第116回 「並べることと」、「選んでもらうこと」の違い
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テキスト版
皆さん、こんにちは。スパイダーの森辺です。今日は、商品を並べることと、商品を選んでもらうことの違いについてお話をします。この、商品を並べるということと、商品を選んでもらうということの違いをしっかり理解をしないと、なかなかアジアASEANでのマーケット・シェアというのは上がりません。逆に、今、なかなかこの導入期から成長期に突っ切れない、シェアが上がっていかない、という企業さんは、FMCGの企業さんは、おそらくこの商品を並べるということと、商品を選んでもらうということの違いが、うまく理解し、対処できていないじゃないかなと、こんなふうに思います。今日は、商品を並べることと、商品を選んでもらうことの違いについて、一緒に学んでいきましょう。後ろの図は、アジアASEAN、アジア新興国でFMCGメーカーが商品を流通させて、マーケット・シェアを上げて利益を拡大させていく中で、必要になる2つの大きなステップでございます。この2つのステップなんですが、まず1つ目のステップというのは商品を並べること。店に商品が並んでいないものは消費者が買えません。従って、まずメーカーは、店に商品を並べないといけない。より多くの店に商品を並べる必要がある、これがストア・カバレッジを伸ばしていくということです。この番組でも何回もお話をしていますが、ASEANアジア新興国の市場は、モダントレード、MTとTTという2つの小売流通が存在して、MT以上にTTが重要な市場であると。このTTというのは、国によって数十万~数百万存在する、そんな市場でストア・カバレッジを上げるということは、いかに販売チャネルを強化をしていかないといけないか、いかに多くのディストリビューターを活用しなきゃいけないかということが言えます。このストア・カバレッジを上げていくということが商品を並べることで、これ自体は、もうチャネルへの戦略投資なんですよね。
チャネルへの戦略的投資がステップ1で、この並べた商品を選んでもらうということは、全くこのステップ1で行ったチャネルへの投資とは別次元の話。商品を選んでもらうというのは、いわゆるストアに並べましたと。並ぶ場所というのは、ガムならガムで、他の競合の商品と同じ場所に並ぶんです。ドン・キホーテでもない限り、ガムはガム置き場にしか並ばないし、チョコはチョコ置き場にしか並ばない。洗剤は洗剤置き場に並ぶし、レーンが全然違うわけですよね。そうすると、並んだ瞬間、競合の商品と、いわゆる同じところにさらされるわけですよね。そこに消費者が歩いてやってきて、御社の商品を選ぶのか、他社の商品を選ぶのかというのがこのステップ2の行為で、このインストア・マーケット・シェアというのは、前にもご説明しましたけども、いかに店舗でのシェアを上げていくか。
例えば、1店舗の売上が100万だったときに、いかに100万円に近い数字を売り上げるかと、そういうことを言っているのではなくて、さっき言ったように、商品のカテゴリーによって決まってきますから、ガムならガム、100万円のうちの5万円がガムなんだったら、この5万円のうちの何万円獲れるか、ということがインストア・マーケット・シェアで、いきなり5万円売れているガムが50万円売れるということは起こり得ませんので、いかに5万円のうちのたくさんの、3万4万を獲っていくかということをインストア・マーケット・シェアを高めていくと。
この行為というのは、プロモーションへの投資なんですよね。チャネルの投資ではないと、プロモーションへの投資。そもそも、ものがよくないといけない。4Pで言う、ProductとPriceが、絶対的によくないといけない。そして、Placeというのはこのステップ1で、この最後のPromotionというのがこのステップ2になるわけですけども。ものがいい、価格がいい、これが絶対条件ではありますが、ここでプロモーションを効率的にBTLからやっていかないと消費者は御社の商品を選ばないですよね。ある一定のストア・カバレッジとマーケット・シェアが伸びると考えられるのであれば、途中でえBTLからATLも同時に投資をしていかないといけないし、それをしていかないと選ぶという行為はやっぱりされない。ただ並べておくだけだと、誰も知りません。日本の商品なんて誰も知らないので、知らないものは買わない。
アジアでは、1ドルの価値が非常に大きい。アジアの人たちはケチなのではない、貧乏なのではないと。1ドルの価値が大きいんです。日本だと100円で買ったものを、初めて見ると、目新しいなと買ってみた、まずかった、もう捨てちゃおう、そして二度と買わない、これが許されますが、アジアではこの100円で買った、1ドルで買った、この商品がまずくても食べるんです。まずかったら、だめなんです、失敗ができない。そういう意味で1ドルの価値が高いわけですよね。そうすると、いかにこれがまずくないんだ、美味しいかということを証明しない限り、知らないものはなかなか買いにくいと。もし、知らないものを買ってみて、まずかったら、1ドルが無駄になってしまう、そんなリスクを背負うのであれば、もう分かっている商品を手に取る、というのがアジアASEANの中間層なので、いかに選ばせるか、プロモーションの投資が大変重要です。
それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。