというのは、それ多分経営層であったり、なかなか技術の一大投資ができることはないと思うんですけども、そうすると経営戦略とかそういったところ、マーケティング戦略を、全体像に入ってくると思うんですけど、マーケティングとかグローバルマーケティングと呼ばれるところのポジショニングが弱いですと、そこが核になりますと。その前後にもいろんなプロセスがあると思うんですけども、このポジショニングがブレるとか、それが中途半端になる要因って、森辺さんは具体的にどういったところにあると思いますか?
森辺:苦手だというそもそものところ。Appleとかが、スティーブ・ジョブズが「Appleというのはこうなんだ」と1人の人がばんと決めるわけじゃないですか。でも、任期の決まっている、いわゆりるサラリーマン社長の会社というのは、なかなかそれを決めにくいんですよね。創業者の時代は決まっているわけですよね。そこから時代が大きく変わってしまっていて、何かもう一回原点に戻るというのは、僕は多分すごい重要なことなんじゃないかなと思っていて。何か私たちのポジショニングってこうだよねという、私たちらしい製品。誰が見てもすぐわかると。世の中でファンがつくような製品というのは、誰が見ても一発でその会社の製品だってわかるものなんですよ。そういう製品じゃない限り、ファンなんてつかないですよね。そういうポジショニングをつくるんだったら、技術や品質に徹底的にこだわったらいいんじゃないのと思っていて。
けど、遠くから見てぱっと誰の製品かわからないようなものは、所詮コモディティーなわけですよ。だとすると、消費者が求めている、安いとか、でかいとか、そういうところにこだわらないといけないので、何かそこをもう一回決め直す必要があると思っていて。日本では売れているから、そうなんだと思っているじゃないですか。消費者調査とかやって答えるとかね。そんなのバイアスかかっているでしょう、いっぱい。アジアってそれがそのとおり行くかというと、そうじゃないしね。そこはなかなか難しい問題なんですよね。
東:そうするとやっぱり、創業社長だと、そこはバンと決められて、一気に行くというリスクをとれるということなんですかね。だめだったらもう1回やり直せばいいみたいな、多分、先進的なものもあると思うんですけども、そうすると、やっぱりなかなかサラリーマン社長だと、そこは決め切れなくてという話になっていくんですかね。
森辺:何かファンがつくとかというのは、やっぱり統一性が絶対あるんですよね。だって買う人はその会社のそのブランドの心意気じゃないですけど、考え方に共感して買っていくわけじゃないですか。そのスタイルとかというものの統一性にね。Appleコンピューター使う人のほとんどがそうですよね。使い勝手がいいとか、そういうのもあるんでしょうけど、基本的にはそこにほれ込んでいくわけじゃないですか。Appleのコンピューターは、ノートパソコンいっぱい置いてあるところに並んでも、パッと一瞬で見てわかるじゃないですか。でも、そんな創業社長いないところで、そんなこと言ってもしようがないので。でもそれって別に創業社長が決めなくたって、いわゆるチーフブランディングオフィサーというのをつくったっていいわけですよ。CBOというのを作って、CBOの指示を通じて、すべての製品に魂吹き込んだらいいわけで。その魂が技術とか品質になっちゃうと思うんですけどね。技術とか品質で勝負するんだったら、同時にブランド力を高めなかったら、もう世界はそんなものは求めない。いろんなものがコモディティー化しているから。チーフマーケティングオフィサーがいる会社だって非常に少ないでしょう。欧米だったら今ほとんどいますよ、CMOって。だから、ブランドもマーケティングの中に入っている話なので、チーフブランディングオフィサーというよりかは、多分CMOですね。そういうものを立てていくというのも、すごく重要じゃないかなと思うんですけど、ブランドってすごい力を持っていますよね。
僕それは、スイスの機械式時計のブランドで本当に感じるんですよね。僕好きなんですよ。好きなんですけど、あんなぼったくり業界は世界で存在しないですよ。車より高いんいですからね。なので、そういうのから学んでいくというのも1つ必要なんじゃないかなと思います。
東:わかりました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。