東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、情報収集に関してなんですけれども、調査とか情報収集と戦略が別々に考えられてしまっていて、本来であれば仮説をもって戦略を立てるために情報収集なり調査をして、その調査結果を戦略を立てる仮説を補うものだったり、補完するものであって、戦略の確度を高めていくものであるということだと思うんですけども、その中で、調査とか情報収集を具体的にどういう視点で見て、何の情報を集めたらいいのかというところで、情報が意外とあふれていて、いろんなレポートが出ていたり、いろんな一般情報があると思うんですけど、その一般情報だけで足りるところと足りないところって当然あると思うんですよね。そうすると、実際に戦略を立てる側に立ったときに、仮説は何となく立ちましたと。ただ、どうやって調べたらいいかわかりませんというステージに来る人もいると思うんですけど、その辺はどうお考えになりますか?
森辺:まず、市場環境、競争環境、流通環境のこの3つなんですよ、調べることは。それをベースに、自社の経営資源を見渡して、足りていないものはどうかという、この4つを見ていくわけなんですけど、戦略作るときに。市場環境は、ぶっちゃけ勝手にやってください。もうわかりきっている話じゃないですか。それを細かくデータとろうと思ったら、そういうところはいっぱいあるわけだから、そういう機関を使えばいいわけですよね。
重要なのはやっぱり、競争環境の把握と流通環境の把握。ここが一番戦略につながってくるところなんですよ。いわゆる市場環境って、やるかやらないかの判断とか、あとどこから優先的にやるかの判断をする話じゃないですか。あと、ターゲットのセグメントを決めたりとかいうものですよね。一方で、その方法論を決めていく、いわば立てている仮説の中の方法論をさらに堅くしていくのが、競争環境と流通環境の調査なんですよ。ここは正直、自前でできる話じゃないですよね、競合を自前で調べるなんというのは。欧米ではベンチマーク調査というんですけどね。ベンチマークをしていくと何がいいかというと、自分たちよりも秀でている欧米やローカルの競合が、どういうことを過去にやってきて、何で失敗して、何で成功してという。今成功している要因は何なのかということがわかるわけですよ。それをベースに自分たちは戦略を作れるので、同じ失敗をしなくてもいいという話なんですよね。
必ずアジア新興国には、自分たちよりも先に出ている競合がいるんです。いや、いないという業界や企業なんて、ほんの一握りですよ。必ずいます。自分たちのほうが勝っているんです。それは品質とか技術で勝っているだけでしょう。マーケットシェアでは負けているでしょう、ローカルにみたいな。でも、今はローカルのメーカーのほうがマーケットシェアが大きいけど、私たちが参入して、私たちの高技術、高品質で戦えば絶対勝てるんです、物はいいんですから、みたいな会社もあるんですよ。それでやってみたんだけど勝てないみたいな。それはそのローカルではそんな高品質、高機能を求めていなくて、ローカルのやつでいいわけですよ。そんなことはもう先に調べておけば、わかったはずなんですよね。現地の市場が一番求めているところが、品質とか機能じゃないみたいなことはね。それって競合の分析からわかる話じゃないですか。流通の調査して初めてわかる話じゃないですか。販売も、どういうレベルまでつくり上げないと競合に勝てないかとか、流通行動を見ていけばわかるわけですよね。そうすると、競合の戦闘能力が100ですと。それに対して120の戦闘能力を持たないといけないとかという、基準値が見えてくるじゃないですか。
単に競合が強い、強いというんじゃなくて、戦闘能力の数値がどれぐらいなのみたいな。トラゴンボールでいうと、戦闘能力を計るスカウターみたいなのありますよね、あれで計るみたいなイメージですよ。あれで計っていかないと、どこまで自分たちを強めたらいいのかわからないですよね。だから、そこはすごい重要と思いますよね。むしろそれだけやっていけたらいいと思っているんですよね、僕なんか。
東:そうすると、戦略が自動的に立つわけですね。ベンチマーク調査って、結構日本企業っておろそかにしがちというか、あまり重要視されていないと思うんですけど。一方で欧米企業とか、韓国企業もそうですし、台湾企業も中国企業も結構そこは徹底的にやる印象があるんですけれども、その差って何なんですかね?
森辺:欧米は、基本的にはマーケティング先進国じゃないですか。だからその重要性を普通に理解しているわけですよね。韓国とか中国やよくやったなと思うんですけど、負けていたわけじゃないですか、日本企業に。それを追いつき追い越せで頑張ってきていて、言ったら戦後の日本の欧米のメーカー、追いつき追い越せの時代を、まさにここ20年で彼らも駆け抜けてきたわけですけどね。そうなってくると、やっぱり徹底的に学んで、追いついて、追い抜かしてやるというふうに思っていたんでしょうね。ちょっと…というやり方もいっぱいあるでしょうしね。ちょっとこれ産業スパイじゃないの? というのも当然いっぱいあるんでしょうけどもね。言っても勝っちゃえば、そんなの後の祭りなわけで。やっぱりそういうのはあるんで。
結局そのビジネスって、どれだけ儲かる市場で、どれだけ強い敵に勝つかという、もうこれだけじゃないですか。だから、そうすると市場が本当に儲かる市場なのかということを常にベンチマークすることと、敵と戦って勝たなければ、自分たちの売り上げやシェアは上がらないわけですから、敵が今どういう状況にいるのかというのを常にモニタリングするというのは、普通に重要なことというか、あれなことじゃないですか。日本にいると、自分たちの競合他者の情報なんて、業界から入ってくるわけです、自然に、だからベンチマーク調査なんてやらないじゃないですか。でも海外に行くと、入ってこないわけなんですよね。だからやる必要があるというわけで。そんな感じだと思うんですね。
東:まずはそこのベンチマーク調査というのも重要視したほうがいいと。もう1つ言われていたのが、流通環境の調査だと思うんですけど、これは具体的にどういったことをやっていくんでしょう?
森辺:流通って、小売り流通もそうなんですけど、ディストリビューションネットワークの流通がどうなっているかという話で、BtoBで直販だけやっていきますよという会社は、それにしたって直販の流通、お客さんになっていくわけなんでしょうけども。そこを見ないといけないですけど、特に代理店を使うような業種であれば、敵がどういう代理店使って、自分たちがそれよりも超えるということは、それ以上の代理店使っていかないといけないわけですよね。ほとんどの場合、それ以上の代理店が残っていなかったりするわけで。そうすると、いかにそれ以下の代理店を強めていかなきゃいけないみたいな話、もしくは数を増やさなきゃいけないみたいな話、もしくは数をふやさないといけないという話があるわけですよね。そこをしっかり見ていかないと、必ずしもでかい代理店と組めば勝てるという話でもないわけですからね。
そうすると、そういうディストリビューションを見ていくということはすごく重要で、相手がバズーカ持っているけど、自分たちが38口径で勝とうと思うと、38口径を二刀流にして撃たないと勝てないなとか、ちょっと隠れながら俊敏に動いて撃たないと勝てないなとか、あるわけじゃないですか。だからそういうのを見ていくわけですよ。流通構造を見ていくというのは。だから決して単純にいいディストリビューター探せというだけの話じゃなくて、いいディストリビューターなんて、敵がもうつかまえているわけですよ。そうすると、いかに何かそこそこのところを使って買っていくのか、もしくは数を増やすのかとか、そういうことを考えていかないといけないわけなんですよね。そんなことですかね。
東:わかりました。じゃ、今日はこの辺で時間が来たので、森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。