東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回に引き続き質問が来てますので、質問に答えていただきたいんですが。質問なんですが、そもそも伝統小売をやるべきかに疑問を持っていますと。市場は成熟し、小売が近代化してから参入した方が良いのではないかと思うのですが、どうお考えですか、という。
森辺:なるほどね。この質問も過去に講演などで受けたことがあるので、気持ちはとても分かりますと。ということで、結論から言うと、小売が近代化してから参入できないと思います。理由は、アジア新興国の小売の近代化って、ここ5年10年で起きるかっていうと、そういうことではなくて、おそらく数十年とかそういう中で近代化していくと思うんですね。
そういう時間の流れの中で、小売が伝統主流の時にはその市場には全く認知が無い物が、近代化されてパッと入って…そもそもパッと受け入れてくれるかっていう問題があると思うんですよね。小売側もそうだし、消費者もそうだし。そうすると、近代化したから「はい、入ります」って言っても、まず受け入れてもらえないでしょ、と。それまでには勝負は決まっちゃってるっていう問題があると思うんですよ。
伝統小売でも慣れ親しんだ物を、近代化しても人々は買うわけで、そう簡単には行かないよねと。伝統小売から入ってったメーカーは、例えば欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは、近代化すればするほど尚更力を入れてくわけなので、それからやっても間に合わないってのが、一つ。
後、そもそも伝統小売が近代小売化していく上で、どれぐらいの時間が必要なのかっていうこともよく聞かれるんですよね。それがこの質問されてる方の言ってることがね、本当に3年5年で近代化するんだったら、その方が良いと思いますよ、待ってからの方が。けどそれが多分30年とか40年とかそういう時間の中で近代化されていくので。
小売ってよく比較されるのが、日本も小売が急激に近代化したじゃないかと、コンビニ化したじゃないかと。ただ、これだけコンビニがね、10m20mおきに都内とかだとね、密集している国も珍しくて。日本の場合、小売の近代化がなぜ起きたかなんだけども、結局小売の近代化って小売だけが勝手に近代化できるもんではなくて、様々なインフラが同時並行的に近代化するから、その上で小売も同時に近代化できるっていう構造なんですよね。
例えば、道路とか交通事情のインフラとか、物流、冷凍トラック、システム、電気・ガス・水道。そういうあらゆるインフラが近代化するから、小売も近代化できて、勝手に小売だけが「近代化します」っつって、近代化するものではないと。
日本の場合は、それが運良く北海道から沖縄まで均等に近代化してったっていう背景があって、戦後急激に近代化した。戦後の日本の経済成長と同じ事をやった国は、過去にも無いわけですよね。先にも出来るという国も無くて。そうすると、結構奇跡的に近いことであるという事も一つ関係してると。
ただASEANの中で、僕一つ気をつけないといけないのは、コンビニが日本のようなコンビニにならない可能性があると。つまりは、僕らにとってのコンビニは、彼らにとっての伝統小売であると。でもその伝統小売が、少し綺麗になって、日本のコンビニの半分みたいな感じのものに出来上がるという可能性はあるんですよね。だからそこは注視しなきゃいけなくて、特に僕はASEANを一括りにすべきでもなくて、特にインドネシア。ここはコンビニが圧倒的に増えてくる可能性が高くて。今でもアルファマートとインドマート、それぞれ一万店ぐらいあるわけですよね。急激にコンビニが進んだっていう背景があって、ASEANでそんな国無いですから。一社のコンビニで一万店もあるなんていうのは。なので、インドネシアだけちょっと特殊な事情があるのかな。
ただ一方で、インドネシアには300万店の伝統小売もあるので、比率で比べたら、そりゃ日本との比率には到底及ばないので、やっぱ伝統小売っていうのは重要ですよ。っていうのが回答ですかね。
東:じゃあ回答としては、小売が近代化してから参入した方が良いかどうか、という事で悩んでいらっしゃるみたいなんですけども、それは…
森辺:それはノーですね。今から伝統小売の内からやりなさい。なぜならば、近代化して参入するっつっても参入できないよ、入れてもらえないよ。それは流通にも入れてもらえないだろうし、消費者にも入れてもらえないでしょう、という回答ですかね。
東:分かりました。じゃあ森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。