東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:前回ディストリビューターの選定のところで、マインドとスキルが重要です。ただ、例で見ると昔から…日本企業だと20年30年前から同じようなところと付き合ってるけど、今頭打ちになってきていて、今後どうすればいいですか?みたいな話もあると思うんですけど、その辺については色んなパターンがあるので、一概には言えないと思いますけど、どうですかね?
森辺:多いですよね。「20年ぐらい付き合ってます。フィリピンのディストリビューターと」「インドネシアのディストリビューター」「ベトナムのディストリビューター」、タイも然り。だけど、それって元々何かのご縁で繋がったっていうケースが多くて、そこの社長さんももう20年なんで結構おじいちゃんになっちゃってて、次息子の代に今ちょうど入れ替わりが起きてる、みたいな。
その中で大手の消費材メーカーでも「20億ぐらいまで行ったんだけど、そこから中々伸びていかない」と。いざ蓋を開けてみると、MTにはそこそこ入ってるんだけど、製品のオーバースペックの問題や価格の問題でMTでも本当のローカルMTには入ってなくて、上よりの富裕者よりのMTに入ってますと。そんな中で大手の消費材メーカーがインドネシアで20億やったって、本社の売り上げのデカさを考えたら、何のインパクトも無いんで、やっぱり100億200億のビジネスやっていきたい。一方でマーケットシェア見て見たら、他社はもっと全然マーケットシェア高くて、自分のところはもうコンマ数パーセントですというようなところは多いです。
ちょうど過渡期に来てて、どこもそんなお話しだと思うんです。僕が今お話しを色んなところから聞く限り。各社さん言われるのは、「今まで自分のディストリビューターが、他社と比べて競争力がどうなのかっていうことを、数字で測定したことなんて無かった」と。同行したらね、「配架率ほぼ100%だ」と。「いいよ、よくやってくれてる」と。夜は食事ガーンと食べさせられて「もういいんだ」と。「だから中々切れないんだけど、シェア見てみると外資のA社B社C社の方がいいんだよね」みたいな。そんなのがやっぱり多くて。
そしたらディストリビューターね、日本のプリンシパルなメーカーが来たら、自分達が最も自信のあるところにしか連れてけませんから、本当にメーカーが行くべき小売には中々行けてないっていうのは、あると思うんです。そこをどう乗り越えれるかが、この先の5年10年20年のその国でのマーケットシェアや売り上げを決めることになる、ちょうど今過渡期なんだと思うんです。
80年代ぐらいじゃないですか、日本の企業がアジアでディストリビューター作り始めたの。当時は日本の市場がデカかったし、ASEANの小国なんてどうでもいいという状況でしたよね。だからちょうど過渡期なんじゃないですかね。
東:その過渡期にあって、今後当然それを日本企業もちょうどグローバル化を進めようとしていて、売り上げを伸ばしたい。ただ一方で、現地を現実的に見ると、これ以上中々売り上げ伸びないみたいなジレンマに陥ってると思うんですよね、森辺さんの話を聞いてると。そうすると、そこの解決策っていうのは、極端に言うと今のディストリビューターを伸ばしていくのか、別のディストリビューターを充てるのか、併用するのか、みたいな3択になってくると思うんですけど、その辺はどういう形で考えていけばいいのかっていうのは、何かヒントになるようなことがあれば。
森辺:極論を言うと、消費材の業界で、アジアでも欧米でもいいんですけど、一カ国一代理店制度でマーケットシェア2割取るなんて不可能なんです。今現状20パーセント以上のマーケットシェアを持っている消費材メーカーで、一カ国一代理店制度を使っているような、先進的なグローバル企業はいないんです。
そうなってくると、今までやってきて今20億あるディストリビューターを切るなんて、これは中々の経営判断じゃないですか。だから、これをするっていうよりかは、そこにプラスアルファ付け加えて行かないといけない。ただ、付け加えて行って自社内競合が起きたら、今度はコストが無茶苦茶になるわけなんです。それをどうやって上手くカバーするかっていうと、今の既存のディストリビューターがリーチできてないところに、新たなディストリビューターをどう設置するかっていう話なので、今のディストリビューターの配架エリアとか配架力みたいな…競争力ですよね、それをやっぱり一旦可視化しないといけない。
多くの日本の消費材メーカーは、自分達のアジアのディストリビューターの配架力を数字で把握していない。具体的にどこのエリアのどこの小売にどれぐらいの影響力があって、どれくらいの配架力を持っているかっていうことを把握していないので、まずそこをやらないと、どういう別のディストリビューターをどこに設置してっていう、次のアクションに進めないんです。で、現状と変わらずダラダラ同じ状態が続くっていう話になる。まずはやっぱり、現状のディストリビューターの競争力を把握するっていうことをやるべきだと思います。
東:その競争力を把握するって言われても、今までやったことが無いので、どこから手を付けていいか分からないしっていうのは、悩みとして一つあると思うんです。その最初のボタン掛けっていうのは、どこから始めれば…
森辺:最初のボタン掛けは、今のディストリビューターから情報をちゃんと吸い上げるっていう。けど、関係がイマイチなところって、ディストリビューターが情報開示しないとか、そういう低次元な悩みで止まっちゃったりしてるじゃないですか。
もしそうなんだとすれば、外部の我々みたいなところを使って、今の現状のディストリビューターの競争力を、じゃあ同じ市場で競合となる、自分達よりもマーケットシェアの高い企業のディストリビューター、もしくはディストリビューションネットワークと比べてどうなのかっていうのも、客観的に比較しないといけないですよね。
これは消費材メーカーが、自分達で自らできるような類のものじゃないし、餅は餅屋だし、こんなことをメーカーの人間がやるべきじゃないんですよ。こんな、いわゆる本来のメーカーの業務とは違う話なんで。だから、そんなところをやる必要性を社内でどれだけ問えるかっていう話じゃないかなと思うんですけどね。
東:分かりました。じゃあちょっと時間が来ましたので、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。