東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、いよいよ本日は素敵なゲストをお迎えしていますけども、森辺さんからご紹介を。
森辺:大変素敵なゲスト。100回ごとに今までも来ていただいていますが、明治大学経営学部の大石(芳裕)教授に来ていただいております。大石先生、どうもありがとうございます。
大石:はい、どうも。400回記念おめでとうございます。
森辺:ありがとうございます。大石先生、本当僕自分でびっくりしているんですけどね。東に「継続は力なり」と言われてここまで来ましたが、400回もこれ収録していましてね。ちょうど4年目なんですよ。
大石:すごいですね。
森辺:で、1回目はたしか、始まって、番組の始まって1回目記念ということで、そこから100回目に出てもらって、200回目に出てもらって、300回目に出てもらって、今回400回目ということで、節目節目に必ず大石先生に出ていただくというふうに決めていますので、大石先生が出てくれなくなったら、この番組もおしまいということで。
大石:いやいや、光栄ですけど。永遠に続いてくださいな。
森辺:ありがとうございます。じゃ、早速なんですが、400回目ということで、今回ちょっと大石先生が、少し前になるんですけれども、2月の28日の出版ですかね、2017年。『実践的グローバルマーケティング』という本を出していると思うんですが、この本について、内容なんかを説明していただきたいなと思っていて。これたしか新聞で全面広告ダンと出ていたやつですよね。
大石:はい。
森辺:産経の、「フジサンケイビジネスアイ」に出ていたやつだと思うんですけど、『実践的グローバルマーケティング』という大変興味深い本で、帯に「こうすれば海外事業展開で成功する!!」ということで、いろんな企業の生きた事例18から学ぶということで、ミネルヴァ書房から出ている本なんですけど、この本についてちょっと解説をいただいてもよろしいでしょうか?
大石:はい。まず、これは私が原稿書いて持ち込んだというよりも、向こうから依頼があってつくった本です。基本的には聞き語りで原稿を起こして、それをチェックすると。企業にまたそれをチェックしてもらって確認をとりながらやっていくということですね。そういう点で、思わぬ出版物だったんですが、なぜ私が協力をしたかというと、やはり事例をきちんと取り上げながら、そこの裏に流れる論理を明らかにすると。大体30歳ぐらいのビジネスマンを 対象として、これから国際ビジネスにかかわろうとする人を対象にした、読みやすくて有意義な本をつくりたいという出版社からの申し入れがあり、私ももう何か教科書的に、最初から「4Pとは何だ?」とか、STPがどうだとか、それをわっと理屈を並べていくのにも、ちょっとうんざりしていたところがあって、じゃ、その方向だったらいいですねという。その思いが一致してできたものです。ただ、今、森辺さんがおっしゃった、帯の「こうすれば成功する」と。これうそですね。
森辺:いやいや(笑)。
大石:成功する戦略なんて、いや、本当僕は思うんですけど、ないです。この事例をたくさな見ていたら、要するに成功した戦略というか、成功した事業が後付すれば、こういう戦略をとったということが言えるのであって、今日も学生に授業で話したんですけどもね。事業で成功するかどうかで何が一番大切か。戦略もそれは大切な一因ですが、僕はもう粘着力だと思っています。どんな事業をやっても、どんな我々個人的な生活でも、壁にぶち当たる。そこにしつこくつしこくやって、Aという案がだめだったら、じゃ、Bでやってみるかとか、Cでやってみるかという、それも含めて、何とかやり抜いてした人が成功する。僕らはそれを後付で、この人の戦略はこれだったと、こう言うわけですね。でも、多くの人は壁にぶち当たって、撤退して、だめだったと。ということは、アブリオリィにこの成功する戦略なんてないんですよ。じゃ、戦略は不要か、理論は不要かというと、実はそうではない。つまり、いろんな事例の中に流れる一般性、論理を僕らはつかまないと、ほかに適用ができないと。だから僕ら研究者の役割は、実務家の方が実務のことは十分にわかっておられるわけで、そこにそれを実務をしゃべっても、釈迦に説法になるけども、我々の役目は、その論理をつかみ出して、こういう流れがあるんじゃないですかと。もちろんこのとおりやって成功するというわけじゃないけど、ここは押さえておかないと成功しないんじゃないですかということは言えると。だからいつも言っているんたけど、実務で理論は恐らく1割か2割の説明力しかない。あとはそのときそのときの優秀な経営者の人が粘着力で頑張って成功させる。でも、僕らが貢献できるのは1割か2割かもしれないけども、それを事例を挙げながら、私たち研究者はこう見ていますよと、こういうふうに一般化できますよという本ですね。
森辺:なるほどですね。でも先生、これリスナーの皆さんにも紹介したいんですけど、「エンジニア、ヤクルト本社、会宝産業、ヘッドウォータース、花王、ハウス食品、LVMH、日本電産、ダイキン工業、フマキラー、Jリーグ、コカ・コーラ、資生堂、コマツ、イトーヨーカ堂、ユニリーバ、IBM、マイクロソフト。」の生きた事例が詰まっていると。ちょっと目次を見ると、ケース1の第1章「私たちを必要とする顧客は海外にいるだろうか」、ヤクルト本社の事例ということで、1から4までポイントが書かれていて、そんな感じで各社のやつがあるわけですもんね。だからこの中で、多分これだけ業種いたら、自分たちに当てはまっている業種ってどこかありますもんね。
大石:そうですね。ちょっと今挙げていただいたやつで、エンジニアとか、会宝産業とか、ヘッドウォータースなんて、ほとんど皆さん、リスナーの方はご存じないんじゃないかと思うんですね。本当に中小企業なんです。でも、これが優れた実はグローバル企業で。だからそういうところでさえ、例えばエンジニアというのは、大阪にある従業員40人の工具メーカーですよね。それから会宝産業というのは、金沢にある車を解体して部品を取り出す会社です。従業員は100人弱なんですけどね。ヘッドウォータースというのは、ITのベンチャーなんですけども、非常に理念に固まった人たちが、若い人たちが集まってつくった会社。で、一気にアフリカも含めて海外に出たという、そういう、ちょっと普通の人が知らないようなものも、実は幅広い。イトーヨーカ堂とかそういうものもあると、小売りだって入っているし、結局そこに通じる、日系企業だけじゃなくて、外資系も入れているのは、つまりいろんな事例に通じる一般的な法則を僕らは探していると。それを強調するために、あえてそういうバラエティーに富んだ企業を選んでいるということですね。
森辺:なるほどね。これは本当に面白い本なんで、ぜひリスナーの皆さんもAmazonで買っていただいて。ちょっと今日は大分お時間も迫ってきたので、これぐらいにしたいと思うんですけど、次回先生、引き続きこの『実践的グローバルマーケティング』の中で、私がちょっと気になった箇所について深掘っていきたいと思うので、引き続きよろしくお願いいたします。
大石:ありがとうございます。
森辺:それでは、今日はこれぐらいにしたいと思います。ありがとうございました。
大石:はい。
<終了>