東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、今日はベトナムについてお話していきたいんですけども、ベトナムについての問い合わせも結構ここコロナ禍であると思うんですが、結構、皆さん共通の悩みだと思うんですが、1つは「1社でいいんですか?」というのと、「ハノイとホーチミンでそれぞれ分けたほうがいいんですか?」みたいな。
森辺:ディストリビューターね?
東:「ディストリビューターをどうしたらいいんですか?」みたいなことで悩んでいる方が多いのかなとか思うんですが、その辺について、まず概要というか、森辺さんの考えをお聞かせいただきたいと思うんですが。
森辺:ディストリビューターについての悩みがベトナムは比較的多いというか、ほぼそこに集中しているような気が…、特にベトナムは集中している。いずれの国でも日本企業が困っているのは、販売チャネル周りのところは非常に困っているわけなんですけど。ベトナムに関しては特にそういう傾向が、B2CもB2Bも強いような気がしていて。1つはベトナムのディストリビューターの多くはセールス機能を持っていないということが、たぶん要因としては考えられるのかなと思うんですよね。「セールス機能を持っていないって、それは何なんだ?」と思っているリスナーもいるかもしれないですけど、ディストリビューターの機能はセールス機能とデリバリー機能という、いわゆる売るということと配達ということに分けるとすると、通常はこれ2つ持っていると。むしろデリバリーの機能というのは、日本だとヤマトや佐川がやるので、基本的にはセールスをやるというのがディストリビューターの機能だと思うんですけども。残念ながらベトナムの場合はそうはなっていなくて、基本的にはデリバリーをする人たちをディストリビューターというふうに呼んでいるので、大手だけだったりするんですよね。それが1点と。あと南北が非常に長いじゃないですか。直線距離で1,600~1,700キロぐらいあるのかな。なので、なかなか全土に強いみたいなのがほぼいない、ということが強く影響しているので、そういうことに悩まれていると。
東:なるほど。セールス機能がついていないのがディストリビューターのスタンダードというのは、背景というのはどういうことがあるんですか?
森辺:もともと、いわゆる南北戦争があって、ベトナム戦争があったじゃないですか。
東:はい。
森辺:北が勝ったわけですよね。なので、ベトナムって共産主義国家なわけですよね。これは中国もそうだったんですけども、基本的にそれらの国では、いわゆる国営企業がつくるわけですよね。偉いわけですよね、つくっている国営企業が。それをつくってやっているんだから、買いにこいと。
東:はい、はい。
森辺:なので、基本的には、それをみんなも工場に買いに行っていたわけなんですよ。もちろん消費者が直接工場になんか買いにいっていたら大変なので、いわゆる問屋さんという、ディストリビューターという人たちが買付に行って、メーカーはつくっているのを売ってやっているんだというスタンスなので、メーカーが売り歩くなんていう概念はそもそもないわけですよね。問屋が買いにいく、買わせていただくと。それをまた2次問屋、3次問屋を経由して最終的には消費者に渡るみたいな、そういう構造になっているので、それがまだまだ根強く残っているということなんですよね。なので、欧米系の商品をディストリビュートしているようなディストリビューターはやっぱりグローバルスタンダードが分かっているので、セールス機能を持たなきゃ、というのは非常に理解していますよね。若い経営者の会社とかね。なんですけど、50~60代になるともう壊滅的。なので、もともとはそんな感じだと思います。
東:そうした背景がある中で、日本企業はどういうかたちでディストリビューション・ネットワークを築いたらいいのか、というのは?
森辺:そうですよね。まず、輸出でやるのか、現地で生産拠点なり販売拠点なりを持ってやるのかによって、販売チャネルのつくり方って全然変わると思うんですよね。B2CかB2Bかによっても全然変わってくるので。例えば、B2Bでも、生産工程の中で必要となるようなパーツ、こういうものをつくっているところは当然産業集積地がターゲットになるので、産業集積地に行くわけじゃないですか。ただ、一方でオフィスなんかが、オフィスに入っているような会社がターゲットになるようなB2Bになると、いわゆる都市に行くわけですよね。なので、ディストリビューションも都市で言ったら、分けたらいいと思うんですよね。ホーチミンの会社がハノイをやるなんていうのはだいぶ大変なことなので。B2Cでもそれが実現できていないのに、B2Bが実現できるかって、できないわけなので。さっき言った、産業集積地のほうは産業集積地にいるディストリビューターを選ぶということをまずやらないといけないというのがB2Bだと思うんですよ。B2Cに関しては、よりきめが細かくなるわけじゃないですか。裾野も広くなっていくわけですよね、消費者のね。
東:そうですよね。
森辺:そうすると、やっぱりこれはなかなか1社で全土をフルカバーというと、基本的には難しい。やっぱり濃淡が出ちゃう。ただ、自分たちのステージにもよると思うんですよね。その自分たちのステージで最初から濃淡なく完璧に売るなんて、こんなのは非現実的なので。
東:そうですね。
森辺:そうすると、いずれは裾野を分けていかないといけないんだけども、最初から濃淡なくきっちりマスを埋めましょう、なんていう話ではないので、最初は1社に全部任せて、濃淡出てもそっちがいいのかなというのもあるので。おそらく、そうなのかなという気がしますけどもね。
東:分かりました。今日は時間が来てしまったので、また次回お願いします。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。