東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、先日エースコックの村岡社長ですかね、と、グローバーの流儀で対談したと思うんですけれども、まだ公開になってないんですが、ざっくりと話せる内容だけ事前にリスナーの皆さんにシェアしていただきたいと思うんですが、いかがですかね。
森辺:はい、了解です。先日ですね、エースコック…もう皆さん誰もがご存知だと思うんですけど「わか~めラーメン♪」とかね、エースコックのスーパーカップで有名なエースコックですけども、あの即席麺の。その村岡社長と対談させて頂いて、お会いしてきましたと。
アジア通の人は、おそらく既にご存知かと思いますが、エースコックってベトナムでマーケットシェア50%の、物凄く強い会社なんですよね。かねてから、エースコックのベトナム市場におけるチャネル戦略が、調べれば調べるほど素晴らしくてですね。ユニリーバとかネスレ並、もしかしたらそれ以上かもしれないなっていうのは感じていたので、非常に会うのを楽しみにして会ってきましてですね。たくさん面白いお話を聞いてきたと。そんな話だったんですよね。
東:対談が公開されるので、ざっくりどんな事をお話していて、詳しくは対談を見て頂きたいんですけれども、森辺さんの感覚として、エースコックが何が強いとか、印象に残ったのかってのを、簡単に共有して頂きたいんですけれども。
森辺:対談自体はフジサンケイビジネスアイで5月中に多分公開されると思うんですけども。新聞紙面とオンラインと。
僕がエースコックの村岡社長に会って感じたのはですね、いくつかあるんですけど、基本的に物凄い謙虚な社長で、あれだけできてるのにまだ「できてない」って言うんですよね。結局僕が一番知りたかったのは、エースコックのベトナム市場における強さの秘密とは一体何なんだと。何故あれだけチャネルが強いっていうことはわかってるんですけど、強固なチャネルを作れたんだっていうことを中心に掘り下げて行くと。
まず一つは、4Pが完璧なんですよ。ベトナム市場を攻める上で、上位中間層とか富裕層とか、そういうわけわかんないことをまず言わない。だから徹底的にターゲットが中間層、むしろ村岡社長はそれ以下だという風に言っていて、低所得者層にまで食べてもらわなきゃ意味が無いんだと。
ベトナム人による、ベトナム人のための、ベトナム風の即席麺なんだっていうことを凄くこだわっていて。実は向こうで流行ってる即席麺って、袋麺なんですけどもね。「ハオハオ」って言うんですよ。ピンクのパッケージなんですよ、薄ピンクの。薄ピンクの即席麺・袋麺が日本で売ってたら、誰が買うかって誰も買わないじゃないですか。でもベトナムではやっぱそれが一番いいんですよね。いいっていう消費者の声を反映して、それにしたと。多分そのときのジャッジって結構だったと思うんですよね。ピンクの袋麺出すってね、結構なジャッジで。
でも村岡社長には全く迷いがなくて。何故ならば、ベトナムの現地の人がそれが好むんであれば、そうすべきだと。ターゲットは明確で、プロダクトがまずそうなんですよね。味も当然ベトナム人の好む味に変えてありますと。で、プライスが物凄くて、ハオハオ袋麺一袋18円。今の為替で18.5円。これじゃないと買えないんですよね。結局消費財メーカーにとって重要なのって、いかに多くの人に、いかに早いタイミングで、いかに繰り返し商品を買ってもらうかっていうのが最大の課題じゃないですか。それを実現するために、18円の即席麺を出すと。そのための工場投資をしてるんですよ。1993年に進出決めて、1995年から稼働してるんですよね。
次にプレイスなんですけど、結局あそこの市場って、MTって1200~1300。主要どころで。TTが50万店で、うち30万店がいわゆる食品系が置けるTTなんですよね。そうすると、いかにカバレッジを増やす必要があるのかっていうんで、ディストリビューターを250ぐらい使ってる。二次店まで含めると、相当な数であると。それにより、ストアのカバレッジがもう圧倒的に高い。どこのTTに行っても彼らの商品は売っていると。そして、ストアカバレッジが上がったんで今度はインストアマーケットシェア、つまりは競合他社よりも選んでもらわないといけないので、そこにプロモーション投資をすると。カバレッジを持ってるんで、プロモーション投資も躊躇なくできると。その結果、売り上げが爆発的に上がりましたよという、非常にシンプルなんですよね。悩んでいない。
そんな状態にまで行ってるのに「まだまだだ」と。「これからだ」ということをおっしゃっていて、悩んでるレベルが他のその消費財メーカーとはちょっとレベルが三つ四つぐらい違う印象をやっぱり受けましたね。「うちは日本企業で、安いもの売ったらブランド力が下がるじゃないか」とか、「原材料変えて低価格の商品を出すのはどうなんだ」とか、「まずはMT回してからTTだ」とか、そういう次元の悩みはないんですよね。もう明確なんです。ベトナムの中間層のために、自分たちは何をすべきかと。こうだなと。じゃあそれをやろうっていう、非常にシンプルな形でしたね。
東:分かりました。そうすると、ベトナムでハオハオを売ってるっていうのは知ってる人は当然、その強さってのはなんとなく実感できると思うんですけども、村岡社長は何でベトナムなのかとかっていう話はされてたんでしょうか。
森辺:元々ね、インドネシア見に行ったって言ってましたね。インドネシアってインドミーがすごく強いじゃないですか。あのインドミーやってる会社にね、財閥系なんですけどね、インドミーね。そこに即席麺の技術をね、昔教えたのは実エースコックなんですよね。そんなのもあって、インドネシアに昔行きましたと。その帰りに、とある商社に「ベトナム見ない?」って言われて、ベトナム見に行ったらしいんですよね。それがきっかけで、それが1990年代とかそんな感じだったみたいですね。
やっぱり日本は少子高齢化で即席麺のピークってもとうに終わってるんですよ。これからどんどん減少傾向になっていく中で、どうやってその市場拡大するかってのは、即席麺メーカーにとって最大のお題目で。ですからもう90年にはそういう状態だったんで、早くから出たというのが経緯だったみたいですけどね。
東:分かりました。じゃあ森辺さん、今日はお時間が来たのでここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。