阪西:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの阪西です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
阪西:今日は森辺さん、先日、株式会社アシストさんで行わせていただいたセミナーのお話です。そちらで質問をいただきましたので、幾つかご紹介させていただきたいと思います。
森辺:なるほど、なるほど、いいですね。ちょっとリスナーの皆さんにも詳しくお話をすると、先日そのアシストさんというソフトウエアベンダーさんですかね、BI(Business Intelligence)ツールをやっているような会社さんと、あとリコーさんが主催をして、セミナーを開催して、そこに私が講師として呼ばれまして。セミナーといっても、どちらかというとサロン形式で、10社の主には消費財メーカーの海外事業部長以上の役職者の方が多かったんですかね――がお集まりいただいて、どういうお話をしたかというと、消費財メーカーのための新グローバル戦略ということでお話をしたと。そのお話の中で、いい質問が幾つかあったので、それを紹介していくということですね。
阪西:はい。
森辺:では、お願いします。
阪西:では、まず1つ目、ご紹介したいと思います。「伝統小売りは減っていくのか?」というシンプルな質問だったんですけども、こちらお答えいただけますか?
森辺:なるほど。これはね、この質問が出た背景は、たしか近代小売りも重要なんだけども、近代小売りは絶対で、プラス伝統小売りもやらなきゃいけないですよと。むしろ近代小売りよりも伝統小売りの方が難しいし、重要だし、近代小売りに並んでいるものは伝統小売りのストアカバレッジが高い商品は、近代小売りとの交渉も楽になりますよという話をしたんですね。で、伝統小売りが大切だということを言ったと。そうしたら、参加者の1人が、伝統小売りはどんどん減っていくんじゃないですかと。だから近代小売りだけじゃだめですかという、そういう意図の質問ですね?
阪西:そうですね、はい。
森辺:これはすごくいい質問で、大体セミナーされると、よくこの議論というか質問されるんですけど、答えは「イエス」なんですよね。伝統小売りは確かに比率は減っていくんですよ。ただ、やらなくていいかというと「ノー」なんですよね。これって時間軸だと思っていて、例えば僕がASEANに住んでいた1980年代、もちろんその当時も伝統小売りはあったんだけども、当時よりも今の方が、圧倒的に伝統小売りの数が増えているんだよね。インドネシアに今、300万店ぐらい伝統小売りあるけど、当時そんなにインドネシアになかったし、ベトナムも50万店あるけど、50万店なんかなかったからね。フィリピンだって80万点と言われているから、そんなに伝統小売りはなかったので、伝統小売り自体も当時に比べ、80年代に比べたら増えたんだよね。今でも数は増えていっているんだよね。ただ、それ以上にMTが増えていくから、比率としてはMTの方が大きいという状況になっていって、これは中国やマレーシア、タイ、シンガポールとかもそうだけども、先進的なASEAN、アジアの国々を見ていくと、どんどんMTの比率が高まっていて、中国なんてもう6割超えているよね。マレーシアやタイでは5割、4割ぐらいまで来ているわけで、そうするとベトナムやインドネシア、フィリピンの10%、20%のときも、当然MTの比率は上がっていくと。ただ、それがいつなんだということがすごく問題で、じゃ、10年後にそれが来るのかというと、僕は来ないと思っていると。なぜならば、小売りの近代化だけが単体で近代化していく、小売りだけが単体で近代化していくということは絶対なくて、小売りが近代化するということは、その国のすべてのインフラが近代化しているから。例えば物流、例えば電気、ガス、水道、道路。例えばIT。あらゆるインフラが近代化するから、小売りも近代化できて、この業界の人は、日本の小売りがもうものすごいスピードで近代化したから、ASEANもそうなるんじゃないか、そういう感覚をやっぱり持っていて、確かになるんだよと。なるんだけど、日本は一気にすべてのインフラが近代化したから、小売りも近代化できたということであって、じゃ、それがASEAN全土で同じように起こるかというと、日本の経済成長はミラクルだと世界では言われているわけで、僕はそうはならないんじゃないかなと。そうなってくると、やっぱり伝統小売りというのは、少なくとも向こう30年ぐらいは大きな影響力を僕は持つと思っていて、30年待っていたら、もう勝負ついちゃっていますと。30年後に小売りが近代化されて、まあまあ30年後じゃなくてもいいですよ。じゃ、百歩譲って15年後でも10年後でもいいですけど、近代化されたときに、「どうも、近代小売りの皆さん。日本メーカーの○○です」と言って、それを近代小売りが受け入れてくれるか、消費者が受け入れてくれるかというと、やっぱり伝統小売りの時代から慣れ親しんだものを彼らは買うことになるので、今やらなきゃ僕はだめだと思うんですよね。なので、そんな回答をしたという感じですかね。
阪西:わかりました、ありがとうございます。
森辺:はい。いいですか?こんな感じで。
阪西:はい。ありがとうございます。では、そろそろお時間になりましたので、この辺で終わりたいと思います。ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了>