東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では、森辺さん引き続き、前回ご質問をいただいたリスナーの方のご質問に答えていこうと思うのですけど、前回の振り返りでどういったご質問をいただいているかというと、アジアで成功している日系企業、特に売り上げ成長率や販路構築で軌道に乗った企業はございますか?方法論や外資のお話はよく聞きますが、日系企業の具体例を題材として取り上げていただけませんでしょうかと。リスナーの方自身も中国事業に携わっているので、可能なら中国の例であれば大変ありがたいですと。前回はピジョンさんの件をお話したと思うのですけど、もう1つ企業を挙げて具体的にお話を出来たらなと思うのですけど、どういった企業をあげていきましょうか。
森辺:この間、ヤクルトさんとかも成功していますという話もしたのですよね。そうしたらヤクルトなんかも面白いのではないかなと思うのですけど。
東:分かりました。ヤクルトを。
森辺:ヤクルトもピジョンと同じ中国だけではなくて世界中での話なのですけど、たとえば中国の総人口が13億とか14億とかと言われていますけど、その内のヤクルトの巨大な市場でいったい1日当たり何本のヤクルトが売れているのかというと、これ彼らのIRの資料ですけど13年度の資料になりますけど、だいたい158万2000本。1日ですよ。1日に売れているのです。広州のみで。全体で言うと、中国全体、彼ら元々河南エリアから始めているので、いわゆる南の方です。香港とか台湾とかそこから入っていって深セン、広州とかぐーっと上にあがってきているので、中国全体でいうと383万本、1日で売れている。
東:すごい数ですね。
森辺:ものすごい数が売れていまして、結局ヤクルトの外資規制とかいろいろあったので、2002年なのです、参入は。
東:意外と遅いですよね。
森辺:2002年前はなかなか外資が向こうで内販をというのが出来なかったので、ほとんど多分2000年代前半ぐらいの会社が多いと思うのですけど、多分これでも早い方で、これで10年経っているわけではないですか、丸々。
東:12年経っていますね。
森辺:そうですよね。今まさにそこまで来ているわけなのですけど、やはり最初の5年とかはものすごく苦労していて、急激に伸びているのは2009年とか2010年とかにワーッと右肩上がりで上がってっているわけなのです。そのヤクルトのヤクルトレディーとか有名ですけど、ヤクルトおばちゃんを使った、この間ヤクルトの元専務平野さんをゲストでお招きしてお話をいただきましたけど、平野さんもおっしゃっていたようにヤクルトレディーのお話、それから店舗でも売っているわけですよね。スーパーマーケットとか飲料を売っているところでも売っていて、中国なんかでいうとどれくらいの店舗にいったいヤクルトが置かれているのかというと、3335店舗に入っているのです、ヤクルトは。約々9割が店舗の売り上げで10%がヤクルトレディーという、そういう構造になっているのですけど、設立した当初というのは189店舗でしか売られていなくて、それがいっきに3335店舗までいくのに9年とかかかっているわけなのです。
東:ヤクルトさんはちょっとざっと調べてみると、国際事業説明会というのがIRの資料で出てくる企業でなかなかないですよね。ヤクルトをみなさんは知っていると思うのですけど、では誰が創業したかというとご案内を簡単にしてみると、ヤクルトの創始者というのはこの間平野さんのPodcastにもあったように代田稔さんで、研究の開発が1921年。微生物の研究を開始して、商品化が1935年。乳酸菌飲料ヤクルトの販売を開始したと。ヤクルトは意外と明確に海外展開の段階を分けていまして、第1期が1964年から90年で求められての進出。ここにあがるのが台湾、ブラジル、香港、タイ、韓国、フィリピン、シンガポール、メキシコ、ブルネイ。第2期が1991年から2000年で、本格的国際事業の展開と。これは先進国への進出。インドネシア、オーストラリア、オランダ、ベルギー、イギリス、ドイツ、アメリカ、フランス、ルクセンブルク、スペイン、ウルグアイ。第3期が2001年から2010年。ヤクルトを世界の共通語にと。ここでやっと中国が入ってきて、中国、オーストリア、イタリア、マレーシア、ベトナム、インド、アイルランド、ニュージーランド、カナダ、ウィリーズ。第4期が2011年から2016年。国際事業の集大成ということで世界最大人口の大国のアメリカ、中国、インドを経営基盤確立という形で、まさしく中国がヤクルトの中でもフォーカスされているというような感じなのですね。
森辺:今33カ国ぐらいで売られていて、だいたいヤクルトというのは1日に日本を除いた世界で2400万本飲まれている。
東:すごい数ですね。1日にですものね。
森辺:2400万本飲まれているという、とてつもないあれなのですけど、ここも前回お話たピジョンと一緒でチャネルなのです。チャネルへの投資を徹底的にやっていて、結局中国事業でも当初189店舗しか取り扱いがなかったのが、10年で何十倍ですか、3335店舗の取り扱いをされているわけです。当初ヤクルトレディーを使った販売もほとんどなかったのが、今11%ぐらいまできていて。やはりチャネルに非常に強い投資をしているとういうのが1つです。健康になってほしいという創業理念をものすごく社員にもお客さんにも訴え続けているというのが変わらず一貫して訴え続けるというこういう会社ですよね。だからやはりチャネルというのはすごく強い。
東:書いてあります。IR資料にもその国の健康に貢献していくという基本思想。日本型経理の移行と、日本人による率先、垂範と。ヤクルト創業の理念を世界中で具現化と。
森辺:していくというので、共通ですよね、ここの理念に関しては。前回も混ぜましたけど、自分たちの理念はどこの世界に行っても変わらず、理念の訴求というのは変わらずやられていることで、それは大前提としてあってその上でどうやってチャネルを伸ばしていくか、チャネルにどれだけ投資が出来るか、チャネルをどれだけ拡大出来るかというところだけが肝になってくるわけです。チャネルがパイプだとすると、パイプを通さないと水は流れないのでやはり成功している会社というのはどこもチャネルに投資をしていますよということだと思うのです。
東:具体的に、この説明資料を見ても宅配チャネルと店舗チャネル。宅配チャネルというのはいわゆるヤクルトレディー。店舗チャネルというのは普通の多分店舗だと思うのですけど、成長を支えるメカニズムという形で宅配チャネルはヤクルトレディーの人数かける1人当たりの販売本数がヤクルトの販売数量になりますよと。店舗チャネルは納入店舗数かける1店舗あたりの販売本数がヤクルトの売り上げになりますよという形で、シンプルですけどこういったことが明確に示されている企業はなかなか少ないような感じを受けるのですけど。
森辺:多分物を売っているメーカーさんであれば、たとえば直販でも良いと思うのですけど、直販チャネル、代理店経営チャネルというとB to Bのお客さんとかの場合と、その直販の場合だと顧客数掛ける一顧客当たりの販売台数が売り上げではないですか。もう1つが代理店の数かける1代理店の販売台数がそのまま売り上げになるので、では何をするかというと、直販の場合は客数を増やすということはもう1つですよね、そこしかない。恐らく代理店を使われるケースの方が圧倒的に多いし効率が良いので、いかに優良な代理店の数を増やして、その代理店が売れる支援をメーカーとしてどれだけ出来るか。そうすると代理店の数が増えて、その代理店の売れる数が上がるので、結果売り上げが上がるという、この構造なので、ひたすらそこのPBCを回すということだと思うのです。そこが中途半端だとなかなか伸びないというのが1つです。多分どのメーカーもすごくシンプルで、それに商習慣とか文化とかいろいろな要因が絡まってくる感じなのですけど、それが1つ1つ解決策を見いだしていけば良いので、そのポイントとなる根幹部分というのはこのやはりかけ算の方程式。非常にシンプルではないですか。方程式とは言えないかもしれないですね。数学というよりは算数のお話ですよね。ここをどれだけ地道にやれるか。10年かかるわけです。でも10年の間に徐々に伸びていけばそれは継続する話なので、そこへの投資がチャネルへの投資ということになると思うのです。
東:そうすると本当にきちんとした投資を成功法でヤクルトなんかはやってきているということなのですかね。
森辺:ひたすらこれをやっている会社です。それ以外ないです。だから、納入店舗数が上がらないとか1人当たりの販売本数が上がらないというこの2つの問題しか彼らにはないわけで、では納入店舗数をあげるためにはどうすればよいの?1店舗当たりの販売本数をあげるためにはどうしたらよいの?とこの2つしか考えなくていいので、非常にシンプルなのですけど多分どのメーカーもメーカーだったらそうなのです。実際はこの方程式が必ず当てはまるはずなので、それだけをひたすらやるということだと思うのです。
東:そうしたらちょっと簡単にヤクルトの2002年からの歩みも載っているのでご紹介していくと、2002年に広州の工場を稼働して広州で販売を開始していると。2004年に深センで販売開始。2005年にやっと4月に上海に中国の統括会社を設立。上海で販売開始。2006年に南京で販売開始、北京で販売開始、上海の工場稼働。2007年に天心、蘇州、衢州で販売開始。2008年に青島、最南東とかで販売開始。あと海南省でもやっていると。2009年に煙台、武漢、温州で販売開始。2010年に瀋陽、大連、福州、亜門で販売開始。2011年に合肥で、販売開始で天心工場が生産開始と。2012年に長沙、西安、南昌、長州で販売開始をしていると。2013年になると成都、重慶、鄭州で販売開始と。結構段階的にきちんと踏まれてやっているなという感じはしますよね。
森辺:これ見てみると南から入っていっているのは、やはり香港はもっと早く入っているわけですよね。香港から深センに国境づたいになっているので、流れていっていたわけなので、入り口としては非常によかった。僕も当時深センに住んでいましたけど、ヤクルトが急に売られはじめたのを覚えていますけど、飲んでいましたけどうれしくて、ちょっと大きい、100mlの日本だと65mlとか。
東:そうですね、小さいですよね、日本の方が。
森辺:あれですけど、大きいやつでシンガポールと同じだなんて言って飲んでいましたけど。そこから沿岸地域でズラーっと攻めていって、いわゆる所得の高い地域から。そこからいわゆる内陸の都市にまた販路を拡大していっているという、これもあくまでも、恐らくですけど相当エリアごとにどのエリアが最も重要度が高いのか、プライオリティーを置くべきなのかということは相対比較、全部見て進めていっていると思います。今中国の人口13億とか14億の中の5億人ぐらいがだいたい販売対象人口。まだ8.4億人が未販売人口というふうにヤクルトは捉えているので、まだまだ伸びるというのが現状だと思います。
東:そうですね。そうするとまだまだこの勢いは止まらない感じですかね。
森辺:それを世界中でやっていますからね。結構泣ける話が、この間も元専務の方もおっしゃっていましたけど、結構ヤクルトレディーの泣ける話みたいなのがやはりあって、最初は辛いわけです。どこでも最初は参入していってやっていくのですけど、本当にこんなのを売って売れるのかという。けどまず3ヶ月必死に頑張ってみてくれと上司に言われて3ヶ月やったらそれが3年になって、10年になってみたいな。そのサクセスストーリー。そういうのが各国でありますよね。社員がみんな幸せになる会社ですよね。関わった販売員がみんな幸せになるという、そういうイメージが強いです。この間の元専務のフィリピンの話何か聞いていても。
東:そうですね。分かりました。もうそろそろお時間なので、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。