東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、品質つながりで、ほかに何か感じることがあれば、ちょうどいい機会なので。
森辺:そうだね。
東:あんまりこういうことにも、さらっといつも流してしまうと思うんですけど、コロナから気付くこともあると思うので。
森辺:そうそうそう。コロナから気付いたことがあってね、日本人っていいやつだなと思ってね。僕が思ったのはタクシーね。コロナもさ、1月2月3月4月5月とさ、ステージがいろいろあったじゃない?
東:ちょっと違いますよね。
森辺:日本もね、緊急事態宣言が出たり、小池さんが「ステイホーム週間」とかって言ったり。われわれの危機感の持ち方も全然変わってきたんだけども。タクシーの運転手さんね、「世界と日本と品質が全然違う」というのはよくある話なんだけども、コロナでもね、僕はそれをすごく感じたんですよ。1月2月ぐらいにASEANとかに出張に行くとね、Uberとか呼ぶと、「Are you Chinese?」ってSNSで入ってくるのね。僕のところに迎えに来ているUberの運転手から「Are you Chinese?」って、中国人だったら乗せたくないのでね。「違う。Japaneseだ」と言って乗せて。Uberとかタクシーに乗ると、GOJEKとか乗ると、もうこっちの意見も何も聞かずに、基本、窓全開!
東:(笑)
森辺:安い車だからさ、思いきり外の風が中にもう、ブオーって入るわけよね。
東:(笑)
森辺:空気抵抗みたいなの、あんまり計算されていないから。
東:はいはい。
森辺:「うわー、息吸えない!」というぐらい、僕の顔に風が直撃するわけよ。それで暑いでしょう?
東:はい。
森辺:「もう、たまんねえな、こいつ」と思いながら、タクシーの後ろに乗っているわけよ。風の、後ろの風の抵抗ってすごいからさ。
東:そうですね。
森辺:前も後ろも全開にすると。「もう、分かったよ。ちょっと、おまえ、待て」と言って助手席に乗せてもらってね、こっちのほうがまだマシだと思って。(笑)
東:(笑)
森辺:助手席に乗ったら嫌がられてさ、「おまえ、なんで近寄って…」。
東:距離が近いから。(笑)
森辺:「近寄ってくるんだ」って。「後ろに行けよ!」とかって言って、また、後ろに行かされて。走っているから、おれ、真ん中の通路から「ちょっと前行かせろ」とかって言って、「ちょっと後ろ」とか、そういうふうにやっていたんだけどもね、そんな感じなんですよ。一方、日本に来てタクシーに乗るとさ、2月ぐらいかな、タクシーに乗ると、運転手さん、必死に我慢しているんですよ。本当は窓開けたいのに、まだ寒いじゃない?
東:うん。
森辺:なんだけど、僕がね、「お互い濃厚接触したらあれだから、窓開けましょうか?」って言って、初めて「ありがとうございます!」って言って、自分の窓と後ろの窓を開けて空気入れ替えるようにするというね、これもう、日本人って本当に素晴らしいなと。どこの国かは、その国の名誉に関わるのでね、ASEAN、アジアと言っておこうかな。某国では、もう自分のことしか考えていないわけよ、運転手はね。金は稼ぎたいから運転手はする。客は取ると。ただ、中国人だったら乗せねえぞと。で、なおかつ、自分に移ったら困るから、窓は全開と。客がどう思おうが関係ないと。関係ないというか、そんなことすら思っていない。けど、日本人は…。
東:はいはいはい。頭の中にないんですね。
森辺:ない。頭の中にないわけ。とにかく自分に移らなくするということだけがあるというね。でも、日本人って、まず相手のことを考えるわけだよね。お客様が大丈夫か、我慢しようと、コロナが移るかもしれないのに、タクシーの運転手さん、じっと我慢するんだよ。そんなの「窓、開けましょう」って言いたくなっちゃうよね。
東:そうですね。
森辺:3月4月ぐらいになって、緊急事態宣言とか出始めると、ビニールシートがちゃんとまかれて、アルコールスプレーが置かれて、窓が常時開くみたいな感じになるわけじゃない?
東:はい。
森辺:だから、これだけ見ても、これね、製造業じゃない、サービス業なんだけどさ、しかもタクシー会社つぶれかけてんのよ。
東:はいはい。
森辺:つぶれかけてんのに他人のことを心配するというね、おれ、もう、「この人たち何なんだろう?」と思って、日本人の素晴しさを垣間見るわけですよ。この素晴らしさが、サッカーのときにゴミを拾って偉いとかね、ちょっと新聞に載ったりとかするぐらいの評価じゃなくてね、もっとこう、世界に評価されたいと、ビジネスでね、ということを常に考えちゃうんだけども。このよさがね、何かビジネスにいまいち生ききっていないんだよね。オーバースペックとか、オーバークオリティと言われるような、品質過剰とかね、過剰品質と言われるようなことで終わってしまっているんだけども。この素晴らしい精神とかさ、この素晴らしいマインドが、しいては高品質につながっているということを、どれだけ世界にうまく表現できるかということが、まさに日本のヨーロッパにはないブランディングの新しいかたちだって、ずっと思っていてね。それを、じゃあ、「どう表現できるんだろう?」ということを各企業によって、それって違うと思うんだけど、みんなが考えていけるとね、半世紀、四半世紀の中ですごく強い日本のブランディングになっていくんじゃないかなという気はするんだよね。
東:はいはい。
森辺:なので、そんなことをちょっと考えたかな、このコロナの中でね。
東:なかなかそこって伝えづらいし、伝わりにくいというところもあると思うんですけども。
森辺:うんうんうん。僕の親父がね、「男は黙ってサッポロビール」ってちっちゃい頃から言うからね。
東:はい。(笑)
森辺:僕もそうなんだよね。「男は黙ってサッポロビール」だなと。そんな、「ピーピーピーピー自分のあれをアピールするなんて、日本男児としてあんまりよろしくない」という感じは何となく分かっていて。日本の企業も表現するのがね、あれでしょ、下手なところがあるじゃない?
東:はいはいはい。
森辺:なんだけど、海外だと、それを表現しないとうまく伝わらないというところもあるんだよね。
東:はいはい。
森辺:だから、すごく難しい問題ではあるんだけどね。どうしたらいいのかね。
東:ただ、そういったことがあるということを認識してブランディングに生かすということを、たぶん考えたことがなかった方もいらっしゃるでしょうし、1つの、われわれも今、答えを持ち合わせているわけじゃないと思うので、1つのヒントになればということですね。
森辺:そうだね。1つ分かってほしいのは、やっぱり日本人というのは、この前回だか前々回だかでお話した、渡航の携帯品別送申告書の黄色い厚紙、あんなものにあんなクオリティのいい紙を使うということに象徴されるぐらい、品質という魔物に憑りつかれちゃっているんだよね。そこを変えていかないといけなくて。企業というのは1円でも高く売ることがすごく重要なので、高く売ることはもう大賛成ですと。ただ、もうこの時代って、品質をよくしても値段って上げられないので、いかにブランディングをよくするかということが非常に重要で。それを考えたときに、今のそのタクシーのエピソードでもあるように、日本人のよさってまさにこういうことだと思うんだよね。これをじゃあ、どれだけ世界にPRできたら、何だろう、もっともっと日本のブランディングってエッジが立っていくのでね、そんなことをやっていけたらなというふうに思うんですよね。
東:海外の人でも日本に来るとそれが分かってリピート、何回も来られる方って結構多かったりするじゃないですか。
森辺:うんうん。
東:ディストリビューターのオーナーさんとかも、結構日本好きな人も多いというのは、やっぱりそういうところも関係してくるんですか?
森辺:うん。そういうのも分かるし、僕のシンガポールの友達もね、「やっぱり日本は素晴らしいよね」と、「おまえらの国は、政府が、ガバメントが命令をしなくても」。いや、僕がね、コロナの件で、「いやー、日本の政府ってね、命令できないんだよ。びっくりしたよ」と。「僕、日本人だけど知らなかった。要請しか出せないんだ」と。「命令ができないんだ」と、そんなことできると思っていたからね、「憲法で無理なんだ」というふうにシンガポールの友達に言ったら、シンガポール人の友達がね、「いや、でも、別にそれっていいじゃないか」と。「おまえたち、日本人は我慢強いんだからね、強制なんかしなくたって、みんな言うことを聞くだろう」と。「それはこの間の震災でね、証明されていることじゃないか」って普通に言っていてね、「そうだけども…」って思ったんだけど、そういうふうな面では評価しているんだよ。いわゆる、何て言えばいいんだろう、人権的な面ではすごく評価しているし、今、東さんが言ったような観光客が来たときに、そういうわびさびとか、日本の優しさが好きで来ているという話でしょう?
東:うんうん。
森辺:そういう面ではすごい評価をしているのに、こと、それをビジネスというシーンに移すときは、なんかうまくやられちゃうみたいなところあるじゃない? 交渉下手になっちゃうとかね。
東:そうですね。
森辺:だから、そこでこの魅力が生きるとね、いいんだけどね。
東:また違うものになってくるということですよね。
森辺:うん。これがこう、日本のよさじゃないかとかっていうので放っておくとね、とんでもないことになる気がしていて、もったいないことになる気がしていて。「男は黙ってサッポロビール」ながらも、しっかり戦略的にうまくアピールできるといいんだけどね。
東:うーん。なるほど。
森辺:今後、この番組でもその課題については定期的に話していけたらいいね。
東:そうですね。分かりました。じゃあ、森辺さん、今日は時間が来ましたので、ここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。